沖縄の「門中」って何?本州出身者が知らない5つの繋がり
沖縄では「門中墓」と呼ばれる、家のように大きなお墓が知られていますよね。南部糸満の「幸地腹門中の墓」は、その古墳のような大きさから、観光名所にまでなっているほどです。
驚くことにこの幸地腹門中(こうちむんちゅう)の墓は遺跡ではありません。現代でも生きたお墓であり、沖縄の「門中」の人々が亡くなるとここに納骨されています。
本州では「一族」と言っても、両親に祖父母、いとこほどの繋がりであるため、沖縄の「門中」と言われても、ピンと来ないのではないでしょうか。
ただ沖縄では門中の繋がりは深く、「商談中に同じ門中と分かっただけで、仕事が進む」と言われるほどなのです。
そこで今回は、本州の方々にはあまり知られていない、沖縄の門中と、その繋がりについてお伝えします。
沖縄の「門中」って何?
本州出身者が知らない5つの繋がり
男性血族で繋がる沖縄の門中
沖縄で聞く「門中」は「もんちゅう」と読み、沖縄の方言では「むんちゅう」です。これは男性を中心とした一門で、同じ始祖で繋がっています。
【 沖縄の「門中」とは? 】
★ つまり、沖縄の「門中」は、父方の血族で繋がる一族を指しています。そのため父方の血が入らないよそから嫁いできた嫁や、婿養子、養子や養女は門中には入りません。
・ 共通の始祖であれば皆「門中」となるので、本州の親族のようにお互いに全て把握している訳ではありません。
ただ、同じ沖縄の門中と分かれば仕事も進みやすいなど、その結束が強いのも特徴のひとつです。
琉球王朝時代の「唐名」
同じ始祖を持つ一族と聞くと、苗字が同じであれば皆同じ「門中」と思いがちですが、そうでもありません。ただ、琉球王朝時代から続く名前の法則があります。
【 沖縄の門中で続く名前 】
★ 沖縄の門中は①名乗り頭②唐名の姓によって見分けていました。
① 名乗り頭 … 士族の沖縄の門中では、名前の一番最初に同じ文字(言葉)を使うことが多いです。
② 唐名の姓 … 琉球王朝の時代が終わり、日本政府による廃藩置県が行われたことで終わったものの、それまでは和名とは別の「唐名」がありました。
唐名で有名なものは琉球王朝の沖縄の門中となる、①向氏②翁氏③毛氏④馬氏の四つの唐名です。ちなみに向氏は分家となり、その本家は「尚氏」となります。
沖縄の門中を見分ける、名乗り頭
一方、名乗り頭は現代でも使われ、名前を見ればどこの沖縄の門中なのかが分かる方も多くいます。特にその門中が士族だと、名乗り頭を使っていることが多いです。
【 沖縄の門中、名乗り頭 】
★ 例えばボクシングで有名な具志堅用高さんの「用」は名乗り頭に当たります。(お父様は用啓、お兄様は用詳と、皆「用」が付いているのです。)
・ このように「苗字が同じ」と言うだけでは、同じ沖縄の門中とは限らないものの、名乗り頭(名前の最初)に同じ文字が使われていた場合、「同じ門中?」と意気投合することもあるのです。
これは一例ですが、例えば「上原良明」さんと言う方がいたとして、「上原正光」さんは違う沖縄の門中かもしれませんが、「上原良光」さんであれば、「同じ沖縄の門中なのでは?」となります。
居酒屋さんなどで隣り合った方と、名前から推察して「同じ門中?」と仲良くなった…などは、沖縄ではとても良く聞く話です。
沖縄の幸地腹門中の墓
そんな沖縄の門中ですが、全国的には「門中墓」が有名なのではないでしょうか。沖縄の門中墓は、家のように大きいことで知られていますが、なかには何千人もの人々が眠るものもあり、家を飛び越して「古墳」ほどの大きさのものもあります。
特に糸満市にある「幸地腹門中の墓」は、現在でも毎年門中の方々の遺骨が収められるお墓ながら、観光地にもなっているお墓です。
【 沖縄にある幸地腹門中の墓 】
★ 何と一族全員が眠る幸地腹門中の墓には、三千人(一説では五千人)を超える人々が眠り、その敷地は5,400㎡!!観光名所になることも分かる、遺跡にも見間違う大きさです。
・ 沖縄の門中墓には「本墓」と「仮墓」を持つものが数多くあり、この幸地腹門中の墓も、中央の本墓、手前に四つの仮墓が建っています。
これは全国的にも知られる風習ですが、沖縄ではこの門中墓を前に、一族が集まりお墓参りをする年中行事、「清明祭(シーミー)」が行われます。(地域によっては「十六日(ジュウルクニチ)」の方が盛んです。)
まるでピクニックのように、お墓を囲んで一族が食事を食べたり、話をする姿は、ちょっとした風物詩とも言われているのです。
門中によって見解が分かれる「しきたり」
この沖縄の門中墓ですが、女性に関しては門中によって見解も異なる上に、ちょっと複雑です。特に離婚をした女性は、どちらの門中墓にも入れない事例も出てきました。
【 沖縄の門中墓にある「納骨堂」 】
★ また、幼くして亡くなった子どもや事故死・自殺など、「天寿を全うしていない」と判断された遺骨は、本墓に入ることができない門中も多いです。
・ そのためこのような遺骨は「納骨堂」や「子ども墓」などのお墓を敷地内に建てて弔うことがあります。
このあたりは多くの著書が出ていたり、講座も開催されるほど複雑で、一概に「こう」とは言えません。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で聞く「門中」について詳しくお伝えしました。沖縄に住む方々にとっては当たり前の常識でも、本州の方々には新鮮なのではないでしょうか。
最後にお伝えした沖縄の門中墓ですが、最後にお伝えしたように、幼い子どもがお墓に入ることができなかったり、離婚によって実家にも嫁ぎ先にも、お墓に入ることが拒否される事例も出てきました。
そのために「子どもと同じお墓に入りたい。」「どこにも入れないから自分でお墓を建てる。」などの理由で、門中から独立して、新たにお墓を建てる事例も増えてきています。
特に20年ほど前から、本州と同じような霊園が広がり始め、より気軽に個人のお墓を建てられるようになったのも、一因です。
それでも沖縄の門中は県内に留まらず、本州各地域や海外でも、しっかりとした絆で、今でも繋がっています。
まとめ
沖縄の門中とは
・同じ始祖を持つ、父方の血族
・唐名と名乗り頭で門中を見分けた
・名乗り頭は今でも続く門中がある
・幸地腹門中は日本最大のお墓
・お墓参りで門中が墓前に集まる
・女性への見解は門中でさまざまに違う
・お墓に入れない遺骨もある