沖縄の門中墓での納骨式。本州出身者が驚く5つの風習とは
沖縄の門中墓では納骨式は、葬儀当日に行われることが多いですよね。全国的には納骨は四十九日を目途に行うことが多いため、それだけでも本州出身者であればカルチャーショックではないでしょうか。
沖縄では門中墓に納骨できるのは、父方の血を引く親族となり、本州とは少し異なります。そのため門中墓を引き継ぐ本家(むーとぅーや)では、驚くほど長く大きな「家系図」が代々引き継がれることもあるほどです。
観光に沖縄に訪れるだけでは、「沖縄のお墓は家のように大きなお墓」と言うことしか分かりませんが、いざ沖縄に暮らしてみると、沖縄の門中墓の納骨にまつわる、多くの奥深いしきたりを垣間見ることができます。
そこで今回は、沖縄の門中墓の納骨式で、多くの本州出身者の方々がカルチャーショックを受ける、奥深い5つの風習をお伝えします。
沖縄の門中墓での納骨式。
本州出身者が驚く5つの風習とは
お葬式当日に納骨式
沖縄の門中墓では、納骨式はお葬式当日に行われるのが一般的です。ちなみに沖縄では、弔問客を招く通夜も行わない家が多いので、告別式~納骨式まで、全ての流れを一日で終える家が少なくありません。
【 沖縄の門中墓の納骨式は、葬儀当日 】
★ 沖縄のお葬式では、新聞の荼毘広告欄に会場と日時を掲載するため多くの参列者が集い、時には800人!などの人数がお焼香に訪れることもあります。
・ そのため、ほとんどの参列者をお焼香のみを済ませて早々に引き上げ、お葬式後にごくごく身内の家族や友人知人のみで、納骨式を行います。
ちなみに全国的な葬儀の流れはお葬式→火葬がほとんどですが、沖縄では火葬→お葬式→納骨が多いです。棺は本州のものよりもやや小さめで、少し膝を曲げて納め、琉球の着物を死装束として選ぶ家も多くなります。
沖縄のお墓に納骨する「仮墓」
さらに沖縄の門中墓では納骨式の際、まずは「仮墓」に納める風習があります。本州出身者とすれば、そもそも「仮墓って何?」と言うことになりますよね。
火葬が始まり現代では少しずつ少なくなりましたが、まだまだ沖縄の地方では「仮墓」と「本墓」があるのです。
【 沖縄の門中墓の納骨、「仮墓」とは 】
★ 沖縄ではその昔、風葬の習慣がありました。風葬とは遺体をそのまま安置して風化させる葬送方法で、沖縄では3年ほど遺体を安置したら、一族の女性が洗骨を行い、大き目の骨壺に納めていました。
・ その風化させるための最初の数年間、納めるためにあったお墓が、この「仮墓」です。現在では沖縄でも遺体は火葬されていますが、今でも風葬の名残りで仮墓の習慣が残されています。
本墓と違いこの仮墓は、地域によってはいくつかの門中のお墓が連なっていることが多く、5~6棟が並ぶものも多いです。今は骨壺なので複数入りますが、この5~6棟のお墓を順番に利用します。
この仮墓の1棟に納骨すると、次に利用するお墓に「印」を置いておく慣わしがあり、次に来た門中の方々は、この「印」で利用するお墓が分かるのです。
数年後に本墓に納骨する
そのため、沖縄の門中墓(本墓)に納骨するのは3年ほどの年月が掛かります。実は沖縄の門中墓は納骨できる日取りがあり、その日取りでなければ門中墓の扉を開くことはできません。
【 沖縄の門中墓の納骨、本墓に納骨 】
★ 沖縄の門中墓に納骨する際には、遺骨を合葬するために、骨壺から出して布にくるんで持って行く地域もあります。
・ これは何千という一族が眠る沖縄の門中墓に多い納骨方法で、お墓内の箱がいっぱいになると、石灰などで溶かして多くを納骨しています。
一方、山奥に昔からある門中墓では、遺骨がいっぱいになると、お墓の奥に放り土へ返す風習もありましたが、現代では「古い門中墓」と「新しい門中墓」のふたつのお墓を持つ家も増えました。
沖縄の門中墓、もうひとつの納骨方法
このように沖縄では門中墓に納骨する際、仮墓と本墓を持つ家も多くあるのですが、本墓のみの門中も地域によっては見受けられます。この場合にはお墓の中に「仮の安置場所」があることが多いです。
【 沖縄の門中墓の納骨、シルヒラシ 】
★ 沖縄の門中墓では、納骨するお墓がひとつの場合、入口近くに「シルヒラシ」と呼ばれる新しい遺骨の安置場所が設けられています。
・ このシルヒラシも本来は、風葬のために遺体を安置する場所でした。言い伝えではシルヒラシは「新人」の場所で、お墓の門番をするためと言われています。
シルヒラシのある沖縄の門中墓では納骨後も骨壺であることが多く、数年経って新しい骨壺が入る時には、奥の上段など、違う安置場所に移動するのです。
天寿を全うできなかった遺骨
沖縄の門中墓では納骨できない遺骨も、地域によってあります。それが、幼くして亡くなった子どもや、事故などで亡くなった門中の方々の遺骨です。
【 沖縄の門中墓の納骨、納骨堂 】
★ このような「天寿を全うできなかった」門中の方の遺骨は、同じような境遇の方々の遺骨が集まる納骨堂に安置されることもあります。
・ 門中で納骨堂がない場合には、敷地内の端っこに小さな祠を立てて、そこに納骨する家も多いです。
ただ、特に幼い子どもが亡くなった時の両親など、この待遇を不憫に思う現代の沖縄の方々も多く、門中から独立して霊園などに子どものお墓を建てる家も多くなりました。
いかがでしたでしょうか、今回は本州出身者の方々が驚くことの多い、いくつかの沖縄の門中墓での納骨の風習や考え方をお伝えしました。ただし「沖縄の」と言っても、地域や家によってさまざまです。
冒頭で沖縄の門中墓は納骨できる人が、父方の血族と言いました。確かに今でもこの考え方は根強く、時には深刻なトラブルになることもあるのですが、地域によってはとても緩い門中もあります。
今回お伝えしたような、昔ながらの風習が残る門中墓は、沖縄でも南部や北部などの地方が多く、都心部では本州スタイルの家族墓なども、霊園の普及とともに増えてきました。
さらにお葬式こそお寺のお坊さんが読経供養を担いますが、沖縄では門中墓に納骨する際には、その一族のユタさんが拝み(御願)供養をすることも多くなります。
現代でも、沖縄の門中墓に納骨された一族の人数が、何と3000人を越える大きなものも多く、知れば知るほど奥深さを感じるのが、沖縄のお墓です。
まとめ
沖縄の門中墓、納骨の風習とは
・お葬式当日に納骨式を行う
・数年間は仮墓に納骨される家もある
・本墓では合葬される門中もある
・新しい遺骨を安置するシルヒラシがある
・幼い子や事故死の遺骨を納める納骨堂
・納められない遺骨は敷地内の祠に納めることもある
・門中墓の風習は地域や家によっても大きく違う
- カテゴリー:
- お墓について、
- 沖縄の御嶽や史跡について、
- 沖縄の御願行事について、
- 葬送サービス