【沖縄の御願】旧暦12月8日ムーチーの興味深い由来とは
沖縄の御願行事のなかでは、旧暦12月8日に行われるムーチーは馴染み深いものですよね。「ムーチー」は「鬼餅」を沖縄の言葉(方言)にしたもので、厄払いをして健康や長寿を祈願する行事です。
厄払いの行事に鬼が出てくるのは、本州でも2月3日の節分を考えると、納得できるのではないでしょうか。
ただ、インターネットなどの一部では、沖縄のムーチーの由来にまつわる言い伝えについて、「面白い!」と話題になっていて、確かに詳しく調べてみると、興味深い物語なのです。
そこで今回は、現代でも馴染みの深い沖縄の御願、ムーチーの由来にまつわる物語を、ムーチーの豆知識とともにお伝えします。
現代でも幼稚園や小学校をはじめ、各家庭でもムーチー行事を行っている沖縄の御願のなかでも認知度の高い行事ですので、ぜひ、参考にしながら楽しんでみてはいかがでしょうか。
【沖縄の御願】
旧暦12月8日ムーチーの興味深い由来とは
子ども達へ向けたムーチーの由来
沖縄の御願ではムーチーの日に、餅粉と砂糖、水を混ぜ合わせてこねた種を月桃の葉に包んで蒸した、「ムーチー」と呼ばれるお餅を、台所の神様(ヒヌカン)と仏壇に供えます。
【 沖縄の御願、ムーチーを供える理由(子ども向け) 】
★ 首里・金城に、両親を亡くした兄妹が二人で暮らしていましたが、その内妹は大人になり、久高島に嫁ぎました。一人になって寂しくなった兄は、とうとう鬼になってしまったのです。
・ 鬼になった兄は夜になると、家畜を食べるようになり、しまいには子ども達まで食べるようになりました。
遠くから聞き伝えた妹は、お餅を作って兄の元へ向かいます。兄に食べさせるお餅は中に瓦の塊を入れ、自分のお餅は何も入っていない、普通のお餅です。
家に付くと妹は「アヒー(兄さん)、金城パンダで私が作ってきたお餅を一緒に食べましょう!」そう言って兄を崖の頂上へ誘い出しました。
目の前で普通の餅を美味しそうに食べる妹を見て、兄も安心して鉄の入ったお餅を食べます。
そして、瓦で重くなった鬼になった兄を崖から突き落として、鬼退治をしたのです。」
…この後、村の人々が娘を称え、鬼退治にひと役買ったお餅を「チカラムーチー」や「ホーハイムーチー」、若しくは「カリームーチー」などと言い、鬼退治が行われた旧暦12月8日にムーチー行事が行われるようになったと言われています。
鬼退治前に、子どもと一度行っている
以上が、沖縄の御願行事「ムーチー」の由来にまつわる物語なのですが、実は鬼になった兄を倒しに行く前に、妹は一度、噂の是非を確かめに行っているのです。
【 沖縄の御願、鬼になった兄を確かめる 】
★ 久高島で結婚して子どもがいた妹は、兄が鬼になってしまったと言う噂を聞いた後、子どもとともに兄の元へ行き、噂の真意を確かめています。
・ 鬼になった家の台所で鍋を開けると子どもがいたため、「兄は鬼になってしまったんだなぁ~。」と理解しました。
妹は自分の子どもも兄に食べられてしまうことを恐れ、子どもを背負うとトイレ(フールー)へ行きます。兄は逃げないように妹に縄を付けて監視をしました。
鬼になった兄は、妹達も食べようとしていた
「兄が鬼になってしまった。」と悟った妹は、手に付けられた縄の先に石を巻き付けて兄をだまし、やっと海まで逃げ切ることができたのです。
【 沖縄の御願、兄から聞いた言葉 】
★ けれどもサバニ(船)に乗ろうとしたところ、兄に気づかれ追いかけて来ました。慌てた妹はサバニをひっくり返し、そこに隠れることにします。
・ 兄はサバニに隠れた妹に気づかず、見失ったと地団駄を踏み、こう言いました。「あぁ~、せっかくの御馳走を取り逃がした!」
この言葉を聞いて、とうとう兄はすっかり妹やその子どもまで食べる、鬼になってしまったのだと知るのです。
妹が鬼の兄を退治した、本当の理由
我が子を久高島まで連れ帰った妹ですが、鬼になってしまった兄を退治しなければなりません。そこで妹は、兄が大好きな餅を作って、再び兄の元へ行くことを決意しました。
ここから最初にお伝えした、瓦の餅の流れになるのですが、実は鉄の餅を食べさせただけではありません。
【 沖縄の御願、R18?本当の理由 】
★ 実は金城パンダで兄とお餅を食べた時、妹は下着を着ていないまま、着物の裾をはだけて兄に見せていました。血も垂れていて恐ろしそうな妹の下(ホーミー)の様子を見て、兄が驚くのです。
・ 「妹よ、お前のホーミーには何が付いているんだ?」そこで妹はこう答えました。「これは、鬼を食べる口なんだよ。」
そして鬼の兄を崖から突き落としたのです。
初めて聞くと奇妙な話ですが、意外にも女性の下が魔除けや厄除けとして登場する物語は数多く存在します。驚く事に古事記にも出てきますし、古代ローマやギリシャ神話にも出てきます。
節分と同じように掛け声がある
今ではすっかり見かけることはなくなりましたが、このような物語から、昔の沖縄のムーチーの御願では、蒸したムーチーの汁を家の周りや門前にまきながら「ウネーフカ(鬼は外)、フコーウチ(福は内)」と唱えます。
【 沖縄の御願、ムーチーや厄除け 】
★ さらに作ったムーチーは紐で十字に縛り、いくつか繋げて門前に吊るすことで、厄払いとしました。
・ 今でも吊るしムーチーはたまに見かけますが、荷造りのビニール紐などでも縛られているのが現代らしくて微笑ましいです。
ちなみに、ムーチーはサンニンと呼ばれる月桃の葉に包んで蒸されますが、この月桃もまた薬草として活用されていたため、厄除けの葉として知られています。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄でも馴染みある御願行事、ムーチーの由来についてお伝えしました。
その他、沖縄でムーチーの御願を行う方法などは、別記事「【沖縄の御願】旧暦12月8日に行うムーチーの拝み方」も参考にしてみてください。
本州から沖縄へ移り住んだ家庭でも、スーパーなどに行けばその盛り上がりを感じることは多いはずです。保育園や幼稚園にお子様が行っていれば、ムーチー作りの準備があるかもしれません。
時には「ムーチー作りを行いますので、月桃の葉を持たせてください。」などのお手紙が届いて、驚いたと言う声も聞こえます。
家族の健康ながら、特に子どもの健康を祈願する行事なので、それも現在まで馴染みある理由なのかもしれません。
まとめ
ムーチーの由来となった物語
・鬼になった兄を妹が退治する物語
・瓦(鉄)の入った餅で鬼退治をした
・鬼退治の前に一度兄の元へ行っている
・女性の下を「鬼を食べる口」と言った
・餅を包む月桃の葉も厄除けの意味がある