【沖縄の葬儀】お通夜や葬儀で行う儀式、5つの意味合い
沖縄の葬儀で行う儀式は、昔から続く伝統的なものも多いですよね。大切な家族のために行う沖縄の葬儀であれば、形式だけではなく意味合いまで理解して、心を込めたい方も多いのではないでしょうか。
沖縄では明治中期に琉球王朝が終わりを遂げ、明治政府による廃藩置県が行われるまで、全国的なものとは違う歴史を辿ってきました。
しかも1609年、尚寧王(しょうねいおう)の時代からこの廃藩置県まで、一般の沖縄の人々は僧侶との関わりが禁じられていたため、現在の沖縄の葬儀スタイルは、仏教と沖縄ならではの御願の折衷とも言えます。
そこで今回は、沖縄の通夜や葬儀で行う儀式について、その意味合いまでお伝えします。ぜひ意味合いまで理解して執り行ってみてください。
【沖縄の葬儀】
お通夜や葬儀で行う儀式、5つの意味合い
チチャーシウブンは一度きり
現在でも故人が亡くなると、沖縄では葬儀まで遺体を自宅に安置する家が多いこともあり、枕飾りに供える食べ物を自宅で準備する家も少なくありません。
病院から遺体が自宅に搬送されたら、まず枕飾りを用意しますが、家庭ではチチャーシウブン、シラベーシとすまし汁は用意するプランが多いです。
【 沖縄の葬儀、チチャーシウブン 】
■ チチャーシウブンとは一善飯のことで、故人の使っていたご飯茶碗に山盛りいっぱい、逆さに移して作ります。山盛りのご飯が盛れたらその中央に、お箸を二本合わせて立ててください。
・ この形はその昔の埋葬したお墓に土を盛り上げ、墓標を立てた形からきています。
しばしば、立てるお箸を十字架のように重ねたりする光景も見られますが、不幸の印なので二本合わせるのが正しい盛り方です。
またチチャーシウブンは「盛り切りの一善飯」と言う意味合いも持ちます。盛り切りとは最後のご飯と言う意味もありますので、枕飾りが最初で最後、法事では普通に盛り付けて供えてください。
シラベーシとすまし汁
さらに沖縄では「シラベーシ」と呼ばれる豚肉とすまし汁をお供えします。その他、ダーグ(団子)や果物、味噌や塩などもお供えしますが、これらは葬儀社が用意してくれることが多いです。
【 沖縄の葬儀、シラベーシとすまし汁 】
① シラベーシ … 豚の三枚肉をただ茹でて切り、七枚ずつ二皿を用意してください。
法事のウサンミ(重箱で作るお供え料理)でも豚の三枚肉の料理を供えますが、これは豚の三枚肉の煮つけ、枕飾りではただ茹でたものをお供えします。
② すまし汁 … アーサや豆腐など、精進料理の規則にならったすまし汁です。
沖縄の枕飾り、シラベーシについて
沖縄の葬儀では、本来の仏教の教えとは相反する肉料理が多く登場します。
【 沖縄の葬儀、豚肉を供える説① 】
■ これはあまり栄養価の高いごちそうに恵まれなかった時代の名残りです。
・ 「より美味しいごちそうを故人にあげよう。」と言う気持ちの表れで、たんぱく質と栄養価の高い豚肉が供えられました。
ただ、中国の道教からの影響で豚を供えるようになった、と言う説もあり、その由来から考えると「無理して豚を供えなくとも良い。」とする方もいます。
【 沖縄の葬儀、豚肉を供える説② 】
■ 今ではすっかり見られませんが、その昔には地域によって、沖縄の葬儀や法事の時、豚の頭としっぽを供える家がありました。
・ これはあの世での審判の際に、故人の罪や罰を豚に代わってもらおうと言う「生け贄」の意味合いを持ちます。
この自分の罪や罰を他の生き物にすり替える考え方を、仏教では良しません。また仏教では殺生をイメージさせるものを良しとしないため、肉料理は御法度でもあります。
ただ、どちらの説を取るかは家それぞれで、どちらを選んでも沖縄の葬儀では、問題ありません。このような考え方もあるものの、沖縄では伝統を守り豚肉料理をお供えする家が多いです。
遺骨に黒傘をさす(納骨)
沖縄では葬儀のすぐ後に納骨を行うことが多く、四十九日の納骨が一般的な全国の風習とは大きな違いがあります。
そして葬儀の後、遺骨をお墓に運ぶ際に黒傘をさす様子がしばしば見られますが、これは今ではほとんど見られない「野辺送り」の名残りです。
【 沖縄の葬儀、黒傘をさす 】
■ 遺骨にさす黒傘は「天蓋(てんがい)」と言い、実は仏像や棺などにもよく黒い布で天蓋を掛けています。これは実はインドから伝わった暑い国ならではの風習で、日よけです。
・ ただ沖縄では、仮の位牌である野位牌(現代では白位牌)をメージュク(前卓)に乗せて野辺送りをしていました。そこで、「メージュクに天蓋をさす」と言う方もいます。
地域によって遺骨に天蓋をさす場合、メージュク(白位牌)にさす場合とがありますが、それは地域や家の慣わしに従ってください。
翌朝に行うナーチャミー
沖縄では葬儀当日に納骨を行いますが、それは風葬の歴史の名残りでもあります。昔の沖縄では葬儀の後に遺体を「シルヒラシ」と呼ばれるお墓内部の手前側に安置し、白骨化するまで待っていたのです。
白骨化すると家の女性たちが「洗骨(せんこつ)」を行い骨壺に納め、お墓の奥の上段に並べました。その名残りでもあるのが、ナーチャミーです。
【 沖縄の葬儀、ナーチャミー 】
■ 「ナーチャミー」とは沖縄の葬儀(納骨)の翌朝、お墓参りに行く儀式で、風葬の時代には故人が息を吹き返していないか、確認をする意味合いもありました。
・ ただ、「故人が寂しい想いをしているから。」とお墓参りをする、との意味合いもあり、戦前には若い故人の場合にはその友人がお墓の周りで宴を催すこともありました。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の葬儀で見られるいくつかの沖縄ならではの慣わしについて、その意味合いや由来をお伝えしました。意味合いを理解するのとしないのとでは、心の込め方が変わります。
また全国的には四十九日には、合わせて納骨を行う家が多いのですが、沖縄では葬儀当日に納骨を行っているため、当然納骨式は行われないことが多いです。
ただ、沖縄でも四十九日は忌明け以外にも重要な意味合いがあります。それが、本位牌への魂入れです。四十九日には今までの仮位牌(白位牌=シルイフェー)を墓前のヒジャイガミ様の前で燃やす儀式があるのです。
さらに四十九日までの週忌法要も、沖縄では「ナンカスーコー(週忌焼香)」と言い、とても大切な法要になっています。
現在では全国的な仏教の教えに沿ったお通夜や葬儀も増えてきましたが、本記事も参考にしながら、ぜひ自分達の家に見合った、沖縄の葬儀やお通夜を執り行ってください。
まとめ
沖縄の葬儀やお通夜で行う儀式の意味合い
・チチャーシウブンは「最後の一善飯」
・枕飾りに茹で豚肉を七枚ずつ二皿供える
・豚肉は栄養の高いごちそうであるため
・道教に倣うと、生け贄説もある
・天蓋は遺骨にさす家と、白位牌に差す家がある
・ナーチャミーは風葬の名残り