遺言書を残すメリット。想いを繋ぐための6つの基本
「遺言書を残した方が良い。」と聞いても、一般的にはあまりピンと来ませんよね。家族のことを考えていたとしても、「お墓を生前に購入して、負担を少なく…。」くらいに留まっているのではないでしょうか。
けれども、実は最も手続き的にも感情的にも、複雑なものが遺産相続。「自分にはそんな財産はない!」と思っていても、長年払ってきた住まいと言った不動産など、キチンと考えれば思い当たるものもあるはずです。
その他、介護しなければならない配偶者の今後や、愛するペット…、「信頼できる誰かに託したい。」。そんな場合でも遺言書によって指定できるのです。こう聞くと、遺言書を準備して、安心したいですよね。
そこで今回は、残される愛する人々が、無用な気苦労なく過ごすために役立つ、遺言書のメリットをお伝えします。
遺言書を残すメリット。
想いを繋ぐための6つの基本
自分の財産を自分の意思で分けられる
遺言書の最大のメリットは、自分の財産を生前に自分の意思で決められることに他なりません。相続人である当人同士が相続の分配を決めるのは、なかなか難しいもの。争う気はなくても、不動産が入っていたりなどすれば、キレイに分割できないことも、ままありますよね。
【 自分の財産の采配を生前に決められる 】
■ 例えば分け切れない部分の金額は募金して、残りを均等に分割して相続する…、などなど、どのように分配するか、残った者が不必要に争わないよう、当人が決めることができるのです。
遺族に残される「遺留分」の財産とは
もちろん、遺言書の威力は強いのですが、ある程度「常識の範囲内」の遺言書である必要はあります。
【 遺言書を書く心得 】
■ 自分の采配で残る財産を、それぞれの人々へ相続することはできますが、もともと相続の権利がある子供や妻には、最低限の財産をもらう権利があります。
この権利を遺留分と言います。ドラマのような例え話にはなりますが、全く知らない他人に全財産を相続させる、などの場合には、もちろん、この遺留分権の権限が発生します。あまり途方もない遺言の場合には、反対に遺言が原因でトラブルになる可能性もあるので、十分に注意をしなければなりません。
執行者がいることで、財産分与がスムーズに
遺言書を作るに当たり、配慮したいのが「執行者」の指定。執行者は弁護士など遺言に長けた専門家が適しています。
【 遺言書には執行者を明記する 】
■ この執行者が、遺言書で指定されていない場合には、相続人当人が、それぞれに必要な手続きを踏まなければなりません。
慣れない一般人には細やかな手続きに戸惑うこともひとつのデメリット。さらには、この手続きもまた、余計なトラブルを引き起こしやすいと考えると、執行者がいかに大切なのかが分かります。
遺産分割協議の負担が少なくなる
遺産相続を受ける時の「遺産分割協議」をご存知でしょうか。ドラマなどで良く見掛ける、親族全員と弁護士が集まるシーン…、あれが「遺産分割協議」です。
【 遺産分割協議の負担を軽減する 】
■ 遺産分割協議の一番大きな特徴でもあり、難しい部分は、「相続人全員が合意して、協議が終わる」と言うこと。つまり、1人でも納得しなければ、延々と続くことになるのです。
「家は皆仲が良いから大丈夫!」と考える方々も多いのですが、少し触れたように不動産などももちろん財産ですから、なかなか均等には分けられないものも多いもの。そんな時、平等さが失われると、やはり納得できない親族が出てくる可能性も多いのです。
遺族が納得して遺言の内容を受け入れるために
このように何よりのメリットは、遺産相続協議で家族・親族が不必要に争わず、執行人が速やかに遺産を振り分ける権限があることです。ただし「遺留分」はもちろんのこと、それぞれの家族の状況や全員のバランスを保った判断をしなければなりません。
【 遺族を守るための遺言とは 】
■ 法律的な問題だけではなく、感情的にも納得して相続を進めるためにも、まず、遺留分をきちんと配慮した遺言書を書くことで、意向のままの分配も実現しやすくなります。
・ さらに遺言書には、それぞれへの言葉や理由も添えることができるので、分配の理由を書き添えるのも一案です。
特に自身がそれぞれ子連れ再婚であった場合や、相続人が多かったり仲が悪い場合などは、遺言書で配分した方がスムーズに進みます。
遺言を残した方がスムーズな事例とは
多くの方々が「相続争いや遺言書などは、一般家庭の自分達には関係のない話。」と捉えていますが、核家族化、少子高齢化が進む現在、相続争いはどこにでもあり得る、と考えた方が良さそうです。
【 遺言を残した方がスムーズな事例 】
■ 財産が不動産のみの場合
・ 意外と多いのがこの事例。金銭的な財産はないものの、一軒家が残っている、などの場合です。この事例では、分割できない財産であることが原因となります。
■ 相続人の一部に、連絡が取りにくい人がいる
・ 例えば海外に居住している、家出などの理由で音信不通の相続人がいる、などがこの事例です。当然同意書も得られなくなるため、相続手続きが複雑になるのです。
前項でも少し触れたような理由もあります。その他、未成年の相続人がいるケースも多いですが、この時にも、遺言書があれば、相続がスムーズに進みます。
いかがでしたでしょうか、多くの方々が遺言書がなくても、皆仲が良いから大丈夫!であるとか、遺言書を書くほどの財産がない、などと考えがち。そのため、遺言書を残さない事例がほとんどです。
けれども、具体的に考えると分割や相続のための遺産分割協議の合意が難しい事例は多々あります。自分亡き後、住んでいる家を売却して財産を分割する…、と言うことになれば、当然そこに住んでいた家族は、家から出なければなりません。
今、仲が良い家族が財産の相続で必要のないイザコザを起こすことは、避けたいですよね。
その他にもまだ未成年の子どもを残すとなれば、自分亡き後も気になるもの。遺言書はそんな時にも、子どもを託す人を指定することもできるのが遺言。ドラマのイメージが強いですが、愛する家族の未来を守るのが、遺言とも言えるのです。
まとめ
遺言書を残すメリット
・財産の分配を生前に決める
・分配は常識の範囲内で決める
・遺言書は執行者の指定も添える
・相続者の遺産分割協議の負担を軽減する
・遺言書には、それぞれへの言葉も添えられる
・財産が不動産など、分割が難しいなら遺言書