沖縄の位牌継承問題に変化。変わりつつある3つのポイント
沖縄の位牌継承問題は、沖縄県に留まらず全国的にも知られているものですよね。沖縄では位牌を先祖信仰の象徴として、とても大切に継承されてきました。そしてその継承にはしきたりも多く存在し、「四つのタブー」とされる継承のタブーもあるのです。
…とは言え、一時期はこの「四つのタブー」がその解釈によって、より沖縄の位牌継承を難しいものとしてきましたが、現代では解釈自体に疑問を持つ方々もいて、今では地域やそれぞれの家(ヤー)によって、しきたりの解釈や緩さも違ってきています。
さらに現代は、子ども達も日本各地や世界へ移住する沖縄の人々も増え、沖縄で位牌を継承したくても、なかなか継承できない…、と悩む家も増えています。そんななか他の家では、どのように解決しているのか、参考にしたいですよね。
そこで今回は、沖縄の位牌継承問題を解決するきっかけになる、いくつかの体験談を元にしたポイントをお伝えします。
沖縄の位牌継承問題に変化。
変わりつつある3つのポイント
沖縄の位牌継承、四つのタブーとは
そもそも広く知られている沖縄の位牌継承における「四つのタブー」とは一体何なのでしょうか。今ではあまり知らない方も多いかもしれません。これは下記のような事柄。
【 沖縄の位牌継承:四つのタブー 】
① チャッチ・ウシクミ …「長男押し込め」を意味する言葉で、長男が継がなければならない。
② チョーデーカサバイ …「兄弟重牌」を意味する言葉で、長男が継承した位牌と共に、兄弟の位牌を祀ってはならない。
③ タチーマジグイ …「多系交わり」を意味し、父系の血族以外の子どもが位牌を継承してはならない。
④ イナグァンス … これは「女元祖」の意味合い。女性が位牌を継承してはならないとする家も多く、未婚のまま一生を終えたり、離婚をした女性は新たに位牌を仕立てることもあるのですが、それで女性が「元祖」となった状態を差しています。
…と言うもの。
ただ現代の事情を考えると、なかなかこの「四つのタブー」を守ったまま継承を続けるには無理があるように、一昔前の商家などでは、これらのタブーを気にせずに継承を続けているケースもあり、後々の解釈によって、ここまで厳格になったとする方も多いのです。
沖縄の位牌継承、現代の事情
冒頭でもお伝えしたように、沖縄県内に留まる子どもも少なくなってきた現代、子ども世代が東京など遠方に移り住み、そこで新しくお墓を建てる事例も増えてきました。
沖縄での位牌継承は、一緒にお墓も継承するケースがほとんど。そのため、沖縄では位牌やお墓を継承した子どもは、なかなか他県などへ移り住みにくい現状もあります。個人墓地に建つ門中墓が伝統的な沖縄、遠くにいては管理もできないのが本音です。
【 沖縄での位牌継承:家によって緩やかに 】
★ 前項でお伝えしたように、例えば「チャッチ・ウシクミ」であれば、長男が継がなくてはならない、と言う意味合いではなく、「長男ではあっても沖縄位牌を継承しない・できない」状態を差した言葉、…と解釈する方も増えてきました。
・ 例えば、母方の連れ子で父系の血を引いていない「長男」だった事例では、父系の血筋を持つ「嫡男」である次男が沖縄位牌を継承した事例がありますが、これを「チャッチ・ウシクミの状態だ、と伝えている言葉に過ぎない。」と解釈する方もいるのです。
ただ、これはとても繊細で、言及するにはより深い部分まで説明をしていかなければならない部分ではありますが、この解釈を変えたり、しきたりをゆるくすることによって、よりトラブルの少ない沖縄での位牌継承ができる、と考える方々も多くなっています。
沖縄の位牌継承問題、長男に拘らず継承
このようなそれぞれの家(ヤー)の解釈やしきたりの元、遠方に居を構えた長男は沖縄の位牌とお墓の継承をせず、沖縄で両親と同居している次男が引き継ぐことを決断したケースもありました。
【 沖縄での位牌継承:次男が管理をするのはタブー? 】
★ ただ、そのまま引き継いだケースもあれば、やはり「四つのタブー」への信仰から、ただ継承するとなると難しい家があるのも事実。
・ このような場合、「次男へ位牌を預ける」とした「アジカイグァンス」として、次男が管理・御願をしている事例も見受けます。
「預ける」場合には、長男と次男の子どもである孫世代がどうするか…、と、継承問題は引き継がれることにもなるのも事実です。
沖縄の位牌もお墓も永代供養
このようにしきたりも様々に解釈が変化したり、緩くなりつつあるトートーメーですが、それでも家や地域によっては、昔から伝わるしきたりだけに、なかなか難しいケースも確かにあります。
このような家では、沖縄では位牌継承者問題が解決しないまま、今の位牌主が高齢になっていることも多いです。
【 沖縄での位牌継承:永代供養 】
★ 高齢になった位牌主のなかには、終活を通じて「位牌堂」に位牌を安置し、沖縄位牌の永代供養をお願いする方々が増えてきました。
・ 沖縄では位牌とお墓の継承はセットである事が多く、お墓を霊園に改装して永代供養墓を建てながら、位牌も一緒に位牌堂での永代供養をお願いした、などの体験談があります。
いかがでしたでしょうか、沖縄では位牌継承やお墓の継承問題は、細やかなしきたりも相まって、家によってはとても難しい問題になっていることも…。「継承者がいない」沖縄の位牌は「ヒジュルグァンス」と言われ、その意味合いは「冷たい位牌」。
(特に個人墓地のお墓が多い沖縄では)お墓の継承者がいなくなれば無縁仏になるように、沖縄では位牌もまた、無縁位牌のヒジュルグァンスとなってしまうのです。誰でもこれは避けたいのではないでしょうか。
そのため、継承者がいなくても安心できる永代供養が見られるようになってからは、「自分亡き後に、継承者問題でもめて欲しくない。」「子ども達に、余計な負担を掛けたくない。」と、沖縄の位牌主自ら、永代供養を依頼するケースが増えています。
現代の暮らしに合わせて、さまざまに変化しつつあるトートーメー。もしも迷う部分や不安があるのなら、これらの新しい考え方も、ひとつの選択肢としてみてはいかがでしょうか。
まとめ
現代の沖縄での位牌継承の傾向
・沖縄の位牌継承には「四つのタブー」がある
・位牌継承のしきたりの緩さは家や地域で違う
・近年ではタブーへの解釈が違う人も多い
・長男が継承できない時、「預かる」選択例もある
・位牌を霊園に永代供養をする事例も増えてきた