ヒヌカンのお見送り☆旧暦年末に行う昇天の御願
ヒヌカン(火の神)のお見送りは、毎年旧暦の年末に行う御願ですよね。全県で違いはありますが、多くの地域で旧暦12月24日、一連の流れの最後に行う御願です。
全国的にはトートーメー(位牌=祖霊信仰)ほど知られてはいませんが、沖縄ではトートーメーと同様、もしかしたらそれ以上に、人々の身近にいる神様がヒヌカン(火の神)です。
旧正月をこれから迎える旧暦12月24日には、屋敷(家)の煤払い後に屋敷の御願→御願解き→ヒヌカンのお見送りへと続きます。
そこで今日は、旧暦12月24日、新暦2019年では1月29日に行う御願の最後、ヒヌカンのお見送りの行い方をお伝えします。
ヒヌカンのお見送り☆
旧暦年末に行う昇天の御願
ヒヌカンのお見送りとは
沖縄では馴染み深い、家庭の台所に祀られている「火の神様」が「ヒヌカン」ですよね。
日ごろは屋敷の神々を始めとする、他の神様との連絡係をしてくれていて(これを「ウトゥーシドゥクル(お通し処)」と言います。)、何かあればまず、ヒヌカンへ報告や相談をする、人々にとって身近な存在です。
【 ヒヌカンのお見送りとは 】
☆ そんなヒヌカンも年に一度、年末から年始に掛けて、ウティンヌカミ(天の神様)の元へ里帰りをします。そのために行う年末の儀礼が、ヒヌカンのお見送り「昇天の御願(拝み)」です。
・ ヒヌカンを祀るウコール(香炉)の灰には、その家の日々の事柄が、良い事も悪い事も記録として残るとされ、天に帰ったヒヌカンは、ウティンヌカミ(天の神様)へ、その家の一年の記録を報告します。
…そのために、毎年旧暦12月24日のヒヌカンのお見送り前にはヒヌカンの掃除をする家も多いです。
一方、日ごろは「記録を勝手に書き換えないよう」、あまり頻繁にはウコール(香炉)の灰は掃除をしません。
ウコール(香炉)が灰でいっぱいになったり、汚く気になる時には、「いっぱいなので(汚いので)、灰を掃除します。」などと、その理由を伝えてから掃除をしてください。
ヒヌカンのお見送り前の、灰の掃除
ただしウコール(香炉)の灰には、その家の記録を残す「記録帳」だけではなく、神様自身も宿っているとされてきました。
そのために、灰から神様が落ちてしまわぬよう、掃除には決まり事があります。
【 ヒヌカンのお見送り前、灰の掃除の仕方 】
① 灰がいっぱいになっていたら、捨てる分だけの灰を底から匙ですくい、別の器に取り出してください。
② 新聞紙を広げ、残りの残す灰をこし器やザルで漉してから、ウコール(香炉)に戻します。
③ ①の器に移した灰はそのまま捨てず、ヒジュルウコー(火を灯していない平線香=沖縄線香)をチュヒラ(一枚=日本線香6本)、外側から内側に向かい、右回りに3回、渦巻き状に近づけながら差します。
④ 「アリサーサーウートゥートゥ、ヒヌカンガナシー(ヒヌカン様)。ただ今、ウコール(香炉)の灰を掃除しています。コチラのヒラウコーに移ってください。」と唱えてください。
⑤ 差してあるヒジュルウコーに、灰に宿っていたヒヌカンが移りましたので、今度は左回りに3回、渦巻きを描くように、中心から外側に向かい、ヒジュルウコーを外します。
⑥ ⑤の灰にはヒヌカンはもういませんので、そのまま捨てて大丈夫です。
⑦ ⑤で外したヒジュルウコーのヒヌカンを、掃除をしたウコール(香炉)に移します。ヒジュルウコーに火を灯し、ウコール(香炉)に拝してください。
…もちろん、ヒヌカンの他の祭具も拭き掃除をして、塩やミジトゥ(水)、お酒は取り換えてください。取り換える時には継ぎ足しなどはせず、全て捨ててから交換します。
ヒヌカンのお見送りでの、お供え物
ただしヒヌカンのお見送りは、旧暦12月24日の一連の拝みの一部ですので、その前に行うヤシチヌウグァン(屋敷の御願)、ウグァンブトゥチ(御願解き)の前の掃除が良いかもしれません。
上記二つの拝みの後、ヒヌカンのお見送り「昇天の御願(拝み)」へと移ります。
※ この二つの拝み方は別記事「屋敷の御願の行い方☆感謝を捧げる6つの手順」、「御願解き(ウグァンブトゥチ)の行い方☆旧暦年末の拝み」を参考にしてください。
【 ヒヌカンのお見送り、お供え物 】
☆ これらをお盆や黒膳に供える家が多いです。
① お酒 … 対の徳利の中央にお酒を継いだ盃です。
② お米 … 一対の炊いていないそのままのお米「花米」と、この中央にお米を七回すすいだ「洗い米」を供えてください。
③ 赤ウブク … 「ウブク」とは炊いた「ご飯」です。赤いので赤飯や黒米と炊いたご飯などを供えます。食紅で色を付ける家庭もあります。
④ シルカビ … 習字の半紙を三枚重ねて縦半分に折り、横に四等分に切り分けた「神様へのお金」です。切る時はハサミは使わず、手で千切ってください。
⑤ 日ごろのお供え物 … ミジトゥ(水)、塩、供え葉(クロトンやチャーギなどの常緑樹の葉)です。
※ ヒラウコー(平線香=沖縄線香)はタヒラ半(二枚半=日本線香12本と3本)を拝します。
…以上ですが、これは直前で行う「ウグァンブトゥチ(御願解き)」の御願と同じお供え物です。ですから、ウグァンブトゥチ(御願解き)のお供え物を、そのまま用いても構いません。
ヒヌカンのお見送りで伝えるグイス
ヒラウコーに火を灯して、ウコール(香炉)に拝したら、以下のような内容を伝えてください。
【 ヒヌカンのお見送りのグイス 】
☆「ウートゥートゥー、ヒヌカンガナシー、
本日はヒヌカンガナシーの昇天の日となりました。
どうぞウティンヌカミ(天の神様)の元へとお帰りになり、この家に住みます〇〇、○○…(家族の名前を言う)が皆、無事に健やかに、穏やかに、一年を過ごしましたことを、お伝えください。
どうぞ、悪い事はお伝えなさいませぬようにお願いします。
来年お戻りになる日には、ぜひ福徳・金運も共にお招きいただき、来年も家族皆が健やかに穏やかに過ごすことができますように…、
サカイハンジョースミティー(繁盛させてください) ウートゥートゥー。」
いかがでしたでしょうか、今日は旧暦12月24日、旧暦年末に行う一連の御願の内、ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)、ウグァンブトゥチ(御願解き)の後に行う、「ヒヌカンのお見送り(昇天の御願)」をお伝えしました。
ただし他の御願でもそうであるように、ヒヌカンのお見送りも地域や家庭によって少しばかりの違いがあります。
特に言われるのは、ヒラウコー(平線香=沖縄線香)の拝し方です。半ヒラ(一枚を半分に折ったヒラウコー)七枚を準備して、拝みながら燃え尽きる前に、次のヒラウコーを拝する御願方法もあります。
その他にも半ヒラ七枚を一枚ずつ火を灯して、ウコール(香炉)に拝し並べ、「ヒラウコーの階段」のようにして、ヒヌカンをお見送りする地域も見受けられました。
ぜひ、ご自身にあったヒヌカンのお見送りの仕方で、御願をしてください。
まとめ
ヒヌカンを見送る御願の方法
・ヒヌカンは年末年始に里帰りをする
・灰に宿る神様が落ちないように掃除をする
・お供え物は御願解きと同じもので良い
・悪い事は報告せぬよう、お願いをする
・次は福徳、金運と共に帰るよう祈願をする
・地域によっても少しの違いはある