【沖縄の御願】生まれ年の厄払い「トゥシビー」の基礎知識
沖縄の御願行事ではトゥシビーのお祝いは有名ですよね。ただ、自分の干支の年回りに行う沖縄の御願「トゥシビー」は、元来厄払いの役割があります。
昔ながらの沖縄の御願でも、61歳を超えると長寿を祝う意味合いになり、現在でも97歳のカジマヤーは全国的にも知られる沖縄の御願行事なので、「お祝い事」のイメージが強いのかもしれません。
現在、最初に自分の干支が回ってくる年回りの13歳は、沖縄の御願行事では「13祝い」とも言われ、着物を着て記念写真を撮ったり、お祝いをする傾向も確かにあります。
どちらにしても現代でも馴染みの深い沖縄の御願行事、「トゥシビー」、沖縄に住むなら丁寧に行いたいですよね。そこで今回は、厄払いの意味合いを持つ沖縄の御願行事、トゥシビーをお伝えします。
【沖縄の御願】生まれ年の厄払い
「トゥシビー」の基礎知識
本州の年祝いとは違う
同じように長寿を祝う行事となるため、なかには還暦や米寿と言った本州にある「年祝い」と混同する方もいますが、本州の「年祝い」と重なる年齢は13歳と還暦の61歳のみ、まったく違う行事です。
★ トゥシビーは「生年祝い」の方言で、自分の生まれ年の干支が回ってきた年であり、
・13歳
・25歳
・37歳
・49歳
・61歳
・73歳
・85歳
・97歳
…と、12年ごとに訪れます。
★一方、本州の年祝いは…
・13歳(髪上)
・15歳(元服)から一気に飛んで、
・61歳の還暦
・77歳(喜寿)
・80歳(傘寿)
・88歳(米寿)
・90歳(卒寿)
・そして99歳の白寿です。
ただ沖縄では御願行事のトゥシビーとは別に、本州に倣って米寿の88歳を祝う習慣も出てきました。ホテルなどを予約して、家族や親族で米寿を祝う光景も良く見られます。
厄払いから長寿の祝いへ
さらに61歳以前のトゥシビーには厄払いの意味合いがありますが、こちらも本州の厄年とは関係がありません。
本州の厄年は男性と女性で違い、数え年で男性は本厄が25歳・42歳・61歳、女性になると本厄は19歳・33歳・37歳です。重なる年齢もありますが、厄年より数え方はずっと簡単です。
★ 沖縄の御願では、61歳より前のトゥシビーは厄払い、61歳以降は長寿を祝うお祝いの意味合いがあります。
・ 61歳以上のトゥシビーでは、73歳・85歳・97歳がありますが、特に盛大なお祝いとなるのは97歳の「カジマヤー(風車)」です。(詳しくは後ほどの項でお伝えします。)
一方、85歳のトゥシビーも家族や親族でお祝いをしますが、最近では本州の長寿祝いに倣った88歳の「トーカチ(斗掻)ユーエー(お祝い)」で盛大に祝う慣習が広まり、トーカチユーエーよりも静かなお祝いが多いです。
…このように、ひと昔前よりも寿命が長くなった現代では、73歳までは前項の米寿のようにホテルなどで会食の時間を設け、家族や一族でお祝いしたり、記念写真を撮る程度に留める家が特に増えました。
一方、85歳と97歳のトゥシビーは観光者も見学するほどの催しもあり、家では風車やふるまい料理を準備して、忙しくなることも多いです。
【 沖縄の御願☆トゥシビーで避ける「お祝い事」 】
★ ただし、本来は「厄年」「厄払い」として拝まれてきたのが、トゥシビーです。
・ そのためにトゥシビーで人生の転機となるお祝い事…、家の新築や結婚などは避けられてきました。
お祝いのトゥシビー、「カジマヤー」
61歳以上は「ここまで長生きさせていただきました」の意味合いとなり、厄除け祈願が一転、長寿への感謝祭とお祝いとなることは、前項でお伝えしましたよね(*^_^*)
沖縄では特に97歳のトゥシビーは家族親族はもちろん、町中でお祝いを行います。集落によっては自治体よりお祝いの催しが開かれるほどです。
この時、沖縄では「人生が一回転して、子どもに戻る年」として、風車をモチーフとし、集まってくれた人々へ家族が風車を配ったり、お祝いのパレードを行う車に飾り付けたりします。いただいた人々も「長寿にあやかる」として、縁起が良いとされてきました。
配るだけではなく、家庭でも「9本の」風車をトゥクヌマ(床の間)に飾りますよ!年齢に掛けた9升7合のお米に9本の風車を「差して」、お飾りとします。
★ この風車に掛けて、97歳のトゥシビーのお祝いを「カジマヤー(沖縄の言葉で「風車」を表します。)」と言います。
・ この年だけは旧正月から始まる自分の干支に合わせた拝みだけではなく、(97歳に掛けて)旧暦9月7日がお祝いの日です。ちなみに旧暦9月7日は2019年度では10月5日(土)です。
★ ただし琉球王朝時代は成人とされた13歳のトゥシビーは、無事に成長したお祝いの意味合いも込められています。
ひと昔前よりも寿命が長くなった現代では、73歳までは前項の米寿のようにホテルなどで会食の時間を設け、家族や一族でお祝いしたり、記念写真を撮る程度に留める家が増えました。
一方、85歳と97歳のトゥシビーは観光者も見学するほどの催しもあり、家では風車やふるまい料理を準備して、忙しくなることも多いです。
☆ カジマヤーのお祝いについては別記事「かじまやーで祝う九十七歳☆家庭で進める祝辞の手順」でも詳しくお伝えしていますので、ぜひ、コチラもご参照ください(*^_^*)
厄除けとしてのトゥシビー
自分の干支の年を「生まれ年」の意味合いを持つ「トゥシビー」と言いますが、自分の干支に当たる年の沖縄の御願は、本来「ウフトゥシビー」と言われます。
★ ヒヌカンには日ごろのお供えの他に、御願セット(洗い米、花米、お酒、ウチャヌク)と果物の盛り合わせを供えてください。
・ お仏壇にも日ごろのお供えの他に、ウチャヌクとごちそうの取り分けである「ウチャワキ」をお供えして、厄除けのための「願立て」をするのです。
「願立て」では、神様や祖霊へ対してトゥシビーに当たる家族の名を告げ、「今年も一年間、健やかで無事に過ごせますよう、お見守りください。」とお伝えします。
ちなみに沖縄の御願では、自分の生まれ年の干支ではない年でも、旧正月後に初めて自分の干支が回ってくる「日」にヒヌカン(火の神)とお仏壇に拝むのが習慣です。
★ 沖縄のトゥシビー御願については別記事
・「【沖縄の御願】旧暦1月2日から始まる トゥシビーの拝み方」
・「マドゥトゥシビーで一年の厄祓い☆家族を想う旧正月の御願」
・「ウフトゥシビーは厄年のお祓い☆災難を避ける旧正月の御願」
でも詳しくお伝えしています。ぜひ、コチラもご参照ください(*^_^*)
お祝いのトゥシビーでの膳料理
61歳以上のトゥシビーでお祝いになる場合には、お仏壇へのお供え物もウチャワキではなく、ハレの料理(おめでたい日の料理)を配した膳料理をお供えします。
★ 親族が集まることも多く、おもてなしのための料理を配すれば良いので、決まりはないのですが、定番のハレの料理はあります。
・ 白味噌で溶いた具だくさんの味噌汁「イナムドゥチ」や、縁起の良い昆布(喜ぶ)を炒り煮した「クーブイリチー」など、八品ほどを膳に並べる家は多いです。
トゥシビー祝いでの膳料理については、別記事「【沖縄の御願】トゥシビー祝い。膳料理の定番のおかず」でも詳しくお伝えしていますので、併せて参考にしてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の御願行事のなかでも人々に馴染みが深く、時代とともに変化してきたトゥシビーについてお伝えしました。
本文で何度もお伝えしてきたように、長寿になるとお祝いの意味合いが色濃くなるものの、本来は厄払いのための沖縄の御願行事であるため、その年にはお祝い事は避けられてきました。
例えば結婚もそうですし、家を建てることもできればトゥシビーの年回りには避けた方が良いかもしれません。
97歳のトゥシビーとなる「カジマヤー」は、沖縄では旧暦9月7日に行う地域が多く、童心に帰ることを意味する「風車」で装飾されたカラフルなオープンカーが集落を回る様子も見つけることができます。
最初に巡ってくる13歳、現在でも長寿となる85歳、97歳以外のトゥシビーは、近年では行われない風潮もありますが、厄除け行事ですのでぜひ、願立てをしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
自分の生まれ干支の行事「トゥシビー」
・本州の年祝いとトゥシビーは年齢が違う
・61歳以上は長寿のお祝いとなる
・厄除けにヒヌカンとお仏壇へ願立てをする
・お祝いのトゥシビーでは膳料理でもてなす
・トゥシビーの年回りのお祝い事は避ける
・97歳のカジマヤーは旧暦9月7日に行われる
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