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沖縄の悪疫払い「シマクサラシ」。家族で読みたい由来とは

沖縄の悪疫払い「シマクサラシ」。家族で読みたい由来とは
沖縄では「シマクサラシ」と呼ばれる、旧暦2月に行う悪疫払いの行事があります。今ではすっかり少なくなりましたが、集落単位で行うこの儀礼は、牛や豚の肉の汁椀が振舞われ、参加した方は印象深いですよね。

 

ただ、一方で沖縄のシマクサラシでは悪疫払いのために牛や豚の骨や血を用いるために、本州などから初めて参加した方は、驚く方も多いかもしれません。

 

集落に繋がる道に張る魔除けの左縄には、牛や豚の骨を括り付けますし、集落内の家では屋敷の四隅に、牛や豚などの動物の血を付けた小枝を差して厄払いをします。

 

沖縄のシマクサラシに触れると、その由来となった昔話にも興味を持つ方は多いですよね。そこで今回は、沖縄の御願儀礼「シマクサラシ」にまつわる昔話をお伝えします。



 

沖縄の悪疫払い「シマクサラシ」。
家族で読みたい由来とは

 

十五貫(お金)か、お話か


ある貧乏な家に生まれた男が、金持ちの家に下男として住み込みで働いていました。

 

「この大晦日もここで過ごすのかなぁ?。」と思っていたのですが、主人が「今日は大晦日だから、どうぞ家に帰って家族と過ごして下さい。皆に十五貫と肉を渡しましょう。」と下男達に言いました。

 

【 沖縄のシマクサラシ、お金かお話か 】

 

★ さらに主人は「ただ、もし十五貫よりも『お話』を聴きたい人がいれば、『お話』を聴かせます。ぜひ、故郷への土産話にしてください。」と言います。

 

・ ほとんどの下男達は十五貫を選んで帰ったのですが、この男だけが『お話』を選びました

 

聴いてみるとそのお話は「牛巻カラクイ」の物語で、「やっぱり十五貫をもらった方がよかったのかなぁ?。」とガッカリしていると、「この『お話』の価値は今に分かりますよ。」と主人は言ったのです。

 

 

話す牛と山田のカンジューク


それでも『お話』を選んだことに後悔しながら男が家路を辿っていると、目の前に綱に絡まって動けなくなった牛がいました。「これは牛巻カラクイでは?」と思ったものの、「まさかなぁ?」と通り過ぎました。

 

【 沖縄のシマクサラシ、話す牛 】

 

★ しばらく経つと「待ちなさい」と声が聞こえます。振り返っても何もないのでまた行こうとすると、また「待ちなさい」と聞こえるので引き返すと、声の主は先ほどの牛でした。

 

・ 牛は男のクバ笠に水を汲んで飲ませてくれ、と言うので、男は水を汲んできて飲ませました。すると牛は、自分の事情を話し始めます

 

どうやら牛は山田カンジューク(鍛冶屋)の牛で、元気な頃はこき使われていたものの、年を取ってよぼよぼになると捨てられたとのこと…。そこで男に「山田カンジュークの家に泊まり、牛から話を聞いたと伝えなさい。」と言うのです。

 

【 沖縄のシマクサラシ、山田カンジュークとの賭け 】

 

★ 男が山田カンジュークの家に行き、一晩泊まって事情を話すと、「牛が話せる訳がない!お前は嘘をついているから、賭けをしよう。」と山田カンジュークは言い、賭けをすることになりました。

 

・ 牛が話せば男は山田カンジュークの財産を全てもらい、話さなければ男は山田カンジュークの家で一生下男として働くと言う賭けです。

 

連れて来られた牛はなかなか話さず、男は一度は諦めましたが、最後の最後でとうとう牛は話し、男は山田カンジュークの財産を得ることになります。

 

 

沖縄一強い、真栄田カンジュークの牛


翌朝、牛は「沖縄県一強い牛を誇る真栄田カンジュークの元へ行き、決闘を申し出なさい。」と男に言います。

 

男は牛に言われたままに真栄田カンジュークの元へ行きますが、男の牛はやせ細ってよぼよぼ…、とても真栄田カンジュークの牛に勝てそうにはありません。

 

【 沖縄のシマクサラシ、真栄田カンジュークの牛 】

★ 真栄田カンジュークは「馬鹿にするな!これでお前の牛が勝ったら、私の財産を全てくれてやる!」と言い、ここでも賭けをすることになりました。

 

・ 牛は男に「決闘の当日、片角には天秤を、もう片角には底をくり抜いた枡を掛けて行きなさい。」と言います。男が牛の言う通りにして決闘場に行くと、真栄田カンジュークの牛は闘志を失い、すんなりと勝ってしまったのです。

 

こうして、男は真栄田カンジュークの財産ももらうことになりました。「申し訳ないなぁ~」と男が思っていると、牛が言います。

 

「山田カンジュークの家はもともとお前の家だった。山田カンジュークはお前の祖先をそそのかして財産を横取りしたのだ。その後、欲深い真栄田カンジュークも残りの財産を取られたのだ。」

 

 

ご馳走様でした、山田のカンカー


牛の言うことには、「牛はもともと男の祖先の生まれ変わりで、本来は雨露になって自分の子孫の持つ田畑に降り注ごうと思っていたところ、あぜ道に落ちてしまった…。」と言うことでした。

 

「あぜの草は刈り取られ牛に食べられたために、今牛として生きている。これから辻まで行って私をさばき、その肉を煮込んだ汁と中身のない汁を、村の者にふるまいなさい。」と言います。

 

【 沖縄のシマクサラシ、肉汁をふるまう 】

 

★ 男が嫌だと言うと牛が続けます。「牛として生まれたからには、その肉を人々に食べてもらわなければ成仏できない。後にお前の子どもとして生まれ変わるから、私の肉をふるまいなさい。」

 

・ そこで男は牛に言われた通り、辻に連れ出してさばき、肉汁と中身のない汁を村人にふるまい、牛の遺言通りに村人にお願いして、皆で「ご馳走様です。山田のカンカー」と言いました。

 

 

赤ちゃんの生まれ変わり


牛は「お前の子どもに生まれ変わる」と言いましたが、男には妻はおりません。「どうしたことかなぁ?」と思っていると、ある日山原(やんばる)から来た娘がやってきました。

 

娘は男の家に泊めてくれと言い、男は一度は断ったものの結局泊めることになります。そして男女の仲になったものの、娘は帰って行きました。

 

【 沖縄のシマクサラシ、赤ちゃんの生まれ変わり 】

 

★ けれどもこの時娘は妊娠していて、赤ちゃんが生まれ誕生日を迎える頃、再び男を訪ねてきました。「一緒に育てて欲しい」と言うのです。

 

・ その時男は牛の遺言を思い出します。牛は「生まれ変わった証として、左肩に牛の角の痣を付けて生まれて来る。」と言ったのです。

 

試しに赤ちゃんの左肩を見てみると、牛の痣がありました。男は「おぉ、これは正しく私の子!」と娘を迎え入れ、一緒に子どもを育てて、仲睦まじく連れ添ったとのことです。

 

 

 

いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の行事、シマクサラシの由来となった昔話をお伝えしました。これは沖縄県でも読谷村の喜名に伝わる民話で、沖縄のシマクサラシの由来と言われる昔話は、他の地域にもいくつかあります。

 

文中にある「ご馳走様でした。山田のカンカー」は、沖縄でも北部の恩納村を中心に広がった風習です。この言葉を言いながら食べることで、疫病や伝染病にかからないと言う家もあります。

 

もともとは豚の伝染病が広がった時期があり、この伝染病(フーチ)が広がってきたため呪いとされてきました

 

沖縄のシマクサラシにまつわる昔話の多くで、牛は自分で話して「自分を殺して人々にふるまうように。」と言っています。首里方面では「私を料理して皆で食べると、村人が病気に掛からないだろう。」と言っているのです。

 

このように「命をありがたく頂く」精神が、沖縄のシマクサラシの行事や昔話から垣間見ることが出来るのではないでしょうか。

 

 

まとめ

沖縄の行事、シマクサラシの昔話

・牛は男の祖先の生まれ変わりだった
・先祖が騙されて取られた財産を取り返す
・牛は「自分を料理してふるまいなさい。」と言う
・男が村人に牛をさばいだ料理をふるまう
・村人は「ご馳走様でした、山田のカンカー」と感謝する
・その後生まれた赤ちゃんには、牛の角の痣があった

 



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