沖縄で行う通夜の準備。自宅に迎え入れる時の習わしとは
沖縄のお通夜の準備は、今では葬儀社スタッフが請け負ってくれるため、本州式のものも増えてきましたよね。そもそも、その昔の沖縄では風葬の風習があったため、お通夜自体が行われていない地域が多くありました。
けれども火葬となった現代、ご遺体は24時間経たなければ火葬できませんので、沖縄でもお通夜が行われるようになったのです。ただ、沖縄でもお通夜の準備はもちろんしますが、多くはごくごく親しい家族のみで過ごします。
お医者様からご臨終を伝えられた時、病室では湯灌やヌジファ(魂を抜いて移動する儀式)などが行われる一方、自宅ではご遺体を迎え入れる用意を進めなければなりません。
そこで今回は、沖縄で通夜の準備を進める手順、特に故人を自宅で迎え入れる際の用意をお伝えします。
沖縄で行う通夜の準備。
自宅に迎え入れる時の習わしとは
「死」は不浄
ご遺体を迎え入れる部屋は一般的にはお仏壇がある仏間、もしくは畳間です。迎え入れる部屋は、賞状などのお祝い事に関わるものは片づけて、壁は白い布で覆ってください。(葬儀社スタッフが部屋の準備も進めてくれます。)
沖縄では人の死を不浄と考える「シニフジョー」の考えがあるため、神の道へ通じる神棚などは不浄が届かぬように封じなければなりません。
【 沖縄での通夜の準備:神封じ 】
★ そのため、病院からご遺体を運び入れる前に、神棚があれば白い布(白なら紙でも可)で隠して「神封じ」を行います。
・ お仏壇も昔ながらの作法では神封じを行いますが、ご先祖様が故人の魂を後生(グソー=あの世)へお導きになるので、封じずにそのまま開いておく家もあります。
仏門に通じるお坊さんのなかには、「お祝い事の賞状などは、神封じをする必要はない。」とする声もあり、細かい部分は家や人によってそれぞれに違います。
★ ただし、沖縄では神棚には神封じをするものの、家族の死を天(ウティン)へ報告してもらうよう、火の神(ヒヌカン)は神封じを行わない家が多いです。
お迎えするための枕飾り
沖縄の通夜では、準備する枕飾りに豚の三枚肉がお供えされる点が、本州とは違います。仏教の教えでは動物の肉は良しとされませんが、沖縄では弔事料理でも豚の三枚肉のお供え物は多いです。
【 沖縄での通夜の準備:枕飾り 】
★ 机の上に白い布を掛けたら、まず、四十九日まで使用する仮のウコール(香炉)にろうそく一対、一本差しの花瓶に樒(しきみ)や菊の花、もしくは蓮花などを一対供えてください。
・ さらにミジティ(水)・ウチャトゥ(お茶)・お酒をお供えしたら、「シラベーシ」と呼ばれる豚の三枚肉を7枚、てんこ盛りのご飯にお箸を刺したお椀(チャーシウブン)、お塩と味噌と白団子(ダーグ)をお供えをします。
「シラベーシ」・「チャーシウブン」、お塩と味噌や「ダーグ」については、次の項で詳しくお伝えします。
枕飾りのお供え物を準備する
沖縄の通夜の準備では、枕飾りのお供え物を準備しなければなりません。今では葬儀社が準備してくれることが多いですが、自分達で作る家もまだ多いです。
【 沖縄での通夜の準備:お供え物 】
① シラベーシ … 豚の三枚肉の塊を茹でて切り分け、お皿に7枚盛りつけて供えます。お墓参りなどの豚の三枚肉は味を付けて煮付けていますが、沖縄での通夜の準備のシラベーシは、ただ茹でただけです。
② チャーシウブン … ご飯椀に炊いたご飯をてんこ盛りにして、てっぺんにお箸を揃えて差してください。
③ お塩と味噌 … 小皿にお塩と味噌を盛りつけるだけですが、それぞれを器に盛りつけるのではなく、一皿にお塩と味噌を盛ります。
④ ダーグ … 沖縄では通夜の準備は急なので、市販の団子粉やもち粉を使って水を足してこね、茹でて作るのが一般的です。こちらも、一皿に7個だけ盛りつけます。
ダーグもシラベーシと同じく、何の味付けもしません。家によっては四十九日まで、チャーシウブンの形式でご飯を盛りつけ、お供えをすることがありますが、本来のチャーシウブンはお通夜の一回だけです。
病院でご遺体を移動する時
病院ではご遺体を移動する際、遺族は「ヌジファ」の儀式をしてください。沖縄の通夜では準備の際、このヌジファを行わなければ、故人の魂がその場所に残るとされています。
【 沖縄での通夜の準備:ヌジファ 】
★ 遺族は白い紙と白い封筒、ヒラウコー(沖縄線香)、サン(すすきの葉を結んだもの)を用意してください。
・ ヒジュルウコー(火を付けていないヒラウコー)をタヒラ(二枚=日本線香12本分)を足元から二・三回、大きく円を描くように回して、白い紙で包み、さらに白い封筒で包んでから、故人の懐にしまいます。
故人の枕元にはサンを置き、「〇〇さん(故人の名前)、これからお家に帰るから一緒に行きましょうね~。」と声を掛けてあげてください。
ご遺体を病室から出す時には足元から出し、遺族は一度病室を出たら戻らず、振り返らずに進みます。家に戻ったら「ヌジファの結び」として、胸元のヒラウコーに火を灯して、ウコール(香炉)に拝するのです。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で通夜を行う際の準備、故人のご遺体を家に迎え入れるまでをお伝えしました。葬儀社との打ち合わせさえ終われば、スタッフが進めてくれますが、例えばヌジファなどはご遺族が行うのが一般的です。
また、シラベーシなどのお供え料理は、沖縄では通夜の準備として、まだまだ「自分達で用意したい。」と言う方も多くいますし、葬儀社によっては本州式の枕飾りでシラベーシがない場合もあります。
ご遺体を待つ間には、遺影選びや棺に入れる物の準備、死に装束の「トゥビシン」の着物の襟元に針を刺す儀式を行いながら待つご遺族も見受けられました。(トゥビシンについては別記事で詳しくお伝えします。)
沖縄では通夜は家族のみ、準備もささやかなものですが、後々まで後悔を残すことのないよう、進めてください。
まとめ
沖縄で故人を家へ迎え入れる準備
・部屋を決め、壁を白い布で覆う
・神棚に神封じをする(ヒヌカンにはしない)
・枕飾りを準備する
・シラベーシは豚の三枚肉7枚を盛ったもの
・チャーシウブンはてんこ盛りご飯にお箸を差す
・ダーグはもち粉で作った白い餅7個
・塩と味噌はひとつのお皿に盛りつける
・ヌジファの儀礼を行ってご遺体を移動する