ウチカビやヒラウコーの疑問。意外と曖昧な5つの事とは
ウチカビやヒラウコーは、沖縄の御願では欠かすことができない存在ですよね。他県の方々にとっては珍しいものですが、沖縄の方々にとっては幼い頃から年中行事を通して、毎月扱ってきた御願道具です。
ウチカビは御先祖様へ贈る「あの世のお金」で、専用のボウルでウチカビを焚いて煙にすることで天国へ届けます。一方、ヒラウコーは沖縄のお線香で、日本線香(一般的なお線香)の六本分がくっついた形が特徴です。
どちらも沖縄のスーパーではお馴染みで、旧正月や沖縄最大のお墓参り行事である清明祭(シーミー)などの時期になると、大きく販売されるので、日常的に見る道具ではないでしょうか。
ただ、年長の方々が主催する御願行事では問題ないものの、自分が中心となって御願行事を行うとなると、「そういえば…。」と曖昧な部分もありますよね。
そこで今回は、ウチカビとヒラウコーを扱う時の基礎知識をお伝えします。ぜひ一度、参考にしてみてください。
ウチカビやヒラウコーの疑問。
意外と曖昧な5つの事とは
ヒラウコーを拝する本数って?
ヒラウコーは冒頭でもお話しましたが沖縄のお線香です。日本線香の六本分の側面をくっつけたような姿形をしていて、緑色の日本線香よりも深い、黒味の強い色合いをしています。
日本線香は白檀(びゃくだん)など、昔から香り高いものですが、沖縄のヒラウコーはあまり香料は強くありません。香りを届けると言うよりは、煙を通して天へ届けたり、通信や移動をする役割が強いです。
【 ヒラウコーを拝する本数 】
★ 沖縄では代々お仏壇を継承している家を「ムチスク」と言います。ムチスクがお仏壇へ拝む際の基本は「タヒラ」の二枚(日本線香十二本)です。
・ 一枚を「チュヒラ」、二枚を「タヒラ」と言い、仏壇への御願を通して、より強い願があればタヒラと半分を拝してください。ヒラウコーは日本線香が六本くっ付いたような筋が入っているので、パキッと割ります。
ちなみに、多くの家庭でヒヌカン(火の神)を拝んでから仏壇へ移りますが、ヒヌカンをはじめとする神様へはタヒラと半分(日本線香十二本と三本)、仏壇へはタヒラ(日本線香十二本)です。
★ 仏壇への拝みはムチスクの女性が中心で行います。その他の家族や親族がヒラウコーを拝する時には半分、日本線香の時には一本を拝してください。
ヒラウコーってどんな役割があるの?
前項でも少し触れたように、沖縄の御願ではヒラウコーは煙を通して通信をしたり、何かを届けたりすることが多いです。例えば、これからお伝えするウチカビでも、焚いて煙にして天へ届けます。
【 ヒラウコーの役割 】
① 神様や祖霊へ願を伝える・願を解く(年末など)
② 神様や祖霊の魂を移動する(ヌジファー)
③ 遠くの場所へ通信をする(ウトゥーシ=お通し)
④ 願掛けが上手くできているかを確認できる
⑤ 縁結びや縁解き、除霊など
…願掛けが上手くできているかどうかを確認するには、ヒラウコーの燃え方を確認してください。キレイに火が灯っていれば問題ありません。これを「御香花」と言います。
一方、ヒラウコーの筋が残ってしまったり、黒ずんでしまうと、何か手順を間違えているかもしれません。
ウチカビは何枚焚く?
ウチカビは御先祖様が使うあの世のお金で、藁で作られた黄色い紙です。それぞれに二重の〇が五個×七個(三十五個)、もしくは五個×十個(五十個)押印されているのが特徴です。
スーパーに行くと20枚ほどが束ねられ、約100円ほどで販売されています。「ウチカビ(うちかび)」が一般的ですが、「ンチャビ(銭紙)」や「アンビカジ(かぶり紙)」などと言う地域もあります。
【 ウチカビを焚く枚数 】
★ ウチカビはを焚く枚数は御願行事によって異なります。清明祭(シーミー)やお盆などの大きな行事や法事の席では一人五枚、子ども達はそれぞれ三枚です。
・ 家では金属ボールの底に網を敷いて焚きます。専用のボールと火箸が販売されていますが、昔は芭蕉の葉を使って網にして(竹などで刺して作ります。)いました。
ウチカビを焚いたらお酒を掛けて消します(カビアンジ)が、清明祭(シーミー)やお盆などになるとお酒の他に、天へ届けるためにお供え物のおかずもボールに入れたりします。
清明祭(シーミー)のようにお墓参りの際にウチカビを焚く時には、沖縄のお墓には「ジンクラ(銭倉)」と呼ばれる、ウチカビ専用の場所があるので、そこで焚いてください。
ウチカビはあの世のお金、いくらくらい?
ここでウチカビについて良く聞かれる質問が、「ウチカビって一枚いくらくらいなの?」と言うものです。実は日本では円、アメリカはドル($)があるように、ウチカビは「元(グァン)」と言う単位があります。
【 ウチカビのお金の価値って? 】
★ ウチカビは「次の行事まで安心してご先祖様が暮らせるように」、次回まで充分なお金を天へ届けます。そのため、一元(一枚)で何十万とするのではないでしょうか。
・ 年間安心して暮らせるお金が400万円~600万円として、一人五枚、家族が五人いるとして、25枚~30枚となります。
年中行事はいくらかありますから半年分と考えても、単純計算として10万円前後ではないか…、と考える方が多いです。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の御願に欠かすことができない、ウチカビやヒラウコーの基礎知識をお伝えしました。子どもの頃から当たり前のように扱ってきたものの、御願の中心になると「?」と思う事柄は多いですよね。
ウチカビは中国や台湾などでもその文化があり、沖縄のものとはまた違うあの世のお金「ウチカビ」が販売されています。(しばしば沖縄でも見つけることができるのですが)海外のウチカビには、お金を模したものも多く、注目してみると面白いかもしれません。
また、今はすっかり見かけなくなりましたが、実は昔はウチカビの銭の押印を自分たちで押していました。そのため押印が家庭にもあったのです。
しばしば間違えがちですが、神様にも「税金」を焚いて送る風習がありますが、これはウチカビではなく「シルカビ」を焚きます。シルカビは半紙を八つ折りにして手で契り作る紙なので、使い分けに注意をしてください。
まとめ
ヒラウコーとウチカビの基礎知識
・拝む女性は仏壇にはタヒラ(二枚)を拝する
・他の家族は仏壇には半分を拝する
・神様へは拝む女性はタヒラと半分
・ヒラウコーは願掛けや報告などの役割がある
・ウチカビは拝む女性が五枚、他は三枚
・一枚が一元、十万円前後の価値がある
・専用のボールで焚いて、お酒で鎮火する
・お墓では銭倉(ジンクラ)で焚く