遺言書で大切な人へ相続を。思いが届いた5つの事例
遺言書を相続のために残すことは、お金持ちだけのお話…、と考えている方々も多いですよね。けれども終活をしている、ごく一般的な方々があらゆる形で遺言書を書いているように、どのような家庭でも残しておくと役立つのが、遺言書です。
もちろん、法的な規則に則って正しく書かなければ、その効力は発揮しません。けれども正しく書けば遺言書は大きな決定権があります。さらにそこに、相続人となる家族に、配分の理由やメッセージを添えれば、それだけで相続問題が解決することは多々あります。
「絆の深い家族だから大丈夫!」と言う方も、絆の深い大切な家族だからこそ、遺言書の効力で守ることが出来るのなら、ぜひ残しておきたいですよね。
そこで今回は遺言書が一般の家庭でも役立つ理由を、実際に遺言書が効果を発揮した5つの事例とともにお伝えします。本記事の事例を自分に当てはめて、ぜひ検討してみてください。
遺言書で大切な人へ相続を。
思いが届いた5つの事例
一生懸命介護をしてくれた嫁にあげたい
血縁関係のみの相続であれば、遺言書がなくても相続をすることはできますが、同居していても血縁関係がない「家族」に財産を分けたい…、と考えているのなら、遺言書はとても有効な手段です。
【 血縁関係のない嫁に 】
★ 80歳のAさんは、息子の嫁であるBさんと同居して2人暮らし、実の息子も旦那様もすでに亡くなっています。お嫁さんはかいがいしく介護をしてくれたため、長い月日を掛けて、実の家族のように暮らしています。
・ Aさんには家を出ている子どもが他に2人いますが、Bさんには今住んでいる家をBさんへ残したいと考え、遺言書を書きました。
Bさんご夫婦には子どもがいなかったため(またAさんの実の息子である旦那様は先立っているため)、義母であるAさんの財産を相続する権利はなかったのですが、Aさんの遺言書により、2人で住んでいた家と、動産の一部を相続することができました。
若くして余命が言い渡された事例
若くして余命が言い渡された40代のAさんは、専業主婦の奥様と二人暮らし、子どもには恵まれないながらも、二人仲良く暮らしています。Aさんのご両親も亡くなり、兄弟も亡くなっていますが、会ったことのない甥っ子がいます。
Aさんの財産はそのほとんどが、現在二人で住んでいるマイホームです。
【 妻に住む家を残すために 】
★ 実子がいない場合、実は全ての財産を妻が相続出来る訳ではありません。被相続人の親がいれば親も共同相続人に入りますし、兄弟や甥っ子、姪っ子がいれば、彼らも共同相続人となります。
・ けれども今回の場合には、残された財産が現在住んでいる不動産がほとんどです。改正はされましたが、相続のタイミング(※)によっては、家を売って現金化する心配は否めません。そうなるとAさんの奥様は、今住んでいる家を出なければなりません。
(※)この「相続のタイミング」の例では、ある「妻」であるCさんが、葬儀や法要と忙しく追われている内に、相続権のある甥っ子であるDさんが、家の半分の権利を不動産業者へ販売してしまったトラブルなどがあります。
ですから相続に関する改正によって、居住している家の相続が安全だと思えても、「遺言書」で二重に安心を得ていた方が良い…、と考える方も増えてきました。
この状況を事前に防ぐためには、Aさんの遺言書が功を奏します。確かに他の相続人も「遺留分」を主張することはできますが、この遺言書により遺産分割協議が省かれ、スムーズに愛する妻に住む家を残す事例が多いです。
生前に相続分配を話し合っている場合
終活を夫婦でしているなど、前向きな家族のケースでは、両親が元気なうちから相続についてもいろいろと話し合っていることが多いです。その際、計画的に相続をして節税対策をする事例も増えています。
このような場合、確かに「家族で話し合いはできているから、遺言書は必要ない!」と考えがちですが、遺言書があることで手続きがスムーズになることは多いです。
【 話し合いの結果を遺言書にしたためる 】
★ 遺言書には長兄など、執行人を記すことがポイントです。
・ 被相続人名義の銀行口座は凍結されますが、遺言書に「遺言執行者」が指定されていない場合、なかなかこの口座凍結が解除されない、などのトラブルが発生するからです。
口座凍結に関する銀行への最も良い対策としては、遺言書を「公正証書遺言」にする方法があります。手間とお金は掛かりますが、後々最も安全な遺言書です。
そもそも疎遠になりすぎている
遺言書がない場合には、必ず遺産分割協議を行い、相続人全員の同意を得なければなりません。そしてこの分割協議の同意には期限がないため、ここでいつまでも先に進まない…、と言ったトラブルはよくあること。
【 遺産分割協議が成立しない 】
★ 相続人の合意が得られないどころか、そもそも相続人の一人が「どこに住んでいるのか分からない。」「音信不通。」などの場合には、またその手続きが必要です。
・ 子どもが先立って両親と妻での遺産分割協議であった場合にも、両親がすでに離婚している…、などの理由で、そもそも「なかなか集まらない!」と言う問題も多々あります。
こうなると、相続人の一人に負担が多く掛かり、調整やいらぬ手続きで、相続が進まなくなる事態が起きます。このような場合にも、遺言書があれば遺産分割協議がなくても相続を進められるため、大変助かるのです。
死因贈与ではなく遺言書を選ぶ理由
「自分の財産をどのように分配しようか…。」と考えている矢先、同居している子どもから「死因贈与契約をしよう。」などと言われた事例もあります。確かにこれは節税対策かもしれません。
単純に考えれば、手続きも簡単な上に、生前贈与よりも死因贈与の方が相続税となり、節税対策にもなるからです。
【 死因贈与がしっくりこない… 】
★ ただ、子どもを信頼していない訳ではないが、どうもしっくり来ない。と言う声は多く聞こえます。確かに死因贈与契約は贈る側と贈られる側、双方の同意が必要であるため、解約も個人の判断では難しいです。
・ この点、遺言書は被相続人個人の判断で変更ができる点に違いがあります。
一度決定しても、その後の関係性や生活の変化などから、自分の判断ひとつで遺言書の内容を変えることができるため、この違いは大きいです。
いかがでしたでしょうか、遺言書を書くなんて大それたことに思えるかもしれません。けれども、実際に多くの事例を確認してみると、意外にも自分にも起こりそうな、身近なものだと気付いた方々も、多いのではないでしょうか。
相続人となる遺族は、案外相続に関する知識がないことも多いため、突然の相続手続きに戸惑うことも少なくありません。特に相続手続きには要所要所で「期限」が設けられているため、ただでさえ忙しい時期だけに、「何も考えられない!」と言う相続人も多いです。
このような状況を考えると、遺言書は相続トラブルを回避するためだけにあるとも言えません。少しでも愛する家族の負担を減らすための手段にもなるのです。終活をしているなら、遺言書で家族への愛を示すのも、ひとつの方法ではないでしょうか。
まとめ
遺言書が役立つ5つの事例
・血縁関係のない同居家族に財産を残したい
・子どもがいない夫婦だからこそ、遺言書を残す
・銀行口座凍結を解除するため、執行人を指定する
・音信不通の相続人が想定されたら、遺言書が役立つ
・遺言書は自分ひとりの意思で変更ができる