【沖縄の葬儀のしきたり】まだまだある本州との違いとは
沖縄の葬儀に関する独自の「しきたり」については、細かくお伝えしていますが、本州の方にとっては驚くことばかりですよね。本州で江戸時代だった頃には、沖縄では琉球王朝時代があり、そもそもの歴史や文化、信仰まで全く違うため、他にも多くの違いがあるのです。
言ってみれば、どちらかと言えば本州では昔からあり馴染みの深い、仏教による読経や供養の方が、沖縄の葬儀の風習のなかでは「新参者」であり、沖縄ではお経の「な~む~」よりも、御願で唱える「う~と~と~」の方が馴染みが深いと考えれば、当たり前のことなのかもしれません。
ただ面白いことに、今日では仏教的な儀式も取り入れ、沖縄の葬儀ではお坊さんによる読経供養が行われながら、そのすぐ後の納骨式ではユタさんが御願をして納骨する…、なんて光景も見られます。
そんな沖縄の葬儀、参列したり関わる時には、沖縄ならではの考え方や風習も理解して、参加したいですよね。そこで今回は、前回に続き、まだまだ見られる本州にはない、沖縄の葬儀、独自のしきたり・風習をお伝えします。
【沖縄の葬儀のしきたり】
まだまだある本州との違いとは
沖縄の葬儀は新聞に案内が出る
毎日新聞を見ている沖縄の人々にとっては当たり前の風景なのですが、沖縄の葬儀は新聞にて告知するのが一般的です。最近では家族葬なども増えたため、新聞で告知をしない選択も見られるようになりましたが、昔ながらの習慣のひとつでもありました。
【 沖縄の葬儀のしきたり、新聞案内 】
★ 主な沖縄の新聞は二誌ありますが、このどちらも葬儀告知の専用欄が設けられ、毎日多くの葬儀告知が掲載されるのです。
・ 「有名人の葬儀?」と思う本州の方も多いかもしれませんが、そうではありません。主に一般人の方々の葬儀告知欄となります。
遺族は家族の死後、葬儀社と打ち合わせを行いますが、この時の見積もりにはほとんどが新聞告知掲載料が入っており、地方などでは有線放送で葬儀告知を行うこともあるほどです。
沖縄の葬儀では「数珠」はいらない?
冒頭でも少し触れたように、沖縄は純粋な仏教信仰の地域ではありません。沖縄独自の自然崇拝や先祖崇拝の信仰があり、家それぞれで、その家の長や地域にすむユタによる御願を行う法事も多いのです。
【 沖縄の葬儀のしきたり、数珠は必ず必要ではない 】
★ そのため沖縄には檀家制度はありません。正確には、沖縄でも仏教を信仰し、寺院墓地にお墓があれば菩提寺があり檀家にもなっていますが、多くは檀家にはなりません。
・ そのため仏教の道具である、数珠を持参しない方々がほとんどです。本来数珠は自分の宗旨宗派に沿った数珠を持ちますが、その仏教信仰自体がないことが背景にあります。
ただ、最近では本州のマナーに従い、数珠を持参する方も見られるようになりました。宗旨宗派のない数珠が100均やコンビニなどでもあるので、気になる場合には持参してみてはいかがでしょうか。
沖縄では葬儀前に火葬している
沖縄の葬儀に参列した方が驚いた事柄に、「すでに火葬されていた」と言うものがあります。実は沖縄では「前火葬」の習慣もあるのです。ただし近年では、本州の習慣に倣った沖縄の葬儀も増え、後火葬のものも増えてきました。
【 沖縄の葬儀のしきたり、前火葬 】
★ 遺骨の状態で葬儀を行うことに驚く本州の方々も多いのですが、実はこの前火葬の風習を残しているのは、全国的にも沖縄ばかりではありません。
・ 本州でも一部の山陰地方や北海道でも、前火葬での葬儀を行う地域はあります。
沖縄の場合には、高温多湿の風土のために前火葬になったのではないかとも、言われています。
また、後ほどお伝えしますが、大きな門中墓が多い沖縄では、葬儀後すぐに納骨式が行われる習慣もあるため、葬儀を終えたまま、お墓に移動しやすい利便性もあるのかもしれません。
葬儀当日の納骨と、翌日の「ナーチャミー」
沖縄で葬儀前に火葬された遺骨、前項で少し触れたように、沖縄では葬儀後すぐに納骨されるのが昔ながらの風習です。
火葬に関しては家や地域によって、前火葬、後火葬どちらも見られますが、前火葬を前提とすれば、前日のお通夜に始まり、翌日は納棺→火葬→葬儀→納骨式までの一連が一日で終わります。
【 沖縄の葬儀のしきたり、葬儀当日の納骨 】
★ もともと門中墓に入る方でお墓がある家の場合、葬儀後そのまま納骨式を行います。納骨式ではお坊さんの読経供養がないことも多く、家長やユタさんが御願をする家も多いです。
・ そして翌日にはお墓参りを行い、これを沖縄では「ナーチャミー」と言います。
沖縄では骨壷を持ってお墓に入る
沖縄のお墓が家のように大きいことは、よく知られるところですよね。三角の瓦屋根のような形の「破風」のデザインが多いのも、より家を連想させます。
【 沖縄の葬儀のしきたり、納骨は持って「入る」 】
★ 本州ではお墓の下に納骨室があり、石材業者がカロート(扉)を開けて納めますが、沖縄では「部屋」に遺骨が並べられているのです。
・ そのため、現在ではカロートの開閉こそ、石材業者さんにお任せしますが、故人との「干支」を見ながら、選ばれた人が骨壷を持って中へ入り、一番手前に納めます。
ただし、今ではお墓の雑草を抜くなどして、簡易的な儀式にして終える家もあるようです。
いかがでしたでしょうか、今回は本州の方々には驚くことも多い、沖縄の葬儀に関する興味深い独自のしきたりをお伝えしました。本州では納骨式は四十九日を目処に行いますが、沖縄では当日済ませてしまうのが、昔ながらの慣習であることは、知らないと突然のことで戸惑うかもしれません。
「仏教信仰が本州よりも薄いなら、四十九日はあまり重要な役割を果たしていないのではないか…。」との質問も聞こえますが、沖縄でも四十九日をきっかけに忌明けとなるため、大切な日となります。
特に沖縄に深く浸透する位牌信仰「トートーメー」では、四十九日までは仮の位牌である白位牌(シルイフェー)を祀り、四十九日までに準備した本位牌に魂を移すため、欠かせない法要です。
沖縄の葬儀へ参列、さらにその後の初七日から始まる法要(沖縄では焼香=スーコーと言います。)に参列するのなら、基本的な沖縄の方々の葬儀に関する信仰や考え方を理解して行くと、遺族に寄り添う行動ができるかもしれません。
まとめ
沖縄の葬儀で意識したい風習とは
・一般人でも新聞で葬儀の告知をする
・沖縄では仏教の道具、数珠はあまり持参しない
・葬儀前に火葬される、「前火葬」の家も多い
・葬儀当日に納骨し、翌日にお墓参りをする
・遺骨を持ってお墓の中に入り、納骨する