子どものお墓や位牌☆今も残る沖縄の風習の由来
子どものお墓や位牌に関する沖縄の昔ながらの慣習のなかには、現代の人々にとっては、従うことが難しく感じるものもありますよね。
そんな沖縄独特の慣習のひとつが、まだ成人していない子どもへの、お墓や位牌に関わる慣習です。
檀家制度もなく、「信仰は?」と聞かれると「先祖崇拝」と答える方が多い沖縄では、昔ながらの良い慣習もあれば、「少しずつ改めても良いのではないか…。」と感じる慣習もあります。
ただ今までの慣習を離れるならば、その始まりまで理解した上で、自信を持って判断したいですよね。そこで今日は、昔から残る沖縄の、子どものお墓や位牌への慣習と、その由来をお伝えします。
子どものお墓や位牌☆
今も残る沖縄の風習の由来
子どものお墓を外に作る
昔の沖縄では、まだ成人していない子どもが亡くなった時、家族が入る本墓に入ることができない慣習がありました。
少しずつこの慣習はなくなりつつあるものの、沖縄ならではの個人墓地に建つ個人墓では、今もこの風習が見受けられます。
【 子どものお墓を別に建てる「側宿り」 】
★ この慣習は「側宿り(そばやどり)」と呼ばれ、本墓に入らない子どものお墓は、墓地敷地内に小さな祠を立てます。
・ また独身であったり、一度結婚したものの離婚をして、「出戻り」をした後に亡くなった、生家の女性に対しても、この「側宿り」を行う家が多いありました。
…また沖縄独特の「沖縄位牌」でも、似たような慣習を持つ家がしばしばあります。
【 亡くなった子どもの名前を隠す 】
★ 成人せずに亡くなった子どもの場合、表向きに名前を載せず、人に見えないように裏側に載せて隠す慣習もありました。
・ 家によっては、そもそも隠しもせず、名前すら載せない家も見受けられます。
…ただこれでは、子どもはもちろん、ペットまで丁寧に供養をしてお仏壇を作る家も増えた現代となっては、なかなか理解できない沖縄の人々も増えました。
「実家のお墓で供養するには、我が子が可哀そうに思える扱いをするから…。」と、実家のお墓(門中墓など)から独立し、子どもと一緒に入ることができるよう、個人墓を用意する家庭も増えつつあります。
「側宿り」の由縁とは
この「側宿り」は、「子どもが親よりも先に亡くなるなんて、親不孝だ。」と言う考え方によるものです。
一般的にもよく言われる事柄ではありますが、この慣習の背景には、中国の「儒教(じゅきょう)」によるものが大きいです。そのためか、幾ばくか一般論とは違うものがあります。
【 両親へ豪華な棺を贈る中国 】
★ 中国では、成人した子供が両親へ豪華な「棺(ひつぎ)」を贈る風習がありました。
… これがいかに豪華で高級なものかによって、自分たちが立派に成長したこと、両親への感謝や尊敬の念を表すとされ、両親の葬式を「いかに豪華に、立派に行うか」が大切です。
琉球王朝時代は中国の影響が色濃く出ていますから、その名残りが今も残る沖縄では、本州の人々が「家?」と驚くほどお墓も大きく立派ですし、葬儀の規模も大きいことで有名ですよね。
その背景には、このような中国や大陸アジアから流れてきた「儒教」の影響が大きいとされています。
【 子どものお墓は「祠」 】
★ 一方まだ成人していない…、ましてや幼い頃に亡くなった子どもは、ご両親に豪華な棺やお墓を用意できません。
… そればかりか、反対に両親に葬儀を出させる「親不孝」をしている…、とされてきました。
これが中国から琉球王朝へ流れて来た「儒教」による考え方なのですが…、現代の日本では、幼くして亡くなった小さな魂を、「親不孝だからお墓に入れない!」なんて、考える人々は少ないのではないでしょうか。
独立して子どものお墓を建てる人々
このような事情から、現代の価値観とは異なることで、子どものお墓問題をきっかけにして、昔ながらの先祖墓や門中墓から独立し、自分達の代から始まる家墓を新たに建てるケースも多くなりました。
【 子どもと一緒に入るお墓を建てる 】
★ 現代では県で規制が増えたことにより、沖縄でも新しいお墓は霊園で建てる家庭が増え、独立した後は、子ども個人のお墓を霊園に建てる事例が多いです。
・ 後々自分達が人生を終えた後、このお墓に入るように契約をしています。
…位牌に対しても考え方は同じで、子どもであっても隠すことなく名前を乗せる家が増えました。
また、それが難しい家庭では沖縄位牌を避け、本州や離島に見られる個人位牌を用いて供養する家庭も見られます。
昔ながらの慣習を残すことも大切ですが、その慣習の由縁や背景まで理解してみると、時に自分達の愛情や心を大きく曲げてまで、従う必要のないものもあるのかもしれません。
いかがでしたでしょうか、今日は昔ながらの沖縄の、今もまだ見受けることができる子どものお墓や位牌にまつわる慣習、「側宿り」についてお伝えしました。
沖縄では故人の魂について、時に「祟り」として恐れ、祟りを避けるための慣習や習わしがあったり、今回のような現代では従いにくい価値観による慣習もありますから、その由来まで理解することも時に必要です。
子どものお墓や位牌に限らず、本来は故人の心をいかに供養するか…、が大切ですから、故人や家族の心が痛むような慣習であれば、必ずしも従う必要は、ないのかもしれません。
お墓や棺、葬儀の体裁的な「豪華さ」「規模の大きさ」を重んじた時代が日本にもありましたが、現代では「偲ぶ心」をより大切にしたお供養が増えています。
まとめ
子どものお墓「側宿り」の風習とは
・子どもが亡くなると、本墓に入れない慣習があった
・墓地の敷地内に、小さな祠が建てられた
・位牌にも名前を裏に入れて、隠す慣習があった
・これは「親不幸」とされたためだった
・現代ではこの考え方が合わなくなっている
・独立して子どものお墓を建てる事例も増えた