お墓に彫刻する文字、現代の傾向と5つの基礎知識
近年ではお墓に彫刻する文字に家名を選ばず、「愛」や「ありがとう」などなど、抽象的な言葉が目立つようになりましたよね。これは現代のお墓事情が良く分かる現象のひとつです。
少子化が続き夫婦で両家のお墓を引き継ぐ、その子どもも両家を引き継いで四基のお墓を管理する…、そんな事態も見られるようになった昨今、よりムリなくお墓を管理しようと、新しいお墓に合葬する事例も増えました。
そうなると昔のように「○○家之墓」などの家名ではくくれませんから、昔ながらの家名を彫るお墓を避け、抽象的な言葉を彫ることで、そのお墓に入る人々のくくりを設けないようにしているのです。
そんなお墓に彫る文字、「何でも書いていいですよ。」「自由に考えてください。」なんて言われても、お墓ですし永代に渡り続くことをかんがえると、そうそうたやすくは決められないですよね。
そこで今回は、お墓に彫刻する文字で人気のの言葉と、現代の傾向をお伝えします。ぜひ、参考にしてみてください。
お墓に彫刻する文字、
現代の傾向と5つの基礎知識
お墓の文字が自由なのは、洋墓が多い
まず、お墓に家名を入れずに自由な言葉を彫る場合、洋墓を選ぶ事例が多く、和墓などで家名を入れない場合には、自分の家の宗旨宗派にそった言葉(「南無阿弥陀佛」など)を入れることが多いです。
【 お墓に彫刻する文字、和墓・洋墓 】
★ 和墓であれば宗旨宗派に沿った、下記のような仏語を選ぶ家が多くなります。
① 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ) … 浄土宗・浄土真宗・天台宗
② 南無釈迦牟尼仏(なむしゃかにぶつ) … 臨済宗・曹洞宗(禅宗)
③ 倶会一処 (くえいっしょ) … 浄土宗・浄土真宗
④ 南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう) … 日蓮宗
⑤ 南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう) … 真言宗
…などなど。
「南無阿弥陀仏」などは有名ですが、浄土宗や浄土真宗で多い「倶会一処」は、倶が「供に」、一処は「ひとつところ」の意味合いがあり、「供にひとつところで会う」となります。
和墓に彫刻する文字、四字熟語
また和墓では四字熟語の仏語を選ぶこともできます。現在人気の平仮名や一文字、二文字の言葉は、デザイン的にも洋墓の方がバランスが良いです。
【 お墓に彫刻する文字、四字熟語 】
① 知恩報恩(ちおんほうおん)
… 「御恩に気づき、御恩に報いる」の意味合いがあります。
② 涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)
… この世の欲(煩悩)を取り除いて、涅槃(ねはん)になった世界に、静寂(安らぎ)がある、と言う意味合いです。
③ 和顔愛語(わげんあいご)
… 和やかな笑顔と愛情溢れる言葉で人と接することを指しています。
④ 望己利他(もうこりた)
… 己を顧みず(自分の損得を考えず)、他人のために(利)尽くすことが、慈悲の極みである、と言う意味合いです。
…などなどがあります。
例えば、いつも笑顔でその場の雰囲気を和やかにしていた思い出が大きい故人なら「和顔愛語」であったり、人に尽くす人生であれば「望己利他」と選ぶことが多いです。
洋墓で人気の言葉
一方、洋墓では一字の漢字を大きく彫刻する例が増えました。前述した四文字熟語類もありますが、より自由に選んでいる印象を受けます。
【 お墓に彫刻する文字、人気の文字 】
★ 愛・絆・心・和・空などが人気が高い文字で、文字の他に脇に飾りのイラストを彫ったり、台部分に家紋を彫ったりすることも多いです。
・ また二字の言葉も多く、慈愛・感謝・敬愛・希望・悠久などが多く見られます。
オリジナルデザインを墓石に彫刻することはできますが、基本的には石材店より提案された、いくつかの書体を採用することが多いです。一般的には行書体・楷書体・隷書体になるのではないでしょうか。
洋墓ではひらがなや英語も
洋墓ではひらがなも多く、ちょっとした言葉や英語、時には英語の文字もお墓に彫刻する文字として選ばれています。
【 お墓に彫刻する文字、ひらがなや英語 】
① ひらがな … 「ここに眠る」「永遠に」「心やすらかに」
② 英語 … 「Thank you(ありがとう)」「Forever(永遠)」「Love&Peace(愛と平和)」
…などがあります。
洋墓になると詩などを彫刻する方もいますが、ひとつ注意をしたい点は著作権です。最近ヒットした曲の一節などになると、お墓に彫刻する文字であっても著作権が発生しますので、注意をしてください。
お墓の表以外に彫刻する文字
特に和型で言えることですが、お墓に彫刻する文字には、入れなければならない事柄も多くあります。葬儀後にすぐ納骨せず、四十九日に納骨するのもそのためで、四十九日までに準備をする家が多いです。
【 お墓に彫刻する文字、和墓の基本 】
★ お墓には表面に彫刻する文字の他に、裏面には埋葬する故人の①戒名②没年月日③俗名(生前の名前)④享年を彫ります。
・ 側面には新規でお墓を建てる場合、彫刻する文字は①建立者の名前と②建立年月日です。
いかがでしたでしょうか、今回は近年多様になりはじめた、家名以外のお墓に彫刻する文字についてお伝えしました。
和墓よりも洋墓の方が、お墓に彫刻する文字は自由度が高いですが、近年では和墓でも本文のような仏語が増えてきました。特に終活を通して本人が建立する、生前墓(寿陵墓)は自由度が高いです。
お墓に彫刻する文字はもちろん、彫り方にも種類があり、大まかには深彫りと浅彫りに分かれます。深彫りはくっきりはっきりと存在感がありますが、それだけに掃除の手間は掛かるかもしれません。
深い部分にコケが出てしまったりもしますので、お墓参りの際には歯ブラシを持参し、細かい部分を掃除してください。
浅彫りは色のコントラストで文字を浮き出すようなものなので、黒い石材の方がよりハッキリとお墓に彫刻した文字が映り、薄いグレーなどの明るめの色合いだと、存在感が薄いかもしれません。
本記事も参考にしながら、ぜひ後々まで気持ち良くお墓参りができるような、お墓に彫刻する文字を選んでみてください。
まとめ
お墓に彫刻するのに、人気の言葉と注意点
・洋墓の方が自由度が高い
・和墓は仏語や四字熟語が見られる
・人気は一文字・二文字の漢字
・ひらがなや英語の表記も多い
・戒名や生年月日など、基本の彫刻もある