沖縄の旧暦4月の年中行事。アブシバレーやクシユクイとは
沖縄の旧暦で行う年中行事は、今でもまだまだ暮らしのなかに残されていますよね。有名な豊作祈願であるウマチーやカシチーも、昔ほど集落単位で盛り上げてはいないものの、綱引きを行う集落や、御嶽を訪れる神人の姿もあります。
そんな沖縄の年中行事、旧暦4月には「アブシバレー(畦払い)」や「クシユクイ(腰憩い)」と呼ばれる御願行事があり、こちらもウマチーやカシチーとおなじく、農作業にまつわる沖縄の年中行事です。
さらに旧暦4月となる、新暦では5月の中旬時期には、禁忌となる「物忌み」のひとつ、「ヤマドゥミ」や「ウミドゥミ」もありますが、詳しく知らない方、「何だろう?」と言う方も多いですよね。
そこで今回は、沖縄で行われる年中行事、旧暦4月の御願をお伝えします。毎月の拝み「チィタチ・ジュウグニチの拝み」」も簡単にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
沖縄の旧暦4月の年中行事。
アブシバレーやクシユクイとは
2018年の旧暦4月カレンダーは?
旧暦は1か月30日、新暦は31日なので少しずつずれが生じます。そのため、毎年新暦と旧暦の重なりは同じではありません。
ちなみに、旧暦では一年間は354日、365日の新暦とは11日もの差が出ます。そのためのこの誤差を調整するために、沖縄では「ユンヂチ」と呼ばれる年回りを設けました。
「ユンヂチ」の年回りは33か月に1回(19年の間に7回)あり、この年回りでは何と旧暦では1年が13か月になります。「ユンヂチ」を閏年(うるうどし)ならぬ「閏月」と書くことを考えれば、想像が付きますよね。
【 沖縄の年中行事:2018年の旧暦4月 】
★ 2018年には旧暦4月1日が新暦の5月15日から始まり、旧暦4月の最終日となる旧暦4月30日は新暦6月13日です。
・ 旧暦4月の沖縄の年中行事では日にちが決められているのは、アブシバレー(畦払い)の旧暦4月14日、15日ですが、2018年の新暦では5月29日・30日です。
また、漢字で書くと名前が似ている「閏月(ユンヂチ)」と新暦の「閏年(うるうどし)」ですが、この二つは全く別物、同じ年回りに訪れるものではないので、注意をしてください。
チィタチ・ジュウグニチの拝み
沖縄の年中行事の拝みでは、毎月の「チィタチ・ジュウグニチの拝み」が基本にあります。沖縄の家では「ヒヌカン(火の神)」を台所に祀っている家が多いです。
そして、ヒヌカンやお仏壇のある家々では、毎月旧暦の1日と15日には「チィタチ(1日)・ジュウグニチ(15日)の拝み」と呼ばれる、毎月の拝みを行います。
【 沖縄の年中行事:毎月の拝み 】
★ ヒヌカン(火の神)とお仏壇のある家では、白いご飯(白ウブク)を専用のお椀にお供えして拝みます。ヒヌカンへは3膳、お仏壇へは2膳を供え、拝み事全てに共通しますが、ヒヌカンから拝みを捧げてください。
・ 神様であるヒヌカンへ拝するヒラウコー(沖縄線香)はタヒラと半分(2枚と半分=日本線香12本と3本)、お仏壇へはタヒラ(2枚=日本線香12本)が基本です。
「本日はチィタチ(1日)でございます。」と報告をして、家族を日ごろから見守ってくださること、これからも見守っていただけるよう、お伝えします。
ヒヌカンはむやみに掃除をすることも良しとしないので、汚れが気になれば掃除をする理由を伝えて、この日に掃除をする家も多いです。
アブシバレー(畦払い)の御願行事
沖縄の旧暦4月の年中行事、アブシバレー(畦払い)は前述したように、旧暦4月14・15日、2018年の新暦では5月29日・30日に行います。
【 沖縄の年中行事:旧暦4月14・15日のアブシバレー 】
★ アブシバレー(畦払い)は名前の通り、畦の茂った草木を払う行事で、害虫駆除の意味合いがありました。
・ すっかり少なくなりましたが、集落によっては、カミンチュ(神人=神職に携わる人々)を中心にして、害虫を草舟に乗せて沖へ流し、グイス(神様への言葉。呪文)を唱える儀礼をします。
それぞれの家では、「クファジューシー」と呼ばれる沖縄の炊き込みご飯が、酢の物などの和え物料理である「ウサチ」と共に、お仏壇に供されます。豚の三枚肉の煮つけを賽の目切りにしたものなど、お肉を入れてください。
お仏壇へ拝するヒラウコーは、チィタチ・ジュウグニチの拝みと同じくタヒラ(2枚)です。
旧暦4月の沖縄の年中行事、クシユクイ
現代ではほとんど見られませんが、旧暦4月には農家の人々を労うために宴を催す「クシユクイ(腰憩い)」が行われていました。稲を受け付けたタイミングで行われていたため、旧暦4月の吉日になっています。
現在でも集落によってはクシユクイの宴が催されますが、さとうきびの収穫を祝うタイミングが多いです。
【 沖縄の年中行事、旧暦4月吉日に行うクシユクイ 】
★ カミンチュ(神人や神役の人々)が集落の御嶽(拝所)で、お酒や花米をお供えし、ヒラウコーをタヒラと半分(日本線香12本と3本)を拝して御願を捧げた後、農家の方々を招いて宴を催します。
今では稲作も衰退し、あまり見かけなくなりましたが、「腰憩い(クシユクイ)」の名前の通り、農家の人々のひとつの区切りの宴となっていました。
いかがでしたでしょうか、今回は旧暦4月の沖縄の年中行事、アブシバレー(畦払い)やクシユクイ(腰憩い)について、沖縄の旧暦や拝みの基本とともにお伝えしました。
沖縄の昔ながらの年中行事には、稲作にまつわるものが多いので、稲作の衰退とともに集落単位でのお祀り事はすっかり見なくなりました。けれども、それぞれの家では、ささやかながらお仏壇やヒヌカンへお供えをして、拝みを捧げる家もあります。
また、この旧暦4月の時期には、沖縄では禁忌のひとつである「物忌み」として、山林に入ったり海へ入ることを禁じる時期、「ヤマドゥミ」や「ウミドゥミ」もありました。
人々の暮らしを注意深く見ていくと、現代にも残る沖縄の年中行事の数々、ぜひこの機会に意識してみてはいかがでしょうか。
まとめ
旧暦4月の沖縄の御願行事とは
・2018年の旧暦4月は新暦5月15日から
・毎月旧暦1日と15日にはヒヌカンとお仏壇へ拝む
・旧暦4月14・15日はクファジューシーを供える
・旧暦4月吉日には御嶽で拝み宴を催した
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