沖縄の納骨式。施主が知りたい7つの基礎知識
沖縄の納骨式は、他のお墓行事やお墓の形からも分かるように、独自の風習がいくつかあります。初めての沖縄の納骨式で、しかも施主や遺族のひとりとなれば、何が何だか分からずに、ただただ戸惑うことにもならないか、少し不安になりますよね。
けれども沖縄の納骨式とは言え、独自の風習がありながらも、僧侶へ読経をお願いしたり、焼香をするなどの基本的な法要の流れは一緒。それに付随する「沖縄の納骨式ならではの」違いを理解するだけなので、実はそんなに難しいことはないのです。
沖縄の納骨式とは言え、特に施主と言う大きな役割を担っていれば、事前に流れや違いをしっかりと理解したいですよね。そこで今回は、沖縄の納骨式の風習が分からないまま施主になっても慌てない、流れと基礎知識をお伝えします。
本記事での沖縄の納骨式の違いを確認しながら、冷静に準備を進めて下さい。
沖縄の納骨式。
施主が知りたい7つの基礎知識
沖縄の納骨式、地域による違い
沖縄の納骨式では、全国的にも他の地域と大きく違う風習がいくつかあります。その最も大きな違いと言えば、ヒジャイガミへの祈願と、野辺送り。ただし野辺送りは風葬から火葬へと変わったことで、沖縄でもほとんど見られなくなりました。
【 沖縄の納骨式、大きな違い 】
① ヒジャイガミへの祈願
・ 沖縄では納骨式に限らず、お墓事をする前には、お墓にいらっしゃる守護神「ヒジャイガミ(左神)」様へ拝まなければなりません。(祈願)。沖縄の納骨式の前には、向かって右(お墓の左)にいるヒジャイガミ様へお供えものをして拝みます。
② 野辺送り(のべおくり)=タビ
・ 沖縄の納骨で見られた野辺送り(のべおくり)=タビとは、お墓に故人の遺体を運ぶ時に見られた、葬列のこと。潮の引き際と共に故人の魂もあの世へ行く、とされており、引き潮の時間帯に行われました。
基本的な沖縄の納骨の流れ
とは言え沖縄の納骨式でも、今では野辺送りもほとんど見られなくなったこともあり、ヒジャイガミへの祈願以外は、全国的なものと流れはさほど変わりません。
ひとつ違うのは、他地域では法要後の会食は移動しますが、沖縄の納骨式では、お墓の前でお供え物をいただくことが多い点でしょうか。ただしこれは沖縄のあらゆるお墓事では、一般的な光景です。
【 沖縄の納骨式の流れ 】
① ヒジャイガミ様への祈願(ヒジャイガミ様へのお供え物)
② お墓を開ける儀式
③ 遺骨をお墓に安置する
④ お墓の前にお供え物を供える
⑤ 僧侶による読経
⑥ 参列者による焼香
⑦ 皆でお供え物をいただく
…これが沖縄の納骨式の一般的な流れ。ちなみに、最後のお供え物を食べることを「ウサンデー」と言います。
沖縄の納骨前、ヒジャイガミ様への祈願
沖縄での納骨式での大きな違い、ヒジャイガミ様への祈願ですが、難しいことはありません。お墓事の定番である重箱料理も供えますが、手作りの他、最近では仕出し料理店で用意をしてくれるところもあります。
【 ヒジャイガミ様への祈願 】
■ 真ん中のご先祖様や故人へ拝む前に、左側(向かって右側)にいるヒジャイガミ様へお供え物をして拝めば良いのです。
・ お供え物は地域によってバラつきはありますが、沖縄では基本的なお供え物、重箱料理とウチカビや線香、お水やお酒、お茶(ウチャトゥ)を並べれば大丈夫。
沖縄の納骨では、「開ける人」も決める
ここも少し沖縄の納骨式独特のもの。お墓の扉を開ける儀式がありますが、その「開ける人」が、故人と「相の合った人」でなければならないのです。
【 沖縄の納骨式、お墓を開ける人 】
■ 実は地域によって「相の合った人」の判断がさまざま。故人の干支から数える方法で「相」が合うかどうかを判断しますが、数え方は全く違うので、周囲に確認しておくと安心です。
ただしこれはあくまでも儀式。雑草をむしるなどの「動作」をして、実際には石材業者などの他の人が、扉(カロート)を開けるパターンがほとんどです。
沖縄の納骨、遺骨の置き場所
沖縄の納骨では「お墓を開ける」儀式を終えたら、遺骨をお墓に安置しますが、沖縄の大きなお墓の中には、新しい遺骨を置く場所も定められているのも特徴的。
【 新しい遺骨の置き場所 】
■ お墓の中は三段になっていることが多く、一番上が上位(上座)、一番下が下位(下座)と言う位置づけになっています。この順番で上位に古い遺骨、下位に新しい遺骨が入るのです。つまり、新しい遺骨は「新人」と言うこと。
・ 一段のなかでは右が上位で左が下位なので、新しい遺骨は一番下の、一番左に置くことになります。
沖縄の納骨、遺骨を置いた後
遺骨をお墓に安置するとひと安心しがちですが、お墓から出る時にも、沖縄の納骨作法があるのです。これは「ご先祖様にお尻を向けちゃいけない。」と考えれば、おのずと分かること…。
【 沖縄の納骨で遺骨を置いた後 】
■ 沖縄では納骨後、お墓を出るまで「後ずさり」をして外へ出ます。この時、沖縄のお守りである「サン」を左右に振って払いながら出るのが基本の儀式。お墓から出たら焼香をして、一連の納骨の儀式は終了です。
沖縄の納骨、読経の準備
沖縄の納骨式ではお墓の前にテーブルを置き(メージク)、その上に位牌を立てます。沖縄のお墓は家のような造りですので、扉(カロート)を閉じた後にお供えをして、読経へ移るのです。
【 沖縄の納骨、読経と焼香 】
■ 僧侶に読経をお願いする際のお供えは、果物にお茶(ウチャトゥ)の他、供え花やお酒、そして線香。全国的な他の地域と同じく、僧侶の読経のなかで参列者が次々に焼香を進めていきます。
いかがでしたでしょうか、沖縄の納骨式は独特のものであるため、初めてであれば戸惑うこともありますが、基本的な流れは全国的なものとほぼ変わりはありません。基本の流れを押えながら、沖縄の納骨式ならではの意味合いを理解すれば、進められるはず。
特にお供え物の準備は沖縄独特ですが、お供え物の準備こそ、事前に冷静に進められる事柄のひとつ。親族や家族がいるのなら、お供え物の知識や作り方も教わりながら、一緒に準備ができるのではないでしょうか。
基本的には正方形にキレイに並べられた、豚肉やかまぼこなどの「おかず」重と、もちが9個~15個並べられた「おもち」重。納骨式では一対がほとんどですが、法要によって二対の4重を用意することも多いです。
本記事の流れを理解しながら、無事に沖縄の納骨式を終えてください。
まとめ
沖縄の納骨式の流れ
・沖縄独特の風習は、ヒジャイガミ様と野辺送り
・ヒジャイガミ様へは納骨式の前に祈願する
・ヒジャイガミ様への祈願は、お供え物と拝み
・沖縄では「相が合う人」がお墓を開ける儀式を行う
・新しい遺骨は、お墓の一番下の一番左に置く
・遺骨を置いたら、後ずさりをしながら外に出る
・扉を閉めてお供えし、読経のなか焼香を行う