沖縄の門中墓に入れる範囲は…。増える個人墓と5つの事情
沖縄の門中墓は大きな家のようなお墓だけではなく、「門中」と呼ばれる括りも独特ですよね。沖縄の門中墓と言っても、そのお墓に入れる範囲などは家や地域によってさまざまです。
ただ、沖縄の門中墓では「父方の血筋」を持つ一族とされているのが、本州とは大きく違うところではないでしょうか。
本州に多い先祖代々墓と同じように、お墓を継承した家族を中心として入る家もあれば、より広い一族が入る沖縄の門中墓もあります。始祖から広がる親族を許容する沖縄の門中墓もあるため、大規模なものも少なくありません。
そこで今回は、沖縄の門中墓について、「自分は入れるのか」や「後々沖縄の門中墓を引き継ぐことになりそうだけど…。」などなどの相談について、比較的多い意見や風習をお伝えします。
沖縄の門中墓に入れる範囲は…。
増える個人墓と5つの事情
沖縄の門中墓を引き継ぐ、むーとぅーやー
実は、全国的にも有名な父方の血筋を一族とする沖縄の門中墓や、門中制度ですが、これは琉球王朝の流れを汲んでいます。そのため一般庶民の間では、もともとは「村墓」などが主流でした。
本州の明治時代の中期に、明治政府による廃藩置県が行われるまで、亀甲墓や破風墓と言った、現代の観光にもなっている琉球墓は、一般庶民が建てることはできなかったのです。
【 沖縄の門中墓、地域や家で違う 】
★ そのためか、一般的な見解はありながらも、地域はもちろん家によっても、沖縄の門中墓に入れる範囲の解釈は違います。
・ 沖縄の門中墓では、お墓を引き継いだ直系の家族を「むーとぅーやー」と言い、いわゆる墓主です。法的にはこの墓主が了承をすれば、誰でもお墓に入れることになります。
ちなみに「父系の血族」を重要視しているため、「本州のようにお墓の継承者がいないから…。」と、婿養子をもらったり、養子をもらって継承することは、ほぼありません。
むーとぅーやーに沖縄の門中墓を継承する男の子が出来なかった場合には、次男や三男の家系から継承者を探すことになります。
沖縄の門中墓に入れる範囲、多い2つのパターン
前項でお伝えしたように、家や地域によって、お墓に入れる人の解釈が違うことが多い沖縄の門中墓ですが、大きく分けると2つのパターンが多く見受けられます。
【 沖縄の門中墓、入れる範囲のパターン 】
① 父系の血族なら誰でも …
・ 始祖から始まる血族なので、継承した家族だけではなく、その親族と家族(嫁)まで全員が入ることができます。
② お墓を継承した家族が代々入る …
・ 本州の先祖代々墓の制度に近い考え方で、沖縄の門中墓を継承した長男(など)とその家族が入り、次男以降の男性は新しくお墓を建てる解釈です。
②のお墓を継承した家族のみが入る解釈は、比較的那覇市近郊に多くなります。
沖縄では門中墓とお仏壇をセットで継承することが多いので、お仏壇継承の三つのタブーのひとつである「ちょーでーかさばい」(兄弟がひとつの仏壇に入ってはいけない)に準じた解釈です。
離婚した女性の入れるお墓
沖縄の門中墓で最も相談が多いのが、離婚した女性が入るお墓です。本来、沖縄の門中墓では父系の血族に準じるため、結婚をしていれば、旦那の門中墓に入ることになります。
また子どもも旦那の門中墓に入るのが、最も多い解釈なのですが、離婚をした元妻に関しては、門中によってさまざまな解釈に分かれるのです。
【 沖縄の門中墓、離婚した女性の場合 】
★ 結婚をして子どもを産み離婚に至ったケースでは、本州の考え方であれば実家のお墓に入る事例が多くなります。一方、沖縄の門中墓では、実家のお墓に入ることができない事例が多いのです。
・ この場合には本人も生前に自覚していることが多く、自分で生前墓を建てていることも少なくありません。霊園で個人墓を建て、解決するケースが多くなりました。
以前は、「元嫁の遺骨が嫁の実家から突然送られてきた…。」などの相談もしばしばありました。離婚しても尚、元夫のお墓に入る解釈を持つ家もあったのです。
また、沖縄の門中墓の敷地の端っこに祠を建て、そこに納める事例も多く、これは幼くして亡くなった女児などでも、このようなお墓で解決することがあります。
沖縄の門中墓を引き継ぎたくない!
実は近年では反対に「門中墓に入りたくない!」と、生前から宣言して個人墓を建て、沖縄の門中墓から独立する方々も増えてきました。
【 沖縄の門中墓、増えた独立 】
★ 沖縄の門中墓は父系の血族でさえあれば、比較的寛容に多くの人々が入ることができるのですが、父系の血族ではない場合、もしくは女性の場合には、とても頑なに拒否されることがあります。
・ 例えば、幼い女の子を亡くして門中墓に入ることを拒否された場合、親であれば我が子と一緒のお墓に入りたいのは当然ですよね。
そのため、新しく子どもにお墓を建てて、後々自分も入るケースなどがあります。その他、独身や離婚した女性はもちろん、門中墓のしきたりを嫌う若い世代が、早々に親の遺骨とともに独立することもあります。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の門中墓に入れる範囲や、一般的な解釈についてお伝えしました。法的には墓主の承諾を得れば(霊園であれば墓地管理者の承諾も必要)、誰でもそのお墓に入ることができます。
ただ、昔から「父系の血族」を重要視してきた沖縄の門中墓では、いくら長く同居してきた気のおけない家族だからと言って、「それはそれ、これはこれ」として、お墓には入れないことも少なくはありません。
最後に沖縄の門中墓から独立し、個人墓を建てる事情として、「遠方に住むために門中墓の年中行事に参加できない」とする方もいました。
沖縄の門中墓を引き継ぐために、50歳などの一定年齢になったら、お墓行事を学ばなければならない家も多いです。なかなか遠方では沖縄の門中墓は、継承していくのは難しいのかもしれません。
まとめ
門中墓に入れる範囲や、現代事情
・「父系血族」であれば、解釈は家や地域で違う
・父系の親族がみな入る門中墓
・お墓を継承した家族が代々入る門中墓
・離婚をした女性が個人墓を建てる事例は多い
・門中墓からの独立例も増えてきた