【沖縄の御願】お墓に住む「ヒジャイガミ」、5つの基本
沖縄の御願では家に祀るヒヌカンなど、屋敷への拝みもありますが、一方で沖縄のお墓にも「ヒジャイガミ」と言う神様がいらっしゃることは、沖縄では常識ですよね。
ただ、本州から来た方々のなかには、沖縄の位牌、「トートーメー」文化は広く知られるようになったものの、「お墓の神様」と言われても、初めて知って驚いたり、詳しくは知らない方々も多いのではないでしょうか。
何も知らずにお墓参りに出向き、皆がお墓の端っこにもお参りをしていると戸惑いますし、家族として参加をするのなら、なぜお参りをしているのかを理解して、心のこもった沖縄での御願がしたいですよね。
そこで今回は、沖縄での御願には欠かせない存在である、お墓にいらっしゃる神様「ヒジャイガミ」様の詳細をお伝えします。
【沖縄の御願】お墓に住む「ヒジャイガミ」、
5つの基本
沖縄のお墓の左側、「ヒジャイガミ」
沖縄のお墓にはお墓の左側に「ヒジャイガミ」さまがいらっしゃいます。ヒジャイガミは「左の神」を意味していて、沖縄の御願では土地神様のひとつ。
【 沖縄の御願:ヒジャイガミ 】
★ 昔ながらの門中墓(むんちゅうばか)に鎮座する神様がヒジャイガミ(ヒジャイヌカミ)。
・ お墓の左側にいますが、お墓に向かってみると右側ですので注意!沖縄のお墓参りでは、門中墓の中央にいる、ご先祖様へ手を合わせる前に、ヒジャイガミ様へ拝みます。
沖縄の御願の詞で出てくる、三神
沖縄の信仰は本州とは少し違い、先祖信仰と自然信仰が根底にあります。沖縄の御願ではヒジャイガミ様に限らず、祈りの詞があるのですが、そのなかでしばしば出てくる三神様がいらっしゃいます。
【 沖縄の御願:自然崇拝の三神 】
★ その三神が「ウティンヌカミ」と「リュウグヌカミ」、最後に「ヂーチヌカミ」。ウティンは天を意味し天の神様であり、リュウグは竜宮の沖縄の言葉で海の神様、ヂーチは土地を表し地の神様です。
・ 前項でお伝えしたように、ヒジャイガミはそのなかでも「ヂーチヌカミ」のひとつなのです。
日ごろから沖縄の御願として、子ども達はその土地土地の神様に「私は○○から来ました、○○○○です。いつも見守ってくれてありがとうございます。」と名を名乗って拝む光景も見かけます。
遊びに来た時には、上記に付け加えて「今日は○○から遊びに来ました。よろしくお願いいたします。」などと拝むのです。
ヒジャイガミ様へのお供え物
例えば年間行事であるひとつ、清明祭(シーミー)の時など、お墓参りの時には、ご先祖様へ拝む前に、必ずヒジャイガミ様への御願を行うのが作法。そしてヒジャイガミ様へのお供え物をしてください。
【 沖縄の御願:ヒジャイガミ様へのお供え物 】
★ 墓前のご先祖様へのお供え物とは別に、お酒とシルカビ(※1)を供するのが基本。
・ さらに沖縄の御願行事で準備されるお供えの重箱料理、「ウサンミ」を持参していれば、まずはヒジャイガミ様へ供するのが習わし。
そして、ヒジャイガミ様への御願が終わった後、ウサンミのおかずから、それぞれ1個~2個ずつ取り出して、別皿に持って供した後、お墓中央のご先祖様へお供えをします。
この時、ヒジャイガミ様へのお供え物を取り出した分だけ、新しく継ぎ足しを行うのが、沖縄の御願の常識。これを「ウチジヘイジ」と言い、継ぎ足すことで新しいお供え物となるのです。
※1 「シルカビ」とはご先祖様へ届ける打ち紙の神様版、と言うイメージで神様へ届けるお金のこと。半紙を三枚重ねて小さく切ったもので、はさみを入れずに手で切って作る習わしがあります。
ヒジャイガミ様への沖縄の御願
前項でお伝えしたヒジャイガミ様へのお供えをした後、お線香をお供え。沖縄のお線香は「ヒラウコー」と言い、日本線香で言うところの6本が一枚にくっついているもの。
このヒラウコーは「タヒラ」、つまり二枚拝すればOK。ちなみにご先祖様の墓前には、参った人一人につき1/2ヒラ(3本)を拝します。
【 沖縄の御願:ヒジャイガミ様への拝み 】
★ ヒラウコーを拝したら、家長はこのような内容をヒジャイガミ様にお伝えし、拝んでください。
・ 「いつもお墓を見守っていただき、ありがとうございます、本日はお墓参りに参りました。
これからお墓の掃除をしてお参りさせていただきますので、滞りなく終えることができるよう、どうぞよろしくお願いいたします。」
細かな部分は家や地域によってさまざまですが、内容としては、このようなご報告をして、ヒジャイガミ様への御願は終了。
★ 沖縄では御願を終えたら、お供えしたシルカビをヒジャイガミ様の前で燃やして、シルカビが燃えたら、お酒を掛けて火を消してください。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の御願でも、お墓参りに欠かすことができないヒジャイガミ様に関する基礎知識と、拝み方をお伝えしました。ヒジャイガミ様はお墓を守ってくださる神様。
本文中でもお伝えしたように、沖縄の御願ではヒヌカンを代表するように、八百万の神々が拝む対象。お墓にもヒジャイガミ様がいるように、屋敷でも、四隅にも門にも中央にも、トイレにも神様がいます。
このような神々を信仰し、沖縄では御願を通して、いつも見守ってくださること、今日も家族皆が健康に円満に過ごしていること、そんな日常を感謝して報告する信仰が、根底にあるのです。
形式的にも興味深いヒジャイガミ様への沖縄の御願ですが、その意味合いや内容も理解して、丁寧に手順を追ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
ヒジャイガミ様の基本と、拝み方
・お墓の左端にヒジャイガミ様がいる
・ヒジャイガミ様は地の神様のひとつ
・お酒とシルカビを供える
・ウチジヘイジでウサンミから取り分ける
・ヒラウコーはタヒラ
・お墓を守ってくれることへの感謝を伝える
・シルカビは神様の前で燃やし、酒を掛ける