お墓を引き継ぐと言うこと☆継承前に心得る5つの事柄
お墓を引き継ぐタイミングは、両親が亡くなった時や、生前に次代の継承を指名された時などがあります。
一般的にお墓を引き継ぐよう、祭祀主宰者(今の墓主)から指名されると、断ることはできないとされますが、今では拒否する人も多く、家庭裁判所での調停・裁判まで持ち越されることもしばしばです。
お墓を引き継ぐとどのような責任や権限が出てくるのか…、理解してから継承したいですよね。
そこで今日は、お墓を引き継ぐことになった時、生じる責任や権限をお伝えします。
お墓を引き継ぐと言うこと☆
継承前に心得る5つの事柄
「祭祀継承者」になったら…
お墓やお仏壇、仏具などのご先祖様を供養するための物は「祭祀財産(さいしざいさん)」と言い、他の相続とは区別する点は、他の記事でもお伝えしました。
(参照「必ずお墓を引き継ぐの?「祭祀継承者」5つの知識」)
祭祀財産には相続税が掛からないこともあり、お墓を引き継ぐことになっても、法的な手続きは特にありません。
一方、お墓のある墓地には、墓主(名義)変更の手続きをしますが、「墓地の種類」によっては注意が必要です。
【 お墓を引き継ぐ☆墓地へ使用者変更の届出 】
★ お墓は家と違い、永代に渡り墓地を使用できる「永代使用権」を持っています。この「永代使用権」の名義変更を行う手続きをしてください。
・ この時注意をしたい事柄は、その墓地が寺院墓地であった場合の「宗旨宗派」です。ほとんどの寺院墓地で、その寺院の「檀家」になります。
…家族がお墓を引き継ぐことが多いため、意識をしていなくても、もともとその寺院の宗旨宗派である家が多いのですが、次の継承者が違う宗旨宗派だった場合、檀家になることは難しいですよね。
そうなると、この寺院墓地での継承は難しく、他の霊園へ改葬(お墓の引っ越し)をするなど、対策を取るケースが多いです。
★ また、多くの霊園(墓地)の独自の規則で、永代使用権の名義変更に期限を設けていますので、こちらも注意をして進めてください。
「祭祀主宰者」になる
お墓やお仏壇といった「祭祀財産」を継承する人を「祭祀継承者」と言いますが、これらを継承した後は「祭祀主宰者」になります。
「祭祀主宰者」は、ご先祖様の供養を主立って行う立場を指しますが、複数での継承はできません。「単独で」継承するのが決まりです。
【 お墓を引き継ぐ☆「祭祀主宰者」 】
★ 民法の文言を引用すると、祭祀継承者は下記のように記されています。
《 第896条 相続の一般的効力 》
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。
《 第897条 祭祀に関する権限の継承 》
① 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを継承する。
但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを継承する。
② 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、前項の権利を継承すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
民法から見た、お墓を引き継ぐ責任と権限
…この民法を見ていくと、「系譜」「祭具」「墳墓」の一切の権限を持つことになります。
一方でお墓を引き継ぐ時の責任としては、その地域地域の風習に倣った、法要や年間行事(お彼岸やお墓詣り、お盆など)の主宰継承です。
では「系譜」「祭具」「墳墓」には、どのようなものが含まれるのでしょうか…。
【 お墓を引き継ぐ☆系譜・祭具・墳墓 】
① 「系譜」 … その家の「家系図」の他、お墓やお仏壇に見る「過去帳」などもこの系譜に含まれます。
② 「祭具」 … そのまま、お仏壇や仏具の他、沖縄では祖先崇拝の要である「位牌」も祭具のひとつです。また、先祖代々信じられ祀られてきた「神棚」などもこれに当たります。
③ 「墳墓」 … 「墳墓」は「お墓」を指しますが、それだけではなく、墓地の永代使用権や墓石・墓碑など全てを指します。
…難しい点はお墓を引き継ぐ時の「責任」、祭祀の主宰ですが…、民法ではその祭祀の範囲については、特に明言はありません。
地域によって違う「風習・ならわし」は、時に家族親族の間でも異なることも多く、「どこまでの」祭祀や供養を主宰するか…、によって負担が大きく異なります。
法事や年中行事、継承者の責任と悩み
このように曖昧な部分も多い「風習・ならわし」による祭祀は、基本的には家族親族での話し合いの元で決めていきます。
ただし、祭祀主宰者(お墓を引き継ぐ者)が中心となり、協力して供養(法事など)や祭祀(お墓参りなど)を行いますが、現代では協力を期待できない家もしばしばです。
【 お墓を引き継ぐ☆法事や年中行事の主宰 】
★ 親族間で話がまとまらない時、墓主一人に負担がのしかかる時…、現代では基本的には、墓主(祭祀主宰者)の最終的な判断で決める傾向にあります。
・ 両親の死をきっかけにお墓を引き継ぐケースを例に取ると、法要に関して…、
①「何回忌(年忌)まで」 … 本来は33回忌(年忌)までですが、最近では7回忌(年忌)までの法要も多くなりました。
②「どのくらいの規模で」 … 7回忌(年忌)までは親族・一族で大きな法要を執り行い、以降は家族のみの小さな規模で行う選択も見受けられます。
などを、具体的に決めてしまってから、了承を得ても良いかもしれません。
また、沖縄では「一族」が集まってお墓参りをする風習がありますが、最近ではお墓の規模によっては、本州と同じく、それぞれの家族単位で行う家も増えました。
そうすることで、お墓を引き継ぐ家の負担が少なくなるからです。この辺りも最初に相談しておくことで、精神的な負担を減らして継承できるのではないでしょうか。
「墳墓」の権限を持つ祭祀継承者
またお墓を引き継ぐと言うことは、お墓や墓地、墓石から墓碑に至るまで、一切の権利継承です。
そのために、お墓の改葬(引っ越し)や墓じまいまでも、継承した祭祀主宰者に最終的な決定権があります。
【 お墓を引き継ぐ☆改葬や墓じまいの決断 】
★ ここでしばしば疑問として出てくる事柄が「遺骨」の権限はあるのか…、と言うものです。確かに民法上は「遺骨」の権限については触れられていません。
・ 参考になるのは最高裁による過去の判例ですが、ここでは「遺骨も祭祀継承者の継承とする」との事例があります。
お墓を継承したものの、家族親族から一切の経済的・肉体的協力を得ることが出来ず、一人で負担を抱えた状態になった時には、これらの「改葬」「墓じまい」の選択肢もあることを、ぜひ意識してみてください。
ただし、一般的には家族親族間のトラブルを極力減らすよう、皆で相談をして決断をするケースがほとんどです。
いかがでしたでしょうか、今日はお墓を引き継ぐことになった人々による相談事例を元に、これからお墓を継承し「祭祀主宰者」となる人々が知っておくと楽になる、5つの知識をお伝えしました。
家族親族だけではなく、法要の時にはご近所さん(隣組)も総出で手伝ってくれたひと昔前とは違い、気軽に手伝ったり、お願いができる距離感のない現代では、祭祀主宰者の負担はとても大きなものです。
だからこそ、「これ以上は一人では負担できない」「ここまでならできる」と境界をしっかりと示し、協力の約束を得た上で、お墓を引き継ぐと負担も少なくなります。
最近では供養を永代に渡り行ってくれる「永代供養」をお願いできる霊園も増えましたよね。生きる上で負担なく供養・管理ができるよう、進めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
「祭祀継承者」の権利と義務とは
・継承したら早めに墓地の名義変更を行う
・寺院墓地では、入檀を求められることが多い
・お墓を引き継いだら単独で「祭祀主宰者」になる
・供養(法要)やお参りなどの主宰を求められる
・事前に法要などの回数や規模を決めると安心
・改葬や墓じまいの最終決定権もある
・遺骨も継承者に権限がある、との判例がある