沖縄に残る「お墓の年忌」☆北部南部、各地で違う慣習
沖縄では「お墓の年忌」祝いがありますよね。今では少なくなりましたが、昔は豚の顔(チラガー)や魚、地域によっては生きたニワトリをお供えして、盛大にお祝いをしました。
沖縄の人々にとってお墓は、「終の棲家」の存在として、生きている者の家よりも大切なもの…、その昔は、お墓を建てる前に家を建てると、周囲の人々の噂になったほどだったそうです。
そんな大きな存在である沖縄のお墓の年忌祝い、建てた墓主としては、しっかりと行いたいですよね。そこで今日は、沖縄で行われるお墓の年忌祝いの基礎知識と、各地で違う祝い方までお伝えします。
沖縄に残る「お墓の年忌」☆
北部南部、各地で違う慣習
そもそも、沖縄の「お墓の年忌」とは
本州では耳慣れない沖縄の「お墓の年忌」…、これは名前の通り、新しくお墓を建ててからの年数を差しています。そして沖縄ではお墓の年忌毎に、「死者が出なかった場合に」お祝いを行うのが習わしです。
【 沖縄の「お墓の年忌」祝い 】
☆ ただし、新しく建てたお墓に死者が出たら、そこからの年忌祝いはなくなります。そして、毎年行う訳ではありません。
・ 地域によって異なりますが、基本的に一周年、三周年、七周年、十三周年、二十五周年、三十三周年…、と行います。
…つまり、新しくお墓を建ててから二年目に死者が出た場合、沖縄では一周年のお墓の年忌祝いは行いますが、三周年からはなくなることになります。
ただしこの沖縄のお墓の年忌祝いを行う時期も、地域によっての違いは大きいです。行っても三周年まで…、と言う門中や地域も少なくありません。
また、縁起を担ぐ意味合いでも、お墓の新築祝いに三十三周年のお祝いまで済ませるケースも見受けられます。
南部に多い、沖縄のお墓の年忌祝い
前項で少し触れましたが、沖縄ではお墓の年忌祝いの慣習はほぼ全島に広がっているものの、そのお祝いの方法は地域によって違いが大きいです。
そのなかでも比較的多い、沖縄のお墓の年忌祝いのウサギムン(お供え物)をお伝えします。これは南部に多いウサギムンの例です。
【 南部に多い、沖縄のお墓の年忌祝い 】
☆ お墓の内部
・ 丸盆にお酒、花米(※1)、シルカビ(※2)の上に供えたヒジュルウコー(※3)をタヒラ(二枚=日本線香十二本)
☆ 墓前のウサギムン(お供え物)
① 豚の顔(チラガー)にシバを加えさせたもの。
② ニワトリ一匹をまるまる煮たものを一対の二皿。
③ ジューバク(重箱)のウサンミ(御三味)をチュクン(二セット)
… 清明祭(シーミー)など、沖縄のお墓参りや御願では定番のお供え物です。お祝いのジューバクを用意します。「チュクン(二セット)」とは、お餅重が二重、おかず重が二重です。
④ 貝の膳を一対の二膳
… 貝類(ハマグリなど)七匹の奇数個を皿に乗せ、扇子を置きます。さらに素麺(そうめん)を二束置いたお膳を、一対の二膳、左右に供えてください。
以上が沖縄のお墓の年忌祝いのウサギムン(お供え物)です。※1の花米は、何もしていないお米粒を差し、沖縄の御願では良く出てきます。
※2の「シルカビ」は半紙を千切った白い紙で、沖縄では「神様へお渡しするお金(税金)」などと言われ、御先祖様へお渡しする「ウチカビ」と対をなすものです。
※3の「ヒジュルウコー」とは、「ヒジュル」が「冷たい」で「ウコー」が「お線香」…、つまり、火を灯していないお線香をさしています。
ジューバクのおかず重は清明祭(シーミー)などと同じで、結び昆布や豚の三枚肉の煮物、天ぷらなどを詰め、お餅はお祝い用なので、白餅と色付きや餡入りの餅を詰めてください。
北部に見られる、沖縄のお墓の年忌祝い
前項でお伝えしたお供え物は、主に南部を中心に多く見られます。ただ、南部であればどこも全く同じと言う訳ではありません。
例えば浦添市などでは、シバを加えた豚の顔(チラガー)が二頭供えられたり、貝の膳ではなく、習字で使う「硯」をお供えする例もあります。
ここでは、少し趣の違う沖縄北部のお墓の年忌祝いを一例としてお伝えします。
【 沖縄北部、お墓の年忌祝い 】
☆ お墓の内部
① シルカビの上にヒジュルウコーをタヒラ(二枚)置く。
② 四角い膳に、そろばん、硯(すずり=習字で使うもの)と筆、カニを一匹乗せたお皿を配膳し、これを一対の二膳用意します。
③ さらにお膳の片方には赤い扇子、もう片方には白い扇子を供えてください。
☆ 墓前のウサギムン(お供え物)
① 豚の顔(チラガー)にシバを加えさせたものを、一対の二皿。
② ウチャヌク(※4)を三つシルカビの上に乗せる。…これを三セット用意します。
③ 四角い膳に、徳利(とっくり)と盃のお酒を一対の二セット、花米を一皿、塩の皿を一対の二皿、素麺(そうめん)を二束、配膳します。…これを、左右一対の二セット供えてください。
…以上が沖縄北部(名護市)でのお墓の年忌祝い、ウサギムン(お供え物)の一例です。※4のウチャヌクは、白い餅の三段重ねで、沖縄では定番のお供え物となります。
また、沖縄の一部地域では、お墓の年忌祝いは行うものの、三周年以降はお供え物を供えない地域もあるなど、お祝いの仕方や規模もまちまちです。(ただし、沖縄のお墓の年忌祝いは全島に広がっています。)
いかがでしたでしょうか、今日は沖縄で行われるお墓の年忌祝いについてお伝えしました。確かに、新しくお墓を建ててから、死者が出ていないことは、お祝いになりますよね。
特に沖縄では父方の血族である「門中」のお墓も多いですから、そのお墓に入る親族は多いです。そう考えると、沖縄ではお墓の年忌祝いが出来ること自体が、有難いことなのではないでしょうか。
今では少ない考え方ではありますが、生きる者の家よりも大きく、生きる者の家よりも早く建てる…、との考え方があった沖縄では、年忌祝いも盛大に行われていたようです。
まとめ
沖縄のお墓の年忌祝いとは
・お墓の新築から死者が出ないと祝われ
・一周年、三周年、七周年…と年忌がある
・お墓の新築祝いと同じく盛大に行う
・豚の顔や鶏の丸焼きなどを供える
・お墓の内部にもお供え物をする
・地域によってお祝いの内容が大きく違う
・地域によってお祝いの年数や方法も違う