お墓の継承問題と習わし☆トラブル回避の3つの法律
お墓の継承問題は、なかなか解決しませんよね。それが故に今の墓主が継承できないまま時間だけが過ぎ、無縁墓が増えてきました。
これは昔ながらの慣習が、現代の人々の暮らしに見合わなくなっているからでもあります。慣習を大切にすることは大切ですが、無縁墓になってしまっては本末転倒です。
ですからここは一歩引いて、法律を理解しておくと、客観的な捉え方を関係者間で共有できるので、よりスムーズな話し合いが進みそうですよね。
そこで今日は、お墓の継承にまつわる法律を3つ、お伝えします。
お墓の継承問題と習わし☆
トラブル回避の3つの法律
お墓の継承で多い相談事
現代、霊園や墓石業者、終活関連の施設では、お墓の継承に関する相談が増えてきました。
これはある程度はお手伝いができるものの、大きな部分は関係者間の話し合いが不可欠になるケースが多いです。
【 無縁仏化を危惧する墓主の相談例 】
・ 経済的にも体力的にも、一人で家墓を守るのは負担が大きい。子どもにこの負担を負わせたくない。
・ 「お墓は長男が継承するもの」との親族が多いが、遠方に住んでいて実質的に長男の継承は難しい。
・ 「女性は嫁ぐ可能性があるため、お墓の継承はできない」とされるが、我が家には娘しかいない。
…などなど、慣習に倣うとお墓を継承できる枠が限られてくる点も大きいです。さらに現代は離婚再婚家庭も多く、関係性がより複雑で、解決できないまま、問題を放置している家庭も少なくありません。
お墓の継承問題に関する法律
前項でお伝えした相談で、「一人で家墓を守るのは負担が大きい」と言う相談例ですが、「分配すれば良いんじゃない?」と言う感想もありますよね。
確かに普通の相続財産であれば、それぞれ子ども達が均等に分配して相続することができます。けれども、お墓をはじめとする「祭祀財産(さいしざいさん)」は分配はされません。
これはお墓の性質上、分配するものではないことと、もともと代々継承していくことを目的としているためです。
このようなお墓(祭祀財産)に関する法律は、民法897条にあります。
【 お墓継承に関する法律、民法第897条 】
☆ 民法第897条では、こう述べられています。
「 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」
…つまり民法897条では、祭祀財産であるお墓の継承は、その土地土地の慣習に倣い継承されるべきであること、ただし、故人本人から指定があった場合には、その者を優先して継承者とする、と言う意味です。
ただし、お墓継承に関する民法第897条では、
「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。」
…で結ばれていますので、現代でも少ないですが、最後の最後には家庭裁判所へ持ち込むことになります。
継承した後、家族の状況が変わった場合
継承して墓主となった後、離婚や再婚によって家族の状況が変わることもありますよね。最も多いのは、配偶者の死後、家墓を継承したものの、再婚をしたケースです。
特に女性の場合には、再婚をすると夫方の姓になり、夫の家墓に入る傾向があります。
そうなると、元夫の家墓を守っていても、自分がそこに入ることはなく、また子ども達も元夫の家墓に入る可能性が少なくなるのが問題です。
【 お墓継承に関する法律、民法第769条 】
★ 民法第769条では、こう述べられています。
「婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の利害関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。」
…つまり、墓主が継承しても離婚や再婚によって状況が変わった時には、その都度関係者同士が話し合わなければなりません。
とは言え、民法第769条が浸透している訳ではないので、実際には墓主が離婚再婚した時点で話し合う家庭は必ずしも多くはなく、当事者が亡くなった時点での相談が多い傾向にあります。
亡くなってしまうと意見も聞くことができません。できれば状況が変わった時に、皆で集まって話し合うことが得策です。
ただしこちらも、前項と同じく、下記のように結ばれています。
「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。」
無縁墓にならないために
このような曖昧な状況が重なって、取り合えずお墓を継承したものの、ノータッチになっていると、無縁墓になる可能性も充分にあります。
ただし、ある日突然無縁墓になる訳ではありません。1999年に一部改正された「墓地、埋葬等に関する法律」では、このようになっています。
【 無縁墓になるまで 】
① 霊園、墓地を管理する者は(沖縄のような個人墓地では自治体など)、墓主へ一年内に申し出を要求する書面を官報(※1)に掲載します。
② ①の官報への掲載と同時に、墓地には立て札を立てなければなりません。
③ ①、②の手続きを取った上で、申し出もないまま一年が経過すると、そのお墓は無縁墓となり、管理者はこのお墓を撤去することができます。
…ですから、無縁墓になるまでには一年の猶予があり、一年に一回でもお墓参りに行っている家であれば、無縁墓になる心配はありません。
※1の「官報」とは国の機関紙で、お墓に関する事柄に限らず、自己破産などあらゆる物事を掲載しています。
いかがでしたでしょうか、今日はお墓の継承問題に大きく関わる、3つの法律をお伝えしました。この法律を予め理解していることで、事前に予防、解決できるお墓トラブルも少なくありません。
特に昨今では、ひと昔前のように地元に残る子ども達が少なくなりました。そのために、昔ながらの慣習に倣っていると、無縁墓になるであろうお墓は多いです。
ですから、昔ながらの慣習や習わしも大切ですが、倣うことが難しい場合には、柔軟に現代の法律に則って進めて行くと、スムーズに収まる傾向にあります。
親族・家族での話し合いが路頭に迷った時、ぜひ一度、法律からの解決を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
お墓の継承にまつわる3つの法律
・本来は地域の慣習に倣い継承されるべきである
・故人からの指定があれば、その者に継承される
・継承時と状況が変わった時、関係者間で協議をする
・無縁墓とみなす前に、一年間看板を立てる
・無縁墓とみなす前に、官報に申告要請を掲載する