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沖縄で行うお通夜の準備。死に水からグソースガイまで

沖縄で行うお通夜の準備。死に水からグソースガイまで
沖縄での通夜の準備も、病院で亡くなることの多い今では本州式になってきていますが、昔ながらの風習を取り入れる部分は今でもありますよね。例えば本州では故人には北枕で寝てもらいますが、沖縄では西枕(イリマックァ)です。

 

本州式でも沖縄式でも変わらず心が込められ、「どちらでも良い。」と考える人々が多い一方、「最期は沖縄での通夜の準備を取り入れて見送りたい。」と考える家族もいます。

 

それはごくごく小さな事柄で、最期のお清めの儀式ですとか、死装束であったり…、それぞれに想いはありますよね。故人の気持ちを尊重する一方で、故人亡き後の通夜や葬儀は、生きている遺族のためのものでもあります。

 

そこで今回は、沖縄での通夜の準備、大切な家族の臨終を伝えられた時から、家に迎え入れるまでに行われる、習わしをお伝えします。

 



 

沖縄で行うお通夜の準備。
死に水からグソースガイまで

 

「末期の水(死に水)」を取る


大切な家族の臨終を伝えられることはとても悲しいことです。けれども、後悔することのないよう、故人への見送りに注力する時でもあります。

 

ご臨終を伝えられて最初に行う沖縄での通夜の準備は、「末期の水(死に水)」を取ることです。病院で亡くなることの多い昨今では看護師さんが行うことが多いですが、遺族も共に行うことができます。

 

【 沖縄での通夜の準備:末期の水 】

 

★ 割り箸のまわりを脱脂綿で巻いてくるみ糸で縛り、末期の水を取る準備をしてから始めてください。

 

① まず、お茶碗に水を入れ「ウートートゥ」と唱えながら、お茶碗を両手で上げます。お茶碗の水は、その昔は井戸の水を利用していましたが、現在では水道水で問題ありません

 

② 続いて、(準備をした)割り箸に付けた脱脂綿をお茶碗の水に浸し、その水で故人の唇を濡らします

 

臨終に居合わせた人々全員で行うことができますが、故人に最も近い近親者から順番に行ってください。地域や家によっては、この末期の水を納棺前に行うこともあります。

 

この末期の水は、故人がお腹が空いていないだろうか、喉が渇いていないだろうか…、と言う身内の想いの他、死後の世界で飢えることなく暮らしていけるように…、との願いによる儀式です。

 

 

アミチュージ(湯灌)の流れ


家族が末期の水を取った後、湯灌(ゆかんが行われます。アルコールで体を拭いた後、口や鼻耳、肛門などに脱脂綿を詰めますが、病院で亡くなった場合には看護師が、自宅で亡くなった場合でも葬儀社スタッフが行ってくれます。

 

このアミチュージは故人が旅立つ前に「ワッサ、ビナサ」を洗い清めて取り除くための儀式です。ちなみに「ワッサ、ビナサ」とは沖縄の言葉で「穢れ、悪物」を表しています。

 

ここで、昔ながらの習わしでアミチュージを行いたいのであれば、下記のように行ってください。

 

【 沖縄での通夜の準備:昔ながらのアミチュージ 】

 

★ たらいに水を入れてからお湯を注ぎ適温にしますが、お湯はやかんなどを用い(柄杓などでも可)、持つ手をいつもとは反対の持ち方「逆手」で持って注ぐのが習わしです。(サカミジ・シチミジ)

 

・ その後、顔→足の流れで、身内の女性がたらいの水で拭き清めます。身内の女性複数名で拭き清めても良いのですが、人数は奇数(1人、3人など)で、妊婦はアミチュージの儀式は避けてください。 

 

昔ながらの沖縄での通夜の準備では、アミチュージの際に井戸を利用していました。この井戸の水が澄んだ水とされていたためです。けれども今、自分達でアミチュージの儀式を行う場合には、水道水で構いません

 

儀式の後、使用したたらいは底を抜き、水がこぼれるようにしてから捨ててください。この後に髪を解いて男性ならひげを剃り、女性には薄化粧を施して沖縄での通夜の準備を進めます。

 

★ ちなみに、生きている時に「逆手」でお湯などを注がれるのは、沖縄では忌み嫌われますので、ぜひ注意をしてください。

 

 

死に装束=「グソースガイ」


本州にも故人の旅立ちのために、死に装束にはさまざまなしきたりがありますが、沖縄での通夜の準備でも多くのならわしがあります。沖縄ではあの世を「後生(グソー)」と言い、死に装束はあの世の衣装=「グソースガイ」と言います。

 

ただ、今では本州式の沖縄での通夜の準備も多い他、故人が生前に良く着ていた服など、馴染みの深い服を準備して着せる人も増えてきました。

 

【 沖縄での通夜の準備:グソースガイ 】

 

★ 昔ながらのグソースガイでは、①カサビシン②奇数枚③ヒジャイウッチャーシ④ケーシマー⑤帯ひと巡り⑥襟針…の6つのしきたりと、地域によっては⑦季節反転がありました。

 

① カサビシン … グソースガイは重ね着をして着せます。一枚ずつ着せるのではなく、最初に服を重ねて準備をし、一度に着せてください。

 

② 奇数枚 … カサビシンで重ね着をする際、枚数は3・5・7・9枚(多くは5枚か7枚)の奇数枚を着てもらいます。

 

③ ヒジャイウッチャーシ … こちらは「ヒジャイ=左」で、本州と同じく日ごろの着物の着方とは反対の、左前で着せる風習です。

 

④ ケーシマー … 「ケーシマー=裏返し」となり、言葉の通りに着物は裏表反対に着せる習わしがあります。

 

⑤ 帯ひと巡り … 腰に巻く帯はひと巡り(一巡)のみにしてください。

 

⑥ 襟針 … 襟の左右にそれぞれ7本ずつの縫い針を刺します。縫い針には5cmほどの糸をたらし、糸は白と黒です。この針で故人は後生(グソー)の世界で水と交換することができます。

 

⑦ 季節反転 … 地域によっては夏であれば冬服から、冬であれば夏服から…、と言うように、反対の季節の服を先に着せて重ね着をする風習もありました。

 

病院で亡くなった場合にはここで葬儀社により遺体の搬送が行われ、自宅に迎え入れる手順となります。

 

 

 

いかがでしたでしょうか、今回は大切な家族を亡くした時、ご臨終を伝えられてから、故人が死に装束(グソースガイ)に着替えるまでに、遺族が行う沖縄での通夜の準備をお伝えしました。

 

今では病院の看護師や葬儀社スタッフが請け負ってくれることがほとんどですし、今回お伝えしたような昔ながらの沖縄のしきたりは、見掛ける機会も少なくなりましたが、一方で、昔ながらの習わしで葬送されたい、と望む高齢者も多くいらっしゃいます。

 

また、グソースガイについては85歳を超えた高齢の故人の場合、長く生きた功労者として扱われます。そのため、年日祝い(トゥシビーユーエー)の衣装とハチマキを着せてお見送りをするのです。

 

赤いハチマキと年日祝い(トゥシビーユーエー)の衣装は、後生の世界では免罪符となり、裁きを受けることなく極楽浄土へ行けると信じられています。

 

 

 

まとめ

死に水と死に装束、昔ながらの沖縄の習わしとは

・唇に水を濡らして末期の水を取る
・お湯を注いだ水で拭き、顔から足を清める
・お湯を注ぐ時には「逆手」で注ぐ
・死に装束には6つの習わしがある
・地域によっては反対の季節の服から着せる
・85歳以上の故人は年日祝いの衣装を着せる

 



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