沖縄のお墓への信仰。本州出身者が理解したい5つの事柄
沖縄のお墓は独自の信仰に基づいたものではないか…、そう感じさせるような特徴的なものですよね。実際に沖縄の人々にお墓を尋ねると、独自の信仰をうかがい知ることができます。
沖縄のお墓は大陸から流れた信仰、儒教の影響があるものの、現代の沖縄の人々のお墓信仰は「チャンプルー」と言えるのではないでしょうか。
お坊さんに読経供養をお願いすれば、御願で納骨を済ませるなど、独自で育てて来た沖縄のお墓信仰です。そこで今日は、沖縄の人々に根付く、お墓にまつわる信仰をお伝えします。
沖縄のお墓への信仰。
本州出身者が理解したい5つの事柄
沖縄のお墓を大きく建てる信仰
沖縄のおばぁにお墓への信仰を聞くと、「沖縄ではお墓こそ大きく建てる」と言う方も多くいます。これは「後生の住処」への想いではないでしょうか。
【 沖縄のお墓信仰:お墓は後生の住まい 】
★ 沖縄ではお墓はお墓にあらず、「最期の住まい」と考える方々が多くいます。
・ 確かに風葬の歴史があった沖縄ですが、沖縄の人々が火葬となった今でも大きなお墓を望む傾向にあるのは、「最期の住まい=永遠に住む場所」と考えるからです。
沖縄のお墓信仰では、生きている人々の住まいがいくら立派なものでも、一人前にはなりません。「立派なお墓を建ててなんぼ」と言う想いがあります。
【 沖縄のお墓信仰:生きる身の住まいは仮の宿 】
★ この沖縄のお墓信仰が理解しやすい沖縄の言葉があります。それが「いちみぃぬ、かりやぬどぅ」です。
・ 「いちみぃ」は「生身」と書いて「生きている者」を差します。「ぬかりやぬどぅ」は「仮の宿」なので、「生身は仮の宿」と言う意味合いです。
沖縄のお墓信仰、お仏壇は繋がっている
このように沖縄のお墓信仰では、御先祖様(故人)はお墓に永遠に眠っていることになりますが、本州のように人々は気軽にお墓参りには行きません。
沖縄の人々に聞くと、「餓鬼や無縁仏が付いてくるから」など、さまざまな答えがありますが、個人墓地も多い沖縄では、女性が一人で行くにはちょっと辺境すぎる環境も見受けるので、安全面もあるのかもしれません。
ただ、いろいろ調べたり聞いて行くと、沖縄独自のお墓信仰に気付きます。
【 沖縄のお墓信仰:お仏壇がお墓に繋がる 】
★ お仏壇は沖縄では、お墓とともに深い信仰の対象です。毎月1日15日に拝みを捧げる他、さまざまな旧暦行事でお仏壇へ手を合わせ、報告をします。
・ 沖縄のお墓信仰では、そんなお仏壇とお墓は「繋がっている」とされ、お仏壇に手を合わせ語り掛けることで、御先祖様に伝わると信じられているのです。
そのため、本州のように頻繁にお墓参りに行かずとも、お仏壇に語り掛ければ良い…、と言う考え方があります。
沖縄のお墓参りで子孫の現状を報告する
沖縄のお墓信仰以前に、「門中」についての理解は必要です。沖縄では父方の血筋で繋がる一族「門中」があり、一族が入るお墓「門中墓」も数多くあります。
次男であるなど、自分達でお墓を建てるケースも多々ありますが、門中墓に入る沖縄の人々は多いです。
【 沖縄のお墓信仰:お墓参り 】
★ 沖縄では旧暦1月16日の「ジュウルクニチー」、清明祭の節気の「シーミー」、旧暦7月7日の「タナバタ」が、大きなお墓参り行事です。
・ このお墓参り行事では朝から重箱のおかずを準備し、多くの親族が集まります。
お墓参りでは、土地を守る神様や御先祖様へのお供え物を「ウサンデー(お下がり)」し、親族皆で墓前で食事を楽しみながら、御先祖様へ子孫(クァッチマガー)の今を報告します。
ただ、その昔は重箱のお供えおかずが御馳走だったものの、今ではあまり親族が食べなくなったことから、重箱とは別に折詰弁当(オードブル)を準備する家も多くなりました。
沖縄のお墓、先祖崇拝信仰
沖縄のお墓信仰と言えば、先祖崇拝ですよね。毎月1日15日のお仏壇への拝みだけではなく、沖縄の人々は日々ヒヌカン(火の神)やお仏壇へ、語り掛けるように手を合わせます。
【 沖縄のお墓信仰:先祖崇拝 】
★ 沖縄では人が亡くなると、「ニライカナイ」と呼ばれる海の彼方へ魂が帰ると言われてきました。そして故人の魂は、七代後になるとその家の守護神になるのです。
・ 御願やお墓参り行事を通して、御先祖様の存在を日々感じている沖縄の人々は、「御先祖様に恥ずかしくない生き方をする」ことを良しとしてきました。
だからこそ、沖縄では御先祖様の存在を感じる、お墓や位牌、お仏壇は大切です。
沖縄のチャンプルーなお墓信仰
沖縄のお墓には土地神信仰もあり、お墓の左側(向かって右側)にはお墓を守る「左神(ヒジャイガミ)」様がいます。
沖縄では土地神様だけではなく八百万の神様がおり、独自の御願文化があるのですが、一方で葬儀では読経供養も依頼するなど、法事は墓主の判断によるものが多いです。
【 沖縄のお墓信仰:チャンプルー文化 】
★ 本州の仏教式の影響で、葬儀や納骨式では読経供養を行う地域も多い一方で、沖縄では檀家制度はほぼ浸透していません。
・ そのため近隣のお坊さんにその時だけ読経を依頼したり、読経はなく御願で供養をすることも多いです。
またお仏壇には御本尊は祀られず、沖縄独自の位牌である「沖縄位牌」には、戒名ではなく俗名を書き入れる家も多く見られます。
いかがでしたでしょうか、今日は沖縄のお墓から分かる信仰についてお伝えしました。明治時代に廃藩置県が行われるまで、琉球王朝時代が続いていた沖縄では、独自のお墓信仰が根付いています。
本州のように檀家制度もなかったため、沖縄の人々は全ての弔いが仏式とは限りません。仏教式の葬儀でも肉や魚も供えますし、今でも読経供養をせずに独自の御願で供養を行う法事も多いです。
自分達を見守ってくれる御先祖様、神々へ日々感謝をして手を合わせ、日々話すことで心が落ち着く…、とする沖縄の方々も多くいます。
まとめ
沖縄のお墓信仰
・現世の住まいは仮の宿、お墓は永遠の住処
・お仏壇に拝むとお墓の御先祖様へ繋がる
・墓前に一同に集まり、子孫の今を報告する
・故人の魂はニライカナイへ帰る
・亡くなった後、七代後に守護神になる
・施主によって読経をしたり御願をしたりする