自筆証書遺言が「危険」な理由☆無効になる5つのポイント
自筆証書遺言は、最も手軽に遺言者の意思を伝えられる方式ですよね。手数料も掛からないため、遺言書の内容を変えたい時には、すぐに変えることができる点でも、気軽な遺言書の方式です。
遺言書には自筆証書遺言の他にも、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。ただ、自筆証書遺言書以外の2種類では、それぞれに違いがあるものの、公証役場に提出しなければなりません。
そのため、一般的には自筆証書遺言書が用いられやすいですが、自分で作成して自分で保管する遺言書ですから、相続の時になって無効となることもあるのです。
そこで今回は、自筆証書遺言書を残すなら心得ておきたい、無効になりやすい事柄をいくつかお伝えします。
その他の公正証書遺言書や秘密証書遺言書に関しても少しお伝えしますので、より手軽に有効な遺言書を残したい方は、ぜひ参考にしてください。
自筆証書遺言が「危険」な理由☆
無効になる5つのポイント
自筆証書遺言書が見つからない
自筆証書遺言書は最も手軽で書き方によっては秘密性も高く、被相続人本人のみが知る遺言書になることも、少なくありません。
【 自筆証書遺言書が発見されない可能性 】
★ 他の2種類となる公正証書遺言と秘密証書遺言は、公証役場に提出するため、相続時にはその存在は確実に知らされます。
・ 一方で自筆証書遺言書の場合には、自分で書いて自分で保管するため、その当人が亡くなった後は、遺言書が見つかるとは限りません。
さらにあまり考えたくはないですが、もしも相続人に見つかったとしても、内容がその相続人にとって好ましいものではない場合、秘密性が高い分だけ、破棄・隠ぺいされる危険性もあります。
ちなみに何らかの事情で自筆証書遺言書が開封された場合、開封した者は5万円以下を限度として、過料を支払わなければなりません。
指定した財産の内容が曖昧
遺言書では「財産目録」を記してください。その財産目録に従って、それぞれの遺産配分を指定していくようにします。
例えば「○○町の一戸建てを山田太郎に相続させる。」などの曖昧な表現にしてしまえば、相続人の指定も財産の指定も確実ではないと判断され、無効になってしまうのです。
【 自筆証書遺言の書き方、細かく明瞭に示す 】
★ 一例として、下記のように不動産を指定してください。
・ 私は下記の財産を長男である山田太郎(昭和41年○月○日)に相続させる。
自宅
所在: ○○県○○市○○丁目
家屋番号: ○○番○○(住所)
種類: 居宅
構造: 木造1階建
床面積: 1階100平方メートル
…などなど。
ここでのポイントは、相続人を特定するために被相続人との関係性(長男)と、相続人の生年月日を明記することがひとつです。
そしてもうひとつ、財産を上記のように住所から種類や構造、床面積まで記載することとなります。
時に財産調査が必要になることもありますが、不動産の特定ができない曖昧な表記では無効になるばかりではなく、不動産登記もできないケースがあるのです。
分配内容が極端
被相続人の意向は出来うる限り採用されるべきですが、相続人にはそれぞれに相続する権利があり、その最低限の相続分である「遺留分」があります。
【 遺留分を満たしていない財産の配分 】
★ 遺言書が形式として問題のないものだったとしても、その財産配分がそれぞれの相続人の遺留分を満たしていなければ、その直筆証書遺言書は無効になる可能性もあるのです。
・ 相続人それぞれが納得すれば、遺言書の指示通りに相続を進めることもありますが、相続人の一人でも自分の遺留分を主張する時には、全て白紙になります。
さらに自筆証書遺言書に記されていない財産が出てきた場合、記されていない相続人が出てきた場合なども、同じく無効になるので、気になる方は調査も行って確実にしておくと安心です。
遺言書に必要な書式を満たしていない
自筆証書遺言書は個人でも作成できる遺言書ではありますが、基本的な書き方のルールには法らなければなりません。例えば「自筆証書遺言書」ですから、全て自筆で記さなければならないことも、そのひとつです。
【 自筆証書遺言書の書き方ルール 】
★ 全てを自分の文字で書かなければならず、書き間違えがあれば訂正方法も厳密なルールがあります。その他の大まかなルールは以下の通りです。
① 日付も明確に「自筆で」記入する。
② 不動産財産であれば登記簿に従って記載する。
③ 預貯金財産なら銀行名・口座名、種類と口座番号まで記す。
④ ペンネームや通称を避け、戸籍上の名前で署名をする。
⑤ 捺印をする(できるだけ実印を使用する。)
⑥ 遺言書を封筒に入れたら、封をして封に割り印を施す。
…このような点を守って、自筆証書遺言書を書き進めてください。
この自筆証書遺言書が見つかった際には、その遺言書の有効無効を決めるものではありませんが、家庭裁判所に提出され、検認を受けることになります。
公正証書遺言、秘密証書遺言の概要
ここまでお伝えすると、自筆証書遺言書以外の形式で残すことを考える方もいるかもしれません。自筆証書遺言書の他の種類は、「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のに2種類となり、どちらも自筆証書遺言書よりは確実性は高くなります。
【 自筆証書遺言書以外の形式を考える 】
① 公正証書遺言書 …
・ 最も確実に有効な遺言書となりますが、公証役場で公証人が証人2人、遺言者本人の立会いの元で、遺言書を作成するため、手間も費用も掛かります。
② 秘密証書遺言書 …
・ 自筆遺言書と同じように、自分で作成することができ、内容を誰にも知らされぬまま、封をすることは可能です。公証役場に申請するため、存在は知らされますが、必ず有効とは限りません。
どちらも証人2人の立会いは不可欠なので、自筆証書遺言書ほど気軽に作成できるものでもありませんが、確実性を求めるなら、これらの方法も良いのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか、今回は遺言書を残したい方々が検討する、自筆証書遺言書について、実際の相続時にも有効に作用するための5つのポイント、基礎知識をお伝えしました。
もちろん確実性を求めるのであれば、本文中でお伝えしたように、他の2つの形式を選ぶことに越したことはありません。
ただ、自筆証書遺言書であれば、より気軽に残すことができる分、変更事項があった時にも、より簡単に変更できるのもメリットのひとつです。
また、よりカジュアルに「法的な効力はなくても、自分の気持ちや意向だけは伝えたい…。」と言う想いであれば、遺言書と言う形ではなく、エンディングノートなどに控えても良いかもしれません。
エンディングノートには希望は残せるものの、法的効力はないからです。また、遺言書には遺言執行人を指定すると、より確実なうえにスムーズですので、ぜひ検討してみてください。
まとめ
自筆証書遺言書が無効になりやすい理由
・そもそも発見されない
・財産や相続人の指定が明瞭ではない
・相続人全員の遺留分を満たしていない
・遺言書の書き方ルールに法っていない
・遺言書には全部で3種類の方式がある
・法的効力を求めなければエンディングノートが良い
・遺言執行人を指定すると、よりスムーズ