お墓の苗字が違う場合どうする?近年多い5つの解決方法
お墓の苗字が違う場合、「自分は入れないんじゃないか…。」と不安になりますよね。現代の日本では「○○家之墓」など、家名が彫られているものが多いです。
それは反対に言えば、お墓には苗字が違う者にとっては「入れない」と言われているようで、躊躇するものではないでしょうか。実際に家や地域によっては、苗字を同じくする家族親族にこだわることもあります。
ただ、お墓の苗字が違う場合にも、そこに入りたいと思う背景には、さまざまな事情があるはずです。できることならスムーズに希望のお墓に入りたいですよね。
そこで今回は、お墓の苗字が違う場合でも、入りたい方々が知りたい基礎知識と、注意点をお伝えします。お墓の苗字が違うため入れなかった場合の、対策もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
お墓の苗字が違う場合どうする?
近年多い5つの解決方法
墓主の了承を得る
結論から言えば、例えお墓の苗字が違う場合でも、墓主の了承さえあれば、お墓に入ることは法律的には問題ありません。ただ、寺院や霊園の規定や宗旨宗派上の問題、親族の感情的な問題でもめることがしばしばあります。
お墓の苗字が違うケースはある程度パターンがあり、特に墓主が両親などの肉親であれば墓主の了承は得やすく、問題なく入れる事例が多いです。
【 お墓の苗字が違う、いくつかのパターン 】
① 一度、結婚して姓を変えた後、離婚をしたものの、姓はそのままだった娘が亡くなったので、旧姓のお墓に入れたい。
② 婚家に反対されて結婚した娘が亡くなったが、婚家はもともと反対だったため、「お墓に入れない!」と遺骨を返してきた。旧姓の自分達のお墓に埋葬してあげたい。
③ 嫁と姑との関係が悪く、嫁が生前から「姑と一緒のお墓には入りたくない!」と言い、実家のお墓に入ることを望んでいた。
④ 一度結婚をして夫と死別、夫の家の代々墓を引き継いだ後に再婚。再婚した夫が亡くなりお墓がないので、夫の代々墓に入れたい。
⑤ 母親の代々墓が自宅近くにあり、父親が病死。母親の代々墓を自分が引き継ぐことになったため、父親も母親の代々墓に合葬したい。
…などなどの事例がありました。
例えば①や②の事例など、もともとその姓を名乗っていたケースでは、墓主も両親であったりと、故人への愛情もありますし、その事情もよくよく理解できることが多いので、お墓の苗字が違う場合でも、埋葬されるケースが多いのではないでしょうか。
ただし、他のいくつかのケースでは感情面もあり、親族から反対を受けて途方にくれ、相談に来た事例も多く見受けます。
お墓を苗字が違う世帯同士が建てる場合
また、しばしばある相談が二世帯住宅で共にすむ家族同士が、共同でお墓を建てるケースです。息子や娘世帯が親と同じ苗字であれば問題はないのですが、娘夫婦との同居など、お墓の苗字が違うため、迷う場合があります。
【 お墓を苗字が違う世帯同士で建てる 】
★ このケースでは寺院墓地でお墓購入を検討していたため、住職に相談をしました。
・ お墓の表に彫刻する文字「○○家の墓」には息子(娘)世帯の苗字を彫り、その横にお墓を建てた人として、両親の名前を彫ることで、お墓の苗字が違う場合でも埋葬できるように決着しています。
現代では多くの霊園で、お墓の苗字が違う場合でも問題なく入ることができますが、特に宗旨宗派がある寺院墓地などでは、その霊園の方針などで埋葬を断られることもあります。
ただ、家の事情を相談することで、何らかの策を提案してくれる事例は多いです。
墓石を建て替える
④や⑤のようにすでに自分が墓主で、さまざまな苗字の人が入る場合、墓石自体を取り換えて、家名を彫らずに言葉のみを彫る方法があります。
特に⑤のように立地と継承の関係で、両家のお墓を引き継いだ子どもが合葬したいと考える相談は多く、両親や祖父母だけではなく、叔父叔母(伯父伯母)まで埋葬しなければならない事例も増えてきました。
【 お墓の苗字が違うため、「入れない」選択 】
★ 近年霊園で増えてきた「愛」や「空」など、苗字以外の言葉が彫刻されているお墓は、このような違う苗字の人々が埋葬されたお墓も多いです。
・ 「○○家」のくくりを付けないことで、今後も親族で離婚をして戻ってきた兄弟など、あらゆる事情がある家族や親族を埋葬することができます。
ただ、④のように元夫と再婚した夫を一緒のお墓に入れたい…、と言う場合には、墓主とは言え周囲の反対もあるかもしれません。
墓主であれば反対があっても強行はできますが、「みんなが納得してから…。」と言う場合には、手元供養や納骨堂を一時利用するのもひとつの方法です。
浄土真宗の考え方
日本でも多い宗旨宗派に浄土真宗がありますが、本来、浄土真宗では「○○家の墓」のように家名を彫らずに「南無阿弥陀仏」、もしくは「倶会一処」などの仏語(ぶつご)を彫りました。
【 お墓の苗字が違う場合、浄土真宗の考え方 】
★ 浄土真宗の考え方では、故人は死後すぐに「極楽浄土」へ旅立っているため、魂はお墓に存在しません。そのためお墓は生きる者が拝むためのものなのです。
・ そのため、お墓に埋葬する故人の家系などの括りに固執はしていません。(そもそもお墓も「南無阿弥陀仏」となるので、お墓の苗字が違うことで思い悩む必要もないですよね。)
先ほどお伝えしたお墓に彫る言葉、「倶会一処(くえいっしょ)」の意味合いは、人は死後、生前の一切のわだかまりを解き放ち、手を取り合う…、と言うものです。
その教えの元では前述した④の元夫と再婚した夫、③の嫁姑問題の確執も解消されている、と言うことになります。
いかがでしたでしょうか、今回はお墓の苗字が違う故人でも埋葬できるかどうか…、その概要をお伝えしました。基本的にはお墓の苗字が違う違わないに関係なく、埋葬できることが多いです。
ただし、最後の5つめの解決法として、家族親族の理解を得ることがあります。お墓と苗字が違う故人を埋葬するとなれば、それなりの事情があることも少なくはありません。
そのため、多くの親族のなかには反対を唱える方も出てきます。また地域の風習によっては、家系や血筋をとても重要視していて、冒頭の離婚した娘でも、強い反対を受けることがあるのです。
このような場合には無理をせず、新しく自分達から始まる家族墓を建てたり、個人墓の永代供養墓や納骨堂などの、新たな葬送方法を選ぶのも一案ではないでしょうか。
その昔は村の人々が入る「村墓」なども見られました。小さな括りに縛られず、故人と自分達家族が、最も穏やかに墓守りができる方法を選択してください。
まとめ
お墓の苗字が違う場合の基礎知識
・墓主の了承を得れば入れることが多い
・寺院の方針で入れなければ、事情を話して相談
・共同で建てるなら、一家族を建墓者として彫刻
・墓石を取り換えて、苗字を入れない
・浄土真宗ではお墓は生きている者のためにある