宗教によるお墓の違い。神教やキリスト教の墓石を建てる
宗教によってお墓の違いがあることは何となく分かっていても、詳しくは知らない方が多いですよね。特に無宗教の国と言われる日本では、菩提寺を持っていても、自分の家の宗旨宗派が何なのか、分かっていない方も多いのではないでしょうか。
もちろん寺院境内墓地では、そのお寺の宗旨宗派に沿う「檀家制度」があるために、宗教的な部分ではお寺に相談します。
ただ、宗教的に自由な民間霊園が広がった現代では、デザイン墓と呼ばれる、オリジナリティ溢れるお墓も増えてきました。けれども、そんななかでも宗教的な要素を取り入れたい方は多いですよね。
そこで今回は、墓石デザインの打ち合わせの参考にもなる、宗教によるお墓の違いについて、それぞれお伝えします。
宗教によるお墓の違い。
神教やキリスト教の墓石を建てる
基本の和墓スタイル
少し前から洋墓が人気があるものの、定番は和墓ですよね。神教やキリスト教のお墓を解説する前に、まずは基本となる和墓についてお伝えします。
今多く建てられている和墓は「角碑型(かくひがた)墓石」で、三段、もしくは四段があります。
【 宗教によるお墓の違い:和墓の造り 】
★ 基本の三段は上から、
① 棹石(さおいし)
② 上台石(じょうだいいし)
③ 下台石(げだいいし)/芝石(しばいし)です。
・ 四段になると、下台石と上台石の間に、中台石(ちゅうだいいし)が加わります。
沖縄のお墓は納骨を納める室(カロート部分)は地面の上にありますが、全国的な和墓では、下台石の下、つまり地面の下に作られます。また、お墓の区画の「付属品」についても、打ち合わせで決めてください。
※ お墓の付属品については別記事、「お墓デザインの打ち合わせ。「付属品」の基礎知識」でお伝えしています。
神式のお墓の特徴とは
神教のお墓を建てたい方が民間霊園で多いのは、神道の教派のなかには墓地がある教派もあるものの(黒住教や金光教)、多くの教派で神社にお墓を持たないからです。
実際に、寺院では墓地を見かけますが、神社でお墓を見た方は少ないのはないでしょうか。
【 宗教によるお墓の違い:神式 】
★ 神式のお墓は基本的に和墓と同じ造りなのですが、少し細長いタイプも見られ、上部の棹石(さおいし)の頭頂部の形が尖っている、「角兜巾型(かくときんがた)」のものが多いです。
・ 神道ではお線香を拝しません。そのため香炉は置かずにお供え用の「八足(はっそく)」と呼ばれる台を置きます。
角兜巾型のお墓を建てるのは、その形が「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」と言われる、神道に伝わる「三種の神器」のひとつを模したものと言われてきました。
さらに宗教によるお墓の違いには、墓石に彫刻する「言葉」もありますよね。
【 宗教によるお墓の違い:神式の彫刻 】
★ また表面に彫刻する文字は、仏式では「〇〇家之墓」などがありますが、神式では「〇〇家奥津城(おくつき)」や、「〇〇家奥都城」と彫ります。
・ 棹石の表面の彫刻は「〇〇家奥津城」ですが、その右側面にはお墓に入っている人の名前が刻まれます。
仏式では霊位が付き、「命(みこと)」「命霊(みことのれい)」の他、男性なら「大人(たいじん)」、女性では「刀自(とじ)」を刻む場合もあります。反対の左側面には、お墓の建立年月日を入れてください。
付属品としては霊標や玉垣などがあります。ただしこれは宗教によるお墓の違いと言うよりは、「名称」が違うだけです。霊標は仏式では墓誌、玉垣は仏式では外柵と言います。
キリスト教式のお墓の特徴
宗教によるお墓の違いを考える時、キリスト教式のお墓と言えば、十字架の形を思い浮かべる方もいますが、現在ではほとんど見なくなりました。実は、キリスト教式のお墓は基本的には自由です。
【 宗教によるお墓の違い:キリスト教式 】
★ けれども多くのキリスト教式のお墓で洋墓が用いられています。彫刻に十字を用いる信者も多く、聖書の一節を用いるお墓も多いです。さらに名前は洗礼名(「ヨハネ」や「マリア」など)を刻む傾向にあります。
・ キリスト教式でもお線香はあげません。献花でお参りをするため、日本のキリスト教式のお墓では、献花台を配置するケースが多いです。
宗教によるお墓の違いの他に、「宗派」による違いもあります。キリスト教の場合、カトリックとプロテスタントがありますが、どちらもそれぞれに自分達の墓地を所有しています。
カトリックでは協会ごと、プロテスタントなら「日本キリスト教団」の教区ごとに墓地があるのです。
けれども、その墓地自体が民間霊園にあることも多く、キリスト教だからと言って、必ずこれらの墓地で建てなければならない、と言う決まり事はありません。ですから、民間霊園でもキリスト教式のお墓は割と多く見られます。
某民間霊園では、日本キリスト教団の合祀墓を所有しているなど、民間の霊園を見学していると、大きなキリスト教のお墓を発見することもあるかもしれません。
【 宗教によるお墓の違い:キリスト教式のお墓 】
★ 大きな宗教によるお墓の違いとして、仏式では「先祖代々墓」など、家でお墓を建てることが基本ですが、キリスト教式では本来、個人墓です。海外の映画でも、家名ではなく、名前が彫られていたりしますよね。
・ けれども比較的自由なので、キリスト教信者の方であっても家墓の形式でお墓を建てたり、家族のお墓に入ることもあります。
家墓では「家名を彫っても良いのか。」との相談もありますが、キリスト教式のお墓でも家名を彫ることはあるので、あまり気にしなくても良いのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか、今回は宗教によるお墓の違いと、それぞれの宗旨宗派による特徴についてお伝えしました。その昔には、宗旨宗派を問わない墓地と言えば、公営墓地でしたが民間霊園が増えてからお墓のデザインもどんどん自由になっています。
現代の日本では、日ごろは無宗教でも、日ごろから本などで信仰があり、いざお墓を建てる時に希望の宗旨宗派に沿ったデザインを望む方も多いです。
特に霊園の永代供養が広がるようになってから、継承者を気にする必要がなくなり、個人墓も割と気軽に建てられるようになりました。さらに終活によって、お墓に入る本人の希望が繁栄されるようになったのもあるのではないでしょうか。
それぞれの宗旨宗派に沿ったお墓の他にも、無宗教のお墓も増えています。無宗教のお墓では洋墓のプレートに、故人の好きな言葉が彫られるなどのデザインが人気です。
まとめ
宗教によるお墓の違いと特徴
・仏式は棹石、上台石、芝石の三段、もしくは四段
・神式のお墓は頭が角兜巾型のものが多い
・神式では香炉はなく、八足を配置する
・キリスト教式には本来は決まり事はない
・キリスト教式では洋墓に十字架を彫るものが多い
・キリスト教式では香炉はなく、献花台を置く
・無宗教では洋墓に好きな文字を彫ることが多い