お墓の継承は友人でもできる?突然の依頼で知りたい法律
お墓の継承を友人に依頼するケースが増えていますよね。「遠方に住む親族よりも、日ごろから信頼できる友人・知人にお墓を管理して欲しい。」との希望が増えてきました。
これは個人で入る個人墓が増えたこともありますが、昔ながらの慣習で考えれば、「親族でもない者がお墓を継承するなんて、友人であっても非常識だ!」と考える方が多いのではないでしょうか。
けれども法律的には、確かに本人が望めば、お墓を継承する人は友人でも良いのです。…でも、あらゆる面でトラブルにもなりそうですよね。
そこで今日は、近年増えているお墓の継承に友人が指定された場合のトラブルを避けるため、関わる法律をお伝えします。
お墓の継承は友人でもできる?
突然の依頼で知りたい法律
お墓の継承者を決めるまでの3つの順番
ひと昔前まではほとんどが家墓だった日本では、お墓は代々引き継ぐものであり、「長男でなければならない」などの厳格な習わしを持つ地域も多くありました。
けれども、そもそも家墓への意識が薄まっている現代では、老人ホームや終活で共にした友人が一緒にお墓に入ったり、自分一代のみの個人墓も増え、自分亡き後のお墓の継承や管理への考え方も変化しています。
そんななか、慣習へのこだわりからは一歩引いて、法律を基準にしたお墓の継承を検討する人々も増えてきました。
【 法律から見る、お墓の継承3つの順番 】
★ 法律としては下記の順番でお墓の継承者を決めています。
① お墓に入っている故人、当人が指定した人物が継承者になる。
② 故人が特に指定をしていなかった時には、その地域の習わしに倣って継承者を決める。
③ 地域に特別な習わしがない場合、または叶わない場合、家庭裁判所で調停を行う。
お墓の継承を家庭裁判所まで持ち越す事例は、あまり多くはありませんので、多くが②の「地域の慣習」に従います。
そのために、日本では長男がお墓の継承者の筆頭であり、それが叶わなくても、多くが次男などの「男子の子ども」であることが多いです。それに続いて、最近では女性でもお墓を継承するケースが増えてきました。
けれども①にあるように、故人が指定をしていれば、子どもや親族である必要はありませんし、それが最初の継承者候補になります。
お墓の継承者として指名されたら…
ここで「故人にお墓の継承を指定された」り、「地域の慣習に倣って継承者を指定する」とありますが、何を基準に「指定されると見なすのか」と言う問題もありますよね。
とても曖昧なのですが、もしも遺書などの故人の明瞭な遺書などがなくても、周囲がそれを理解・了承していれば、「暗黙の了解」として、お墓の継承者として指名されます。
【 お墓の継承者に指名されたら… 】
★ 家庭裁判所で調停や裁判もできますが、最終的にお墓の継承者に指名をされた時、それを拒否することはできません。
・ ただし墓主になる訳ですから、その後のお墓の扱いは継承者が決定できます。
…詳しくは後ほどの項でお伝えします。
祭祀財産と相続財産は全く「別物」
昔ながらの慣習では、「長男が家督を引き継ぐ」と言われるように、お墓とともに家の財産も大半を引き継ぐことが多くありました。
そのため長男はお墓やお仏壇とともに、家の相続財産もほとんどを引き継いできましたよね。
特に高齢の方々の間にはこの意識が残っているためか、お墓の継承に友人が指定された場合に、相続財産を心配する声がしばしば聞こえます。けれども現代の法律上、お墓と財産の相続は全く関係がありません。
【 お墓の継承と相続財産 】
★ 法律上、お墓やお仏壇、家系図などは「祭祀財産」です。そして「祭祀財産」と「相続財産」は全くの別物として考えられます。
・ ですからお墓の継承を友人が行ったからと言って、その家の相続財産を受ける権利を得た訳ではありません。反対に、兄弟の一人がお墓の継承をしたからと言って、その分相続財産が減ることはないのです。
…ただし、一般的にお墓を継承すると年間管理料や境内墓地であれば、お寺へのお布施など、お墓を残すための費用が何かと掛かりますし、掃除や祭祀の進行など、労力も多大です。
そのために墓主の負担を考慮して、親族でお墓の継承があった場合に、本来の相続分より多めに分担をすることはあります。
★ そう考えると、お墓の継承を血縁のない友人が引き受けてくれることは、有難いこととも言えます。
「墓主」となれば、法律上は自由
しばしば受ける「お墓の継承を何人かで出来ないか?」との質問がありますが、お墓などの性質上、祭祀財産の継承を分担することはできません。そのため、一人が継承をすることになります。
そこで、実際には兄弟親族で協議をしながら決定をしていく家庭がほとんどですが、法律上では決断は墓主にあり、その後のお墓を決定することは、墓主の自由です。
【 お墓を継承した者に決定権がある 】
★ ですから、そのお墓の改葬や墓じまいも、決定権はお墓を継承した「墓主」にあります。
・ もしもお墓を継承したものの、経済的・体力的にお墓の管理が負担になるなどの問題があれば、墓主の意向でお墓の改葬や墓じまいが可能です。
…反対に言えば、お墓の継承者を友人とした場合、故人の子どもや親族であっても、墓主を通さなければ埋葬や改葬、墓じまいをしたい場合には、墓主である友人を通さなければなりません。
★ 本人が墓主ではない場合、「母親の骨壺だけを取り出して、違う霊園に改葬したい。」と勝手に骨壺を取り出した場合には、盗難の罪を問われる可能性があることになります。
いかがでしたでしょうか、今日はお墓の継承についてお伝えしました。少し前まではほとんど見られなかった、友人や知人のお墓の継承も、現代では少しずつ見られるようになりました。
「共同墓」などと呼ばれる永代供養墓でも、家族などの血筋ではなく、心情的な縁の深い友人や知人と一緒にお墓に入り、お互いに共同でお墓を管理、供養する事例も増えています。
子ども達が代々地元に残ることなく、広く移住するようになった現代では、新しいお墓の継承や管理、供養の形と言えるのではないでしょうか。
まだまだトラブルも多い一方、新しい方法でより安心できるスタイルと言えるのかもしれません。
まとめ
お墓の継承を友人が依頼された時の豆知識
・故人が指定した者が最もお墓継承の権利がある
・家庭裁判所まであるが、指定されたら拒否できない
・お墓を継承しても相続財産には影響はない
・継承後のお墓の決定権は墓主にある