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沖縄のお墓は「ユンヂチ」の年に建てる。その理由と文化背景とは

沖縄のお墓は「ユンヂチ」の年に建てる。その理由と文化背景とは

沖縄では、先祖代々位牌「トートーメー」を仏壇の中心に祀る独自の信仰「祖霊信仰」が今も大切に受け継がれています。

 

全国的な「法要」にあたる「スーコー(焼香)」や、旧暦に基づく旧暦行事も欠かせない行いとして、日々の暮らしに深く根付いています。

 

こうした背景から、沖縄のお墓事では時期や日取りが特に重んじられ、家族や親族の間でも慎重に選ばれることが多いのです。

 

そんな沖縄のお墓事を進めるうえで、良い時期とされる特別な年回りがあります。それが「ユンヂチ」です。

 

ユンヂチは、旧暦33ヶ月に一度だけ巡ってくる特別な年で、2025年はまさにそのユンヂチの年にあたります。この年を活かして、お墓事を計画するご家庭もすでに動き始めています。

 

これから沖縄でお墓事を検討している方なら、きっと「ユンヂチ」が気になるはず。今回は、沖縄でお墓を建てる時期になぜユンヂチが選ばれているのか、その文化的な背景と理由を詳しくご紹介します。

 


 

 

沖縄のお墓事と「ユンヂチ」の深い関係


沖縄のお墓事と「ユンヂチ」の深い関係

 

沖縄では、お墓事や仏壇事はとても慎重に進められてきた文化があります。本州では仏教の影響が強いのに対し、沖縄では神道に近い宗教観が色濃く残っており、死は「穢れ(けがれ)」とする意識が今でも残っています。

 

そのため、たとえ新しいお墓を建てる場合でも、改葬や墓じまいを行う場合でも、沖縄では「いつ」「どのタイミング」で行うかがとても重視されます。家族や親族の間でも、地域によっては、例えば家族と同じ干支日など、「縁起の悪いとされる日を避けて選びたい」という思いが強く、今では家付きのユタも少なくなりましたが、家や状況によっては、ユタへ判断を仰ぐケースもあるほどです。

 

こうした背景の中で、特にお墓事を進めやすい時期として選ばれているのが「ユンヂチ」です。神様の目が届かない特別な時期(ヒナーシ)とされ、沖縄ならではの宗教観と暮らしの知恵が深く結びついたものです。

 

今回は、沖縄でなぜ「ユンヂチ」がこれほど大切にされ、お墓事に選ばれているのか、その背景と意味を紐解いていきます。

 

 

ユンヂチとは何か? 沖縄の文化に見る「日無し(ヒナーシ)」の意味

 

沖縄の暦では、「ユンヂチ(閏月)」は旧暦33ヶ月に一度巡ってくる特別な年まわりです。旧暦と新暦とのズレを調整するために設けられる「閏月」にあたります。

 

本来は閏月の1ヶ月のみを指しますが、沖縄では閏月を迎える旧暦13ヶ月の年全体「ユンヂチの年」として意識する風習があります。これは、お墓事や仏壇事には時間をかけた準備や親族間の調整が必要なため、1ヶ月ではとても間に合わないことが背景にあります。

 

さらに沖縄では、ユンヂチは「ヒナーシ(日無し)」とも呼ばれています。神様の目が届かない時期とされ、神事と重ならずにお墓事や仏壇事を安心して進められる時期と考えられています。

 

沖縄の宗教観は仏教よりも神道に近い面があり、死は「穢れ」とする意識が今でも色濃く残っています。そのため、本来なら神事と交わることを避けたいお墓事や仏壇事は、このヒナーシの時期に行うのが良いとされてきました。

 

こうして、ユンヂチは沖縄ならではの宗教観と暮らしの知恵が結びついた特別な年として、今でも大切に意識されています。

 

 

なぜ「お墓事」にはユンヂチが選ばれるのか

 

沖縄では、お墓事や仏壇事は「穢れ(けがれ)」と深く関わるものとされてきました。「死は穢れ」とする神道に近い宗教観が沖縄では色濃く残っているため、日常生活の中でも「穢れ」との区別を意識する文化があります。

 

かつての沖縄では、葬儀後にお墓まで行く「野辺送り」の際に、黒傘を差す風習があったことも、天から「死の穢れ」が見えないためです。

 

このようなことから、改葬や墓じまいはもちろんのこと、お墓を建てたり修繕する、仏壇の交換や新調の際の儀式や御願(ウグァン)においても、より神様から許されるであろう日取りを意識して選んできました。

 

また、沖縄では地域によって干支日を避ける風習も残っており、家族や親族の干支と重ならない日取りを選ぶこともあります。近年は六曜(大安・仏滅など)も意識されることが増えており、通常の時期は日取りの制約が多くなりがちです。

 

そんななかで、本来は存在しない「ユンヂチ(閏月)」は、「ヒナーシ(日無し)」とも呼ばれ、神様の目が届かない特別な時期とされているため、穢れを気にせずにお墓事や仏壇事を進めやすい時期と考えられているのです。

 

こうした背景から、干支日や縁起の悪い日などを意識せずに済み、日取りの制約も緩やかになるユンヂチは、お墓事を進めやすい時期として、今でも選ばれ続けています。

 

 

 

ユンヂチの年に建てる意味と選ばれる背景


ユンヂチの年に建てる意味と選ばれる背景

 

ユンヂチは本来、閏月の1ヶ月を指しますが、沖縄では閏月を迎える旧暦13ヶ月の年全体を「ユンヂチの年」として意識する風習があります。

 

お墓事や仏壇事は、準備や親族間の調整に時間がかかることが多いため、閏月の1ヶ月だけではとても間に合いません。また、遠方から親族が帰省する日程調整も必要となるため、「今年はユンヂチだから」と年単位で予定を組み、余裕を持って準備を進めることが一般的です。

 

さらに、沖縄独自の「魂が地に落ち着く」という考え方も大きな背景となっています。お墓は単なる形ではなく、「そこに先祖の魂が根付いている場所」と深く信じられているため、お墓の移動や改葬には非常に慎重な意識が働きます。

 

同じように、位牌(トートーメー)についても、魂が宿るものとされ、むやみに移動させない方が良いという考え方が今も根強く残っています。かつては家を引っ越しても、古い家にトートーメーだけを残したまま空き家にすることも珍しくありませんでした。離島地域などでは、空き家に残ったトートーメーの世話を条件に賃貸として貸し出す事例すらあったほどです。

 

このような背景から、お墓や位牌に関する事柄は、「できる限り魂を揺るがさずに進めたい」という心理が働きます。そのため、「あの世からは見えない」「神様の目が届かない」とされるユンヂチの年は、安心して進められる特別な時期として選ばれているのです。

 

加えて、ユンヂチの年は数年に一度しか巡ってこない貴重なタイミングです。次の機会が数年先になることを考えると、「せっかくのユンヂチの年に進めておこう」と考える家庭も少なくありません。

 

こうして、ユンヂチの年は、お墓事や仏壇事を進めるための文化的にも心理的にも適したタイミングとして、今も広く選ばれ続けています。

 

 

「ユンヂチの年」として意識される理由

 

沖縄では、ユンヂチ(閏月)そのものは1ヶ月ですが、旧暦13ヶ月の年全体を「ユンヂチの年」として意識して計画を立てる家庭が多くあります。

 

お墓事は親族が一堂に会して行うことが多いため、準備や親族間の調整にはどうしても時間がかかります。さらに沖縄独自の「門中墓(むんちゅうばか)」という文化も、この背景に大きく関係しています。

 

門中墓は、父方の血族が入る一族単位のお墓であり、親族の規模が非常に大きくなるのが特徴です。本州の先祖代々墓が家族単位であるのに対し、沖縄では門中(親族集団)単位のため、親族間の意見調整や日程調整がより複雑になります。例えば、沖縄最大級とされる幸地腹・赤比儀腹両門中墓には、約5,500人の先祖が祀られているとも言われており、その規模の大きさは特筆すべきものがあります。

 

さらに、沖縄には本州のような檀家制度がなかったため、個人墓地が主流でした。今でも街中や郊外に個人墓地のお墓が点在している風景は沖縄ならではのものです。アメリカ統治時代を経ても、沖縄では墓地に関する法制度が特例的に扱われ、個人所有の墓地文化が根強く残っています。

 

こうした背景から、沖縄のお墓事は、単なる家族単位ではなく、一族単位の大きな行事となるため、計画や調整に長い時間が必要になるのです。そのため、「今年はユンヂチだから」と年単位で予定を立てて準備を進めるのが一般的になっています。

 

また、ユンヂチは33ヶ月に一度という周期でしか巡ってこない貴重な年回りです。「次の機会がいつになるかわからない」という思いから、ユンヂチの年を逃さず進めようと考える家庭も多く、計画の動機づけにもなっています。

 

こうして、ユンヂチは沖縄ならではの墓文化や親族文化とも深く結びつき、「年」として意識される理由となっているのです。

 

 

 

ユンヂチの周期と2025年・2028年の最新情報

 

沖縄では、旧暦13ヶ月の年全体を「ユンヂチの年」として意識し、この1年間の間にお墓事や仏壇事を計画する家庭が多くあります。以下は、直近のユンヂチ期間の具体的な日程です。

 

【2025年 ユンヂチ期間】
2025年(令和7年)1月29日(水)~2026年(令和8年)2月16日(月)
(旧暦1月1日~旧暦12月29日)

【閏月】
・2025年7月25日(金)〜2025年8月22日(金)
(閏6月1日〜閏6月29日)

 

【2028年 ユンヂチ期間】
2028年(令和10年)1月27日(木)~2029年(令和11年)2月12日(月)
(旧暦1月1日~旧暦12月29日)

【閏月】
・2028年6月23日(金)〜2028年7月21日(金)
(閏5月1日〜閏5月29日)

 

ユンヂチは、数年に一度しか巡ってこない貴重な節目でもあります。次の機会がいつになるかわからないため、「せっかくのユンヂチの年に進めよう」と考える家庭も多く、数年前から計画を立てて準備を進めるケースも見られます。

 

このように、ユンヂチは準備や計画の目安となる大切な年回りとして、今でも沖縄のお墓事や仏壇事に大きな影響を与えているのです。

 

 

 

ユンヂチ以外でお墓事を進めるなら「タナバタ(旧暦七夕)」も

 

沖縄では、ユンヂチの年回りでない年にお墓事や仏壇事を進める場合、旧暦七夕(タナバタ)を選ぶケースもよく見られます。

 

旧暦七夕は、沖縄では「ヒーナシタナバタ(日無し七夕)」とも呼ばれ、神様の目が届かない「ヒナーシ(日無し)」の1日とされ、ユンヂチと同様に安心してお墓事を進めやすい日と考えられているためです。

 

全国に残る織姫と彦星伝説のようですが、沖縄では亡くなって間もない故人が、家族などこの世に残る恋しい人へ会うために、神様の目を避けて会いに来る日、との伝承もあります。

 

本来、この日は先祖代々位牌(トートーメー)を祀る「ムートゥーヤー(宗家・本家)」のご家族がお墓参りを行き、ご先祖様へ旧盆に来ていただくよう、ご案内する日でもあります。

 

また、地域や家庭によっては、ユンヂチで行えなかったお墓事や仏壇事を、この旧暦七夕に合わせて予定することが一般的になっているところもあります。

 

このように、沖縄ではユンヂチに次いで、旧暦七夕もまた大切な節目として活用されており、年回りによって柔軟に選ばれているのです。

 

 

 

まとめ|沖縄らしい時期選びを理解して、納得のお墓事を


まとめ|沖縄らしい時期選びを理解して、納得のお墓事を

 

沖縄では、お墓事や仏壇事は慎重に進めるべき大切な節目とされ、時期選びは今でも大切にされています。

 

ユンヂチ(閏月)は、神様の目が届かない時期として安心してお墓事を進められる特別な年回りです。その背景には、沖縄独自の「魂は地に落ち着く」という考え方や、門中墓文化、個人墓地の歴史など、全国とは異なる墓文化があります。

 

こうした文化的背景から、お墓の建立や改葬、仏壇事を進める際には、「今年はユンヂチだから」「次のユンヂチまで待とう」という意識が自然に根付いているのです。

 

また、旧暦七夕(ヒーナシタナバタ)も、ユンヂチと同じく安心してお墓事や仏壇事を進められる日として選ばれることがあり、年回りによって柔軟に時期選びを行う風習が今でも受け継がれています。

 

沖縄のお墓や仏壇の文化には、こうした地域独自の歴史や信仰が深く関わっています。ぜひ、こうした背景を理解しながら、ご自身やご家族にとって納得のいく時期選びをして、大切なお墓事や仏壇事を進めていきましょう。

 

[沖縄における改葬や墓じまいは難しい?]
改葬は七夕やユンヂチに限る?判断したい信仰の真実

 

 



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