沖縄ではお供え物もオリジナル。他県にはない供物の基本
沖縄のお供え物は、他県にはない独特なものですよね。けれども地元の方々にとっては沖縄のお供え物は、幼い頃から見て来た馴染みのあるものです。
ただ、だからこそ「何となくは知っているけれど、よくよく考えると曖昧!」と言う若い方々も多いのではないでしょうか。例えば、お盆などで用意する沖縄のお供え物、重箱料理は「ウサンミ」と言うのですが、名前は知らなかったりします。
次代に沖縄で御願行事を催さなければならないとしても、「おばぁに何かあったらどうしよう…。」なんて方も多いかもしれません。そんな時、ちょっと確認できれば助かりますよね。
そこで今回は、沖縄のお供え物について、まずはごくごく基本からお伝えします。「そんなの知ってるよ~」と言う事柄もある一方、「そうだったの!」と言うものもあるかもしれません。
沖縄ではお供え物もオリジナル。
他県にはない供物の基本
沖縄のお仏壇のお供え物の置き方
日ごろから見ている沖縄仏壇のお供え物ですが、置き方が本来はあります。そもそも他県と違い、大きな沖縄仏壇は三段に分かれていますよね。
【 沖縄仏壇へのお供え物 】
① 一段目 … ウコール(香炉)を真ん中に、両脇にろうそくです。
② 二段目 … 中央に向かって左側がお酒、右側がミジトゥ(水)、続いて両脇に対のウチャトゥ(お茶)、さらにその両脇に対の果物の盛り合わせを置いてください。
③ 三段目 … 中央に沖縄位牌、その両脇に花生けに差した花を対で飾ります。
…これが基本の沖縄仏壇のお供え物の仕方です。沖縄では白いヒヌカンの容器に対して、仏壇でも青い花柄の決まった容器が多く販売されていますが、本来は柄までは指定はありません。
また、果物は後ほど詳しくお伝えしますが、果物の他にもムイグァーシ(お菓子)を沖縄ではお供え物にすることがあります。
沖縄のお供え物、果物の盛り合わせ
沖縄仏壇の二段目、両端にお供えするのが果物の盛り合わせです。こちらは他県の仏教でも同じなのですが、「丸い果物」が縁起が良いとされています。例えば、りんごやみかんなどがありますが、沖縄ではバナナは定番です。
【 沖縄のお供え物、果物を盛り合わせる 】
★ そもそも、沖縄で果物がお供え物になるのには「ミーナイン」と言う縁起物だからです。「ミーナイン」を訳すと「実が成る」、でそれぞれの果物にも意味合いを込めています。
・ 例えば、バナナはその形から父性の象徴とされ、父親を敬う気持ちを表し、みかんは母性の象徴です。(こちらは語呂合わせで、みかんは袋状になっていますが、母親を「袋親(フクルシン)」と呼んでいました。
本州でも「お袋」と言う呼び方がありますよね。その他、前述したようにムイグァーシ(お菓子)の盛り合わせを沖縄ではお供え物にしますが、法事などの場合には、そのお菓子の内容も決められているので注意をしてください。
沖縄のお供え物、お菓子の盛り合わせ
ムイグァーシ(お菓子)の盛り合わせを沖縄でお供え物にする御願行事は、毎年春頃のお墓参り行事では、先ほどお伝えした法事の他、清明祭(シーミー)やお彼岸、お盆などがあります。
法事では決まったお菓子を盛り合わせる家がほとんどですが、これらの年中行事では現代の子供達が喜ぶお菓子を供えて、後々ウサンデー(お供え物を下がりを、ご先祖様と一緒にいただくこと)することが多くなりました。
【 沖縄のお供え物、ムイグァーシを盛り合わせる 】
★ 本来「ムイグァーシ」は決まった法事用の七種のお菓子を差しています。このムイグァーシを一対(二皿)の他、「ハーガー」一対、「ダーグ(団子)」一対を用意します。
① ムイグァーシ … クシチグァーシ(らくがん)、ボタンコー(牡丹を象ったらくがん)、ムムグァーシ(桃菓子)、ハナボール(花ぼうろ)、マキガン(巻き菓子)、コンペー(光餅)、シルマンジュー(饅頭)の七種です。
② ハーガー … ミーフガーグァーシ、ヒーグァーシと呼ばれる、固めのお菓子、丸いものと輪っか状のもので、合計7個が一皿に添えられます。(これを二皿)
③ ダーグ(団子) … 団子です。沖縄のお供え物では白いダーグをそれぞれ7個ずつ、二皿を対で用意してください。
このムイグァーシですが、年中行事では比較的気軽に盛り合わせる家庭が多く、法事などではセットのムイグァーシを購入する家が増えています。
沖縄のお供え物、ウブクやウチャワキ
沖縄のお仏壇へのお供え物には、ウブク(ご飯)やウチャワキ(お茶脇)もありますよね。ウブク(ご飯)の基本は、ヒヌカンなど神様へは三膳、お仏壇へは二膳、と言う点です。
【 沖縄のお供え物、ウブクやウチャワキ 】
★ ウブクはその時々によって白ウブク(白ご飯)と赤ウブク(赤ご飯)があります。白ウブクはそのまま白飯ですが、赤ウブクは小豆などを入れて赤いご飯にしてください。
・ お盆などで膳料理を出すのでなければ、お茶碗ではなく、専用の小さめの容器や、なければ湯呑みなどを代用して、少し盛り気味に盛ります。
ウチャワキは「お茶脇=お茶請け」ですので、ご馳走を盛りつけたお皿を供えれば良いのですが、品数が奇数でなければなりません。これが基本です。ちなみにムイグァーシも七種ですし、果物も奇数を盛りつけます。
多いおかずは、魚のてんぷら(沖縄ではお馴染みおかずです。)や、かまぼこ、豚の三枚肉の煮つけや昆布料理などです。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄のお供え物のごくごく基本部分をお伝えしました。ただ一記事ではお伝えできないほど、多くのお供え物があります。
また、清明祭(シーミー)などの年中行事の他、法事でも大活躍する御三味(ウサンミ=重箱料理)ですが、こちらに関しては詳しい記事が別記事であるので、こちらをご参照ください。(「御三味(ウサンミ)は沖縄の行事料理☆お供えの作法とは」など)
ただ、沖縄ではお供え物だけではなく、御願自体にもさまざまな文化があるので、ウチカビの焚き方や枚数、ヒラウコーの本数、シルカビの作り方…、などなど、いざとなると「あれ?」と思う方も多いのではないでしょうか。
ちなみに供え花ですが、沖縄では造花はあまり良しとしません。鉢植えのようなものも「根付く」のでタブーです。沖縄では庭から取って来たり、ごくごく自然な草花が好まれます。
この点も別記事、「ウチカビやヒラウコーの疑問。意外と曖昧な5つの事とは」などでお伝えしていますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
まとめ
沖縄のお供え物の基本とは
・一段目がウコールとろうそく
・二段目がお酒、水の両脇にお茶と果物
・三段目は位牌の両脇に供え花
・果物はバナナ・りんご・みかんが基本
・お菓子は七種類を対で用意する
・ウチャワキ(お茶請け)も奇数品を盛る
・お花は自然のものを摘んで供えて良い